第58話 選ばれなかった者たち
彼らは、
第三の地を避けて進んでいた。
「……あそこを通れば、
助かったかもしれない」
誰かが、
ぽつりと言う。
誰も、
否定しなかった。
南の街道。
焼けた荷馬車が、
道の脇に転がっている。
既に、
略奪は終わっていた。
「……第三は、
北を選んだ」
それが、
共通認識だった。
理由は、
もう語られない。
「俺たちは、
選ばれなかった」
その言葉に、
重さがあった。
彼らは、
商人だ。
戦えるほどの兵は、
いない。
だが、
弱者でもない。
「……役に立たないと、
判断されたんだろ」
自嘲気味な笑い。
それが、
一番危うい。
夜。
焚き火を囲む。
炎は、
小さい。
「……第三の覇王は、
公平だと言われてた」
「だから、
期待した」
期待。
その言葉が、
全てだった。
「公平なら、
俺たちも助けるべきだった」
理屈は、
単純だ。
そして、
間違っている。
「……いや」
別の男が、
首を振る。
「第三は、
正しかったんだ」
場が、
静まる。
「人数の多い北を、
優先した」
「それは、
戦略だ」
理屈は、
合っている。
「……でも」
男は、
拳を握る。
「それで死んだのが、
俺の仲間だ」
誰も、
反論できない。
「……正しさって、
何だ」
焚き火が、
爆ぜる。
「第三は、
間違ってない」
「だが、
俺たちは死んだ」
その矛盾を、
人は耐えられない。
だから。
「……第三は、
冷たい」
その言葉が、
静かに落ちる。
「俺たちを、
数字で見た」
「使えるかどうかで、
決めた」
歪んだ理解。
だが、
完全な嘘ではない。
「……だったら」
誰かが、
低く言う。
「もう、
期待するな」
その言葉で、
空気が変わる。
期待を、
捨てる。
それは、
諦めではない。
距離だ。
「第三は、
味方じゃない」
「敵でもない」
「……利用する相手だ」
その結論に、
皆が黙って頷く。
彼らは、
翌朝も進む。
第三を避けて。
だが、
第三を意識しながら。
遠くで、
第三の地の灯りが見える。
近づかない。
だが、
忘れもしない。
彼らの中で、
第三の覇王は――
救いではなく、
裁定者になっていた。
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