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人徳スキルしか持たない俺が、 英雄だらけの大陸で覇王にまつりあげられる話 〜戦えないのに、人が集まりすぎて困ってます〜  作者: 無名史官


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第10話 反乱軍と呼ばれた日

 その日、村に来たのは――

 盗賊でも、難民でもなかった。


 整った鎧。

 揃った歩調。

 旗を掲げた一団。


 正規軍だった。


「……来たな」


 兵の一人が、唾を飲み込む。


 数は二十ほど。

 こちらより多いが、圧倒的ではない。


 問題は、数じゃない。


 立場だ。


 彼らは「取り締まる側」。

 俺たちは「説明を求められる側」。


 村の空気が、一気に冷えた。


 俺は、静かに前に出た。


「この村の代表は誰だ」


 隊の先頭に立つ男が言った。


 無駄のない声。

 感情が、ほとんどない。


 俺は、手を上げる。


「……俺だ」


 その瞬間、

 村人たちがざわついた。


 セレナが、一歩後ろで息を詰めるのが分かった。


 男は、俺を上から下まで眺めた。


「名は」


「リクス・エン」


「役職は?」


 俺は、一瞬迷った。


 雑用兵。

 隊長ではない。

 領主でもない。


 だが、ここで曖昧にすれば、

 それ自体が罪になる。


「……この村にいる人間の、代表だ」


 男は、わずかに眉を動かした。


「通達を持ってきた」


 男は、巻物を広げる。


「この村は、

 武装集団が無断で集結している疑いがある」


 空気が、張り詰める。


「よって――」


 男の声が、冷たく響く。


「本日より、この村を

 反乱予備地として監視下に置く」


 誰かが、息を呑んだ。


 反乱。

 その言葉が持つ重さは、

 誰もが知っている。


 それは、

 いつでも処罰していいという意味だ。


「質問がある」


 俺は、落ち着いた声を保った。


「この村が、何をした」


 男は、即答した。


「何も」


 思わず、言葉を失う。


「だが、“していない”ことが問題だ」


 男は、淡々と続ける。


「盗賊に襲われたにも関わらず、被害がない」

「兵が集まっている」

「周辺から人が流入している」


「――統制が取れていない集団は、

 反乱に発展しやすい」


 それは、理屈だった。

 間違ってはいない。


 だからこそ、厄介だ。


「……俺たちは、戦っていない」


「だからこそだ」


 男は、俺を見る。


「戦わずに人を集める者は、

 より危険だ」


 胸の奥が、冷たくなった。


「今後の指示を伝える」


 男は、巻物を閉じた。


「武装の制限」

「人の出入りの記録」

「定期的な報告」


「そして――」


 一拍、間が置かれる。


「この村の兵は、

 正規軍の指揮下に入れ」


 ざわり、と空気が揺れた。


 それは、事実上の解体だ。


 俺は、ゆっくりと首を振った。


「……それは、できない」


 男の目が、細くなる。


「理由は」


「彼らは、俺の部下じゃない」


 真実だ。


「命令で集まったわけでもない」


「だから、危険だと言っている」


 男の声が、わずかに強まる。


「拒否するなら――」


 言葉は、最後まで言われなかった。


 だが、意味は伝わる。


 沈黙が落ちた。


 村人たちが、俺を見る。

 兵たちも、俺を見る。


 逃げればいい。

 ここで頭を下げれば、

 今すぐの衝突は避けられる。


 だが。


 それは、

 全員を差し出す選択でもあった。


「……俺は」


 喉が、乾く。


「反乱を起こすつもりはない」


 男は、無言。


「だが、

 人を守るために集まった人間を、

 切り捨てることもできない」


 空気が、さらに重くなる。


 セレナが、小さく息を吸った。


「――理解した」


 男は、そう言った。


「本日は、警告とする」


 肩の力が、わずかに抜ける。


「だが、覚えておけ」


 男は、去り際に振り返った。


「反乱軍と呼ばれるのは、

 行動した者だけではない」


「疑われた時点で、

 すでに半分だ」


 その言葉を残し、

 正規軍は村を後にした。


 夜。


 焚き火の前に、人が集まった。


 誰も、すぐには口を開かなかった。


 俺は、深く息を吐いた。


「……すまない」


 それが、最初の言葉だった。


「俺がここにいるせいで、

 この村は危険になった」


 否定の声が、即座に上がる。


「違う」


「俺たちが、選んだ」


「逃げなかっただけだ」


 胸が、締め付けられる。


 これはもう、

 雑用兵の話じゃない。


 小さな村の話でもない。


 俺は、はっきりと理解した。


 立つだけで、意味を持つ場所に

 来てしまったのだ。


 英雄にはなりたくない。

 覇王など、論外だ。


 それでも。


 このまま、何も決めずにいれば――

 誰かが、決める。


 俺たちの代わりに。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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