表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人徳スキルしか持たない俺が、 英雄だらけの大陸で覇王にまつりあげられる話 〜戦えないのに、人が集まりすぎて困ってます〜  作者: 山奥たける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/64

第44話 中立の代償

 判断は、

 正しかった。


 少なくとも、

 理屈の上では。


「……商隊を、

 通します」


 俺は、

 短く言った。


「警護は、

 付けない」


 いつも通りの条件。


 それ以上でも、

 それ以下でもない。


 相手は、

 首を縦に振った。


「承知しています」


 覚悟した顔だ。


 それが、

 余計に重い。


 商隊は、

 第三の線を通る。


 いつもより、

 少ない人数。


 荷も、

 最低限。


 慎重に、

 通るつもりだった。


 結果だけを言えば、

 襲われた。


「……第三の線の、

 出口です」


 報告役の声は、

 震えていた。


「通過後、

 数刻で」


 拳が、

 強く握られる。


「死者は」


「……二名」


 前より少ない。


 だが、

 軽くはない。


「守られなかった」


 その言葉が、

 空気に残る。


 誰も、

 口に出さない。


 だが、

 全員が思っている。


「……俺は、

 約束を守った」


 自分に言い聞かせる。


「通すと、

 言った」


「守らないとも、

 言った」


 全部、

 伝えた。


「それでも、

 責められます」


 セレナが、

 静かに言う。


「なぜなら」


「“選ばせた”からです」


 胸が、

 締め付けられる。


 通るか。

 通らないか。


 選択を、

 相手に委ねた。


 それが、

 最も中立なやり方。


 ――だったはずだ。


 夜。


 門の前に、

 人が集まった。


 怒鳴らない。

 暴れない。


 それが、

 一番怖い。


「……ここを通らなければ、

 死ななかった」


 誰かが、

 低く言う。


「守られないと、

 分かっていても」


「期待してしまった」


 期待。


 その言葉が、

 刃のようだ。


「……俺は、

 守らない」


 何度目かの、

 宣言。


 だが、

 届かない。


「じゃあ、

 最初から通すな」


 誰かが、

 そう言った。


 それは、

 正論だ。


 だが、

 それは――

 遮断だ。


「通すなと言われたら、

 どうなります」


 セレナが、

 静かに問い返す。


「均衡は、

 壊れます」


 誰も、

 反論できない。


 沈黙。


 その中で、

 俺は理解する。


 中立とは、

 責任を分けることではない。


 責任を、

 一番曖昧な形で背負うことだ。


 俺は、

 小さく頭を下げた。


「……すまない」


 それしか、

 言えなかった。


 誰かが、

 目を伏せる。


 誰かが、

 背を向ける。


 その夜。


 焚き火の前で、

 一人になる。


 守らないと、

 言い続けた。


 だが、

 選ばせた。


 それが、

 一番残酷だったのかもしれない。


 俺は、

 焚き火を見つめながら、

 静かに思う。


 中立は、

 逃げではない。


 だが、

 救いでもない。


 そして――

 代償は、

 確実に積み上がっている。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


明日からは1日1話の投稿となります。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ