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人徳スキルしか持たない俺が、 英雄だらけの大陸で覇王にまつりあげられる話 〜戦えないのに、人が集まりすぎて困ってます〜  作者: 山奥たける


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第35話 観測される場所

 地図の上で、

 その場所は邪魔だった。


「……ここだ」


 男は、指で一点を叩いた。


 赤でも青でもない。

 だが、線が集まっている。


「この“空白”が、

 戦争を遅らせている」


 天幕の中には、

 数人の将が集まっていた。


 武装は軽い。

 だが、視線は鋭い。


 カイ陣営。


 軍事を司る者たちだ。


「通過は?」


「できません」


 即答だった。


「止められはしないが、

 守られもしない」


 ざわめきが起きる。


 それが、

 一番困る。


「中立か?」


「いいえ」


 別の将が首を振る。


「不介入です」


 その言葉に、

 空気が固まる。


「馬鹿げている」


 誰かが吐き捨てる。


「戦場に隣接しておきながら、

 介入しない?」


「だから、

 厄介なのだ」


 最初に指した男が言った。


 地図の線をなぞる。


 補給路。

 進軍路。

 退路。


 どれも、

 その場所を避けると歪む。


「排除すればいい」


 短い提案。


 だが、

 誰もすぐに頷かなかった。


「理由は?」


「理由がない」


 それが、

 理由だった。


「軍事拠点ではない」

「要塞でもない」

「だが、人が集まっている」


 報告が淡々と続く。


「武装率は低い」

「だが、統制がある」


「……指揮官は?」


 問いが飛ぶ。


「一人」


 それだけで、

 天幕が静まった。


「名は?」


「リクス・エン」


 その名を聞いて、

 何人かが顔をしかめる。


「王か?」


「いいえ」


「将か?」


「いいえ」


「では、何だ」


 答えが、

 ない。


「……理解不能だな」


 カイは、

 そう呟いた。


 剣を抜くより、

 ずっと低い声で。


 同じ頃。


 別の場所でも、

 地図が広げられていた。


 整った机。

 計算された距離。


 シェン陣営。


「物流が、

 詰まっています」


 商務官が報告する。


「理由は?」


「通過は可能」

「だが、保証がない」


 シェンは、

 指を組んだ。


「保証がない?」


「はい」


「奪われても、

 誰も責任を取らない」


 その一点が、

 致命的だった。


「……利用できないな」


 シェンは、

 静かに言う。


「価値が測れない」


 金にも、

 兵にも。


「では、

 排除しますか」


「まだだ」


 即答だった。


「排除するには、

 理由が要る」


「今は、

 理由がない」


 沈黙。


 地図の中央に、

 空白が残る。


「妙だな」


 シェンが、

 小さく呟く。


「動かない者が、

 一番動かしている」


 誰も否定しなかった。


 その夜。


 二つの陣営で、

 同じ結論が出ていた。


無視できない。

だが、触れられない。


 それが、

 最悪の存在だということを、

 全員が理解していた。


 地図の上で、

 その場所は、

 まだ名もない。


 だが、

 すでに線を狂わせている。


 戦争を、

 遅らせている。


 そして――

 次に動く理由を、

 静かに待っていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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