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人徳スキルしか持たない俺が、 英雄だらけの大陸で覇王にまつりあげられる話 〜戦えないのに、人が集まりすぎて困ってます〜  作者: 山奥たける


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第37話 善意の中立

 使者は、

 二人同時に来た。


 朝。


 天幕の前に、

 二つの旗が立つ。


 赤と、

 青。


 偶然ではない。


「……同時とはな」


 俺は、

 小さく息を吐いた。


 逃げ道は、

 最初から用意されていない。


 中に通す。


 左右に分けることも、

 順番を決めることもできた。


 だが、

 そうしなかった。


 同時に座らせる。


「用件を」


 俺は、

 短く言った。


 先に口を開いたのは、

 赤の使者――カイ陣営だ。


「通行の安全を、

 保証していただきたい」


 予想通りの言葉。


「兵站です」

「戦争のためではありません」


 嘘ではない。


 だが、

 全部ではない。


 青の使者――シェン陣営が、

 すぐに続く。


「我々も同じです」


「輸送路としての保証を」


「代価は、

 提示できます」


 こちらも、

 予想通り。


 俺は、

 二人を交互に見た。


 答えは、

 決まっている。


「通す」


 二人の表情が、

 一瞬緩む。


 だが、

 続ける。


「だが、

 守らない」


 空気が、

 固まった。


「……それでは意味がない」


 赤の使者が、

 低く言う。


「意味はある」


 俺は、

 淡々と返す。


「通れる」

「止めない」


「それだけだ」


「責任は?」


 青の使者が、

 即座に聞く。


「誰も取らない」


 それが、

 答えだった。


 沈黙。


 二人とも、

 すぐには言葉を返せない。


 それが、

 この返答の正しさを示している。


「……中立を、

 名乗るのですか」


 赤の使者。


「名乗らない」


「では、

 何なのですか」


 問いが、

 重い。


「善意だ」


 俺は、

 そう答えた。


 自分でも、

 少し驚いた。


「通りたい者を、

 止めない」


「だが、

 守るために戦わない」


 それが、

 今の限界だ。


「……信用できません」


 青の使者が、

 率直に言った。


「信用しなくていい」


 即答。


「疑って通れ」

「それでいい」


 二人の使者は、

 顔を見合わせた。


 同時に、

 同じことを理解した顔だ。


 これは、

 交渉ではない。


 譲歩でも、

 駆け引きでもない。


 ただの、

 立ち位置の宣言だ。


「……持ち帰ります」


 赤の使者が言う。


「同じく」


 青の使者も、

 立ち上がる。


 どちらも、

 不満を隠さない。


 だが、

 これ以上言えない。


 二人が去った後、

 セレナが、

 静かに言った。


「怒らせましたね」


「分かってる」


「両方」


 それも、

 分かっている。


「それでも、

 同じ答えを出した」


 彼女は、

 こちらを見る。


「後悔は?」


 少し考える。


 ほんの少し。


「……ない」


 正直だった。


「変えたら、

 線が崩れる」


 その線が、

 均衡の最後の支えだ。


 夕方。


 街道を、

 兵の一団が通る。


 止めない。

 守らない。


 疑いながら、

 通っていく。


 俺は、

 その背を見送りながら、

 静かに思う。


 これは、

 善意だ。


 だが、

 善意は、

 一番信用されない。


 だからこそ、

 均衡は、

 まだ保たれている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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