第54話 責任の重さ
変化は、
即座に現れた。
「……通行要請が、
倍増しています」
報告役の声は、
焦っている。
当然だ。
「理由は」
「……第三が、
責任を負うと発言したためです」
胸が、
重く沈む。
引き受けた。
それだけで、
期待が生まれる。
「……護衛の要請も、
来ています」
「守らないと、
言ったはずだ」
「ええ」
報告役は、
困った顔をする。
「ですが、
“責任を負う”という言葉が、
そう解釈されています」
言葉は、
勝手に変換される。
昼。
街道の外れで、
小さな混乱が起きる。
通行人同士の、
口論。
「第三が、
責任を取ると言っただろ!」
「だから、
通っていいんだ!」
違う。
だが、
否定する声は届かない。
「……止めろ」
口に出しかけて、
飲み込む。
それは、
命令だ。
セレナが、
低い声で言う。
「今、
何も言わない方がいい」
分かっている。
だが、
何もしないことが、
さらに期待を膨らませる。
夕方。
赤と青、
両陣営から連絡が入る。
「第三が、
責任を負うのなら」
「現場判断を、
尊重します」
尊重。
便利な言葉だ。
「つまり?」
聞き返す。
「……第三の判断に、
従うという意味です」
喉が、
鳴る。
「俺は、
判断を出していない」
「承知しています」
「ですが、
出さないという判断も、
尊重されます」
逃げ道が、
また一つ塞がる。
夜。
焚き火の前で、
一人になる。
音が、
重い。
周囲の視線が、
見えない圧になる。
「……責任を、
引き受けた結果が、
これか」
呟く。
守らない。
命じない。
それでも、
期待が集まる。
セレナが、
隣に座る。
「……限界です」
短い言葉。
「このままでは、
あなたの言葉一つで、
生死が決まります」
それは、
事実だった。
「……だからこそ、
言葉を選ぶ」
「選び続ければ、
遅れます」
正しい。
焚き火が、
大きく揺れる。
風が、
強くなった。
俺は、
焚き火を見つめながら、
静かに思う。
責任は、
引き受けた瞬間に終わらない。
引き受けた瞬間から、
増え続ける。
そして――
軽くなることは、
決してない。
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