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人徳スキルしか持たない俺が、 英雄だらけの大陸で覇王にまつりあげられる話 〜戦えないのに、人が集まりすぎて困ってます〜  作者: 山奥たける


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第46話 崩れない場所

 世界は、

 騒がしくなっていた。


「北で、

 小競り合いが増えています」


「南の街道が、

 使えなくなりました」


 報告が、

 止まらない。


 どれも、

 俺たちの地の外だ。


「……ここは?」


 思わず、

 聞いてしまう。


 報告役は、

 一瞬だけ言葉を探した。


「……変わりません」


 その答えが、

 奇妙だった。


 配給は、

 回っている。


 通行も、

 続いている。


 揉め事は、

 ある。


 だが、

 暴力に至っていない。


「……なぜだ」


 自分でも、

 分からない。


 何かを変えた覚えは、

 ない。


「理由は、

 三つあります」


 セレナが、

 淡々と説明する。


「奪わない」

「守らない」

「約束しない」


 皮肉だ。


 どれも、

 普通なら不安定要因だ。


「だが、

 予測できます」


 彼女は、

 続ける。


「何が起きないかが、

 分かる」


 それが、

 安定を生んでいる。


 昼。


 門の前に、

 人が集まる。


 怒号はない。


 代わりに、

 距離がある。


 近づきすぎない。


「……信用ではない」


 誰かが、

 そう言った。


「期待でもない」


「ただ、

 分かっているだけだ」


 それが、

 現実だ。


 街道を行く者たちは、

 皆、慎重だ。


 荷を軽くし、

 人数を絞る。


 無理をしない。


 自己責任が、

 共有されている。


「……それで、

 成り立つのか」


 自問する。


 成り立っている。


 今は。


 夕方。


 評議体が集まる。


 議題は、

 防衛強化ではない。


「外が、

 荒れています」


「ここは、

 どうしますか」


 全員が、

 同じことを考えている。


「……今のままだ」


 俺は、

 そう答えた。


 少し、

 ざわつく。


「動かない?」


「拡張しない」


「守らない」


 全部、

 同じ答えだ。


「……不気味です」


 誰かが、

 正直に言った。


 その通りだ。


 夜。


 丘の上に立つ。


 遠くで、

 火が見える。


 戦だ。


 ここでは、

 静かだ。


「……崩れないな」


 小さく、

 呟く。


「ええ」


 セレナが、

 隣で答える。


「だからこそ、

 狙われます」


 胸が、

 少しだけ重くなる。


「均衡は、

 もう限界です」


 彼女は、

 低く言う。


「静かすぎます」


 それが、

 一番怖い。


 俺は、

 焚き火を見つめながら、

 静かに思う。


 崩れない場所は、

 目立つ。


 そして――

 目立つ場所は、

 必ず理由を与えられる。


 良い理由か、

 悪い理由かは、

 関係ない。


 この静けさは、

 嵐の前だ。


 俺は、

 それを否定できなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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