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人徳スキルしか持たない俺が、 英雄だらけの大陸で覇王にまつりあげられる話 〜戦えないのに、人が集まりすぎて困ってます〜  作者: 山奥たける


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第34話 立つ位置

 朝霧が、

 低く地を這っていた。


 見張り台の影が、

 ぼんやりと浮かぶ。


 いつの間にか、

 当たり前になった光景だ。


 通行人が、

 自然に足を止める。


 挨拶をする者。

 会釈する者。

 遠巻きに見る者。


 誰も、

 「王」とは呼ばない。


 だが、

 無関心でもない。


「……線の上、ですね」


 隣で、

 セレナが言った。


 彼女の視線の先には、

 街道がある。


 左右に分かれる道。

 だが、

 ここを通る。


「国境ではない」


 俺は、

 そう答えた。


「だが、

 境目だ」


 昨日と、

 同じ言葉。


 だが、

 重さが違う。


 昼前。


 評議体が集まる。


 大きな決断は、

 予定されていない。


 配給。

 巡回。

 通行。


 どれも、

 日常だ。


 それが、

 一番怖い。


「……確認です」


 交渉役が、

 言葉を選びながら聞く。


「今後、

 我々はどう名乗るべきか」


 空気が、

 静まる。


 全員が、

 俺を見る。


 この瞬間が、

 来ると分かっていた。


 逃げられない。


 だから、

 短く答える。


「名乗らない」


 ざわめき。


「国でもない」

「領でもない」


「旗も、

 掲げない」


 誰かが、

 不安そうな顔をする。


「だが」


 俺は、

 言葉を続ける。


「責任からは、

 逃げない」


 それだけで、

 場が落ち着く。


 不思議なほどに。


「我々は、

 通る者を止めない」


「だが、

 守るべき線は引く」


 言葉が、

 少しずつ形になる。


「……それは」


 配給担当が、

 恐る恐る言う。


「国と、

 何が違うのですか」


 正しい疑問だ。


「違いは、

 ここだ」


 胸に、

 手を当てる。


「広げない」

「奪わない」

「数を誇らない」


 それが、

 限界だ。


 沈黙。


 そして、

 一人が頷く。


「分かりました」


 それで、

 十分だった。


 夕方。


 丘の上に立つ。


 この場所が、

 よく見える。


 家々。

 見張り台。

 人の動き。


 村でも、

 国でもない。


 だが、

 人が生きている。


「……覇王は、

 ここをどう見るでしょうね」


 セレナが、

 ぽつりと言う。


「危険だと、

 見るだろう」


 即答だった。


「線を引かず」

「広がらず」

「それでも、

 人が集まる」


 理解できないものは、

 危険だ。


「それでも、

 立ちますか」


 彼女は、

 こちらを見る。


 答えは、

 決まっていた。


「ああ」


 短く、

 はっきり。


「ここが、

 俺の立つ位置だ」


 王座の前ではない。

 戦場の後ろでもない。


 線の上。


 夜。


 焚き火が、

 静かに燃える。


 遠くで、

 誰かが地図を広げている。


 線を引き、

 名を記す。


 その中に、

 この場所もあるだろう。


 俺は、

 焚き火を見つめながら、

 静かに思う。


 名乗らない。

 だが、

 立ち続ける。


 それは、

 弱さかもしれない。


 だが――

 逃げではない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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