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人徳スキルしか持たない俺が、 英雄だらけの大陸で覇王にまつりあげられる話 〜戦えないのに、人が集まりすぎて困ってます〜  作者: 無名史官


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第4話 それでも、あんたについていく

 戦が終わって三日が過ぎた。


 俺たちは、元の陣地に戻されていた。

 と言っても、前と同じ場所ではない。


 壊滅した部隊の穴埋めとして、

 雑用兵の集まりが、さらに雑にまとめられただけだ。


 名前もない。

 部隊番号だけが付けられている。


 ――都合のいい連中、という意味だ。


 俺は相変わらず、荷車を押していた。

 死体の数は減ったが、代わりに負傷兵が増えた。


 包帯を巻き、水を運び、呻き声を聞き流す。

 やることは変わらない。


 ……変わらない、はずだった。


「リクス」


 呼ばれて、顔を上げる。


 あの若い兵だ。

 名前は、まだ聞いていない。


「飯の配給、終わったら……話、いいか?」


「……ああ」


 少ししてから、別の兵も近づいてきた。

 その後ろにも、さらに二人。


 気づけば、俺の周りに人が集まっている。


 嫌な予感がした。


 ――また、何か押し付けられる。


 そう思った。


 陣地の隅、使われていない天幕の影。


「……俺たちさ」


 最初に口を開いたのは、年配の兵だった。


「次の戦、前線に回されるらしい」


 胸の奥が、ひくりと動く。


「補充だ。

 使い捨てってやつだな」


 誰かが吐き捨てる。


 俺は、黙って聞いていた。

 助言も、命令もする立場じゃない。


「だからよ……」


 若い兵が、一歩前に出た。


「次も、あんたについていく」


 意味が、すぐには分からなかった。


「……何を言ってる?」


「下がるとき、あんたは一番後ろにいた」


 若い兵は、まっすぐ俺を見る。


「自分が逃げるためじゃなく、

 俺たちが全員下がるのを確認してから、動いてた」


 記憶が蘇る。

 確かに、そうした。


 だが、それは――

 当たり前だと思っていた。


「……だから?」


「だから、信じられる」


 他の兵も、頷く。


「前線に出ろって言われても、

 あんたは、俺たちを見捨てないだろ?」


 胸の奥が、じわりと熱くなった。


 困る。

 こういうのは、困る。


「俺は、何も保証できない」


 絞り出すように言った。


「英雄でもないし、

 戦が強いわけでもない」


 それでも、彼らは引かなかった。


「それでいい」


「強い奴は、他にいる」


「俺たちが欲しいのは――」


 一瞬、言葉が詰まる。


「……生き残れる場所だ」


 その言葉が、胸に刺さった。


 その夜、俺は眠れなかった。


 人が、ついてくる。

 理由もなく。


 いや、理由はある。


 俺が、置いていかなかったから。


 ただ、それだけだ。


「……重いな」


 小さく呟く。


 背負うつもりなんて、なかった。

 背負えるとも、思っていない。


 それでも。


 朝になって、顔を上げると、

 昨日の兵たちが、当たり前のように近くにいた。


 誰も命令していない。

 誰も縛っていない。


 それなのに、だ。


 俺は、静かに息を吐いた。


「……前線には行かない」


 それだけ言う。


「生き残る動きをする。

 それでもいいなら――」


 最後まで言う前に、

 全員が頷いた。


 逃げるためじゃない。

 戦わないためでもない。


 死なないための選択。


 その中心に、

 なぜか俺が立っていた。


 このとき、俺はまだ知らなかった。


 それが――

 人徳だとか、カリスマだとか、

 そんな言葉で呼ばれるものだということを。


 ただ一つ、分かっていた。


 もう、

 俺一人の命じゃない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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