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人徳スキルしか持たない俺が、 英雄だらけの大陸で覇王にまつりあげられる話 〜戦えないのに、人が集まりすぎて困ってます〜  作者: 無名史官


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第25話 感謝と、恨みと

 朝、声をかけられた。


「……ありがとうございました」


 配給所の前で、

 昨日入った家族の母親が、

 深く頭を下げる。


 子どもは、

 俺の足元を見ている。


 その視線に、

 胸が詰まった。


「助かりました」

「本当に……」


 感謝の言葉は、

 素直だった。


 だから、

 余計に重い。


 少し離れた場所で、

 別の視線を感じる。


 鋭い。

 冷たい。


 門の方だ。


 昨日、

 呼ばれなかった人間たち。


 まだ、

 去っていない。


「……今日も、

 無理そうですね」


 見張りの兵が、

 低く言った。


「ああ」


 それしか、

 言えなかった。


 去れとも、

 残れとも言えない。


 宙ぶらりんが、

 一番人を削る。


 昼前、

 小さな騒ぎが起きた。


「誰が決めた!」


 門の外から、

 声が飛ぶ。


「基準を出せ!」

「昨日は違っただろ!」


 怒鳴り声。


 だが、

 武器は出ていない。


 それが、

 救いでもあり、

 警告でもあった。


「……俺だ」


 俺は、

 門の前に立った。


 自然と、

 人が下がる。


 その距離が、

 痛い。


「基準は、

 昨日言った」


 声が、

 思ったより落ち着いている。


「続けられるかどうか」

「中を守れるかどうか」


 それだけだ。


「ふざけるな!」


 一人が、

 叫んだ。


「俺たちは、

 昨日まで一緒だった!」


「同じように逃げて、

 同じように生き延びた!」


 正しい。


 否定できない。


「……だからだ」


 俺は、

 そう答えた。


「同じだから、

 全員は入れない」


 その瞬間、

 空気が凍った。


 石が、

 一つ飛んだ。


 当たらない。

 だが、

 意思は届く。


 兵が、

 一歩前に出る。


「下がれ」


 俺は、

 短く言った。


 武器は、

 抜かせない。


「……分かった」


 叫んでいた男が、

 唇を噛んだ。


「覚えておけ」


 低い声。


「助けた数だけ、

 恨まれる」


 それだけ言って、

 背を向けた。


 午後。


 村の中で、

 別の声が聞こえる。


「リクスがいるから、

 助かった」


「判断が早い」

「無駄がない」


 褒め言葉だ。


 だが、

 どれも、

 刃に聞こえる。


 夕方、

 壁に何かが書かれているのを見つけた。


 炭で、

 雑な字。


「選ぶな」


 それだけ。


 消そうとして、

 手が止まる。


 消せば、

 見なかったことになる。


 だが、

 見た。


「……残しておきましょう」


 セレナが、

 静かに言った。


「消すと、

 別の形で出ます」


 正しい。


 だから、

 辛い。


 夜。


 焚き火の前で、

 一人座る。


 感謝された数と、

 睨まれた数。


 どちらが多いか、

 分からない。


 数えたくない。


 だが、

 はっきり分かったことがある。


 人徳は、

 人を集める。


 だが同時に、

 人徳は、

 人を遠ざける。


 救われなかった人間にとって、

 善意は、

 最も分かりやすい敵だ。


 俺は、

 焚き火を見つめながら、

 静かに思った。


 これが、

 「正しいこと」を

 続けるということか。


 英雄じゃない。

 聖人でもない。


 それでも、

 立っている。


 その事実だけが、

 今の俺を支えていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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