第53話 誰の責任か
会合は、
静かに始まった。
集まったのは、
第三の地の評議体だけではない。
赤の使者。
青の使者。
どちらも、
武装していない。
それが、
逆に緊張を生む。
「……本日の議題は、
安全保障についてです」
誰かが、
そう切り出した。
言葉は穏やかだ。
だが、
意味は重い。
「第三の判断が、
周辺に影響を与えています」
赤の使者が、
淡々と言う。
「通行の整理」
「非公式な制限」
「結果としての被害」
一つ一つ、
事実だ。
だが、
命令ではない。
「……第三は、
それを認めますか」
視線が、
一斉に俺に集まる。
「命令していない」
即答する。
「止めてもいない」
それも、
事実だ。
「しかし」
青の使者が、
静かに続ける。
「“第三の判断”として、
現場は受け取っています」
逃げ道が、
狭まる。
「……誰の責任だと思いますか」
問いが、
公に投げられた。
空気が、
張りつめる。
「……現場だ」
そう言いかけて、
口を閉じる。
それを言えば、
全てを切ることになる。
「……分かりません」
代わりに、
そう答えた。
会場が、
ざわつく。
「分からない、
では困ります」
赤の使者。
「我々は、
戦争をしています」
それは、
脅しではない。
「誰かが、
責任を取らねばならない」
青の使者が、
静かに言う。
「市場も、
人も」
視線が、
俺から離れない。
誰も、
代わりに引き取らない。
「……第三は、
象徴です」
誰かが、
評議体側から言った。
その言葉が、
胸を刺す。
「象徴は、
責任を免れません」
それが、
常識だ。
「……なら」
俺は、
ゆっくりと口を開く。
声が、
少し震える。
「第三が、
責任を負うと?」
誰も、
否定しなかった。
沈黙が、
答えだった。
「……分かりました」
そう言った瞬間、
何かが決まる。
「ですが、
命令はしません」
それだけは、
譲れない。
「責任は、
俺が引き受ける」
「だが、
動くのは、
それぞれの意思だ」
理屈としては、
歪だ。
だが、
今の限界だ。
赤の使者が、
小さく頷く。
青の使者も、
目を伏せる。
了承ではない。
受領だ。
会合が終わる。
誰も、
勝っていない。
だが、
逃げ場は消えた。
夜。
焚き火の前で、
一人になる。
セレナが、
隣に立つ。
「……引き受けましたね」
「ああ」
「逃げ道を、
自分で塞ぎました」
「分かってる」
それでも、
後悔はない。
少なくとも、
逃げてはいない。
俺は、
焚き火を見つめながら、
静かに思う。
責任とは、
奪われるものではない。
だが、
誰も引き取らないなら――
落ちてくる。
そして、
落ちた先が、
ここだった。
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