第51話 壊れた後の朝
朝は、
いつも通り来た。
空は明るい。
風もある。
それが、
逆に現実感を奪う。
「……報告が、
止まりません」
セレナの声は、
抑えられている。
だが、
疲れが滲んでいた。
「北で、
小競り合いが継続」
「南では、
住民の避難が始まっています」
「西の街道は、
封鎖されました」
どれも、
第三の線の外。
だが、
近い。
「……死者は」
「……出ています」
数は、
聞かなかった。
聞く資格が、
ない気がした。
評議体が、
緊急招集される。
全員、
顔色が悪い。
「……これは、
戦争ですか」
誰かが、
そう言った。
否定できない。
「第三は、
どう動く」
すぐに、
その言葉が出る。
まるで、
最初から答えが決まっていたように。
「……今まで通りだ」
俺は、
そう言った。
通す。
守らない。
それ以上は、
しない。
空気が、
重く沈む。
「……それでは、
被害が増えます」
反論は、
正しい。
「止めるには、
どちらかに肩入れするしかありません」
それも、
正しい。
「……なら、
止めない」
口に出した瞬間、
自分でも分かった。
これは、
拒否だ。
「……拒否ですか」
誰かが、
静かに言う。
責める口調ではない。
だが、
距離がある。
昼。
門の前に、
人が集まる。
怒号はない。
その代わり、
視線が刺さる。
「……動かないのか」
「第三の覇王は」
その呼び方が、
胸に重い。
「……まだ、
判断できない」
そう答える。
それだけで、
何かが崩れる。
午後。
使者が来る。
赤から。
青から。
どちらも、
同じ言葉だ。
「第三は、
どうする」
選択肢は、
もう提示されない。
答えだけが、
求められる。
「……何もしない」
沈黙。
それが、
返答だった。
夕方。
新しい報告が入る。
「……第三の線を、
避けた避難民が、
襲われました」
胸が、
強く締め付けられる。
「……理由は」
「第三は、
動かなかったからだと」
世界は、
単純だ。
理由を、
一つにしたがる。
夜。
焚き火の前で、
一人になる。
音が違う。
遠くで、
剣が鳴る音。
叫び声。
「……壊れた後は、
こうなるのか」
呟く。
選ばなかった。
だから、
第三でい続けた。
だが、
第三でいることが、
誰かを傷つける。
俺は、
焚き火を見つめながら、
静かに思う。
逃げていない。
だが、
守れてもいない。
その間に立つ場所は、
もう、
残っていないのかもしれない。
壊れた均衡は、
戻らない。
それだけは、
はっきりしていた。
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