1.チーター問題
賑やかな教室とは対照的に、
旧校舎は静寂に包まれている。
そんな中でひそひそ話を楽しむ、
4人のグループが、空き教室に屯していた。
「最近のゲームってチーター増えたよね」
ピンク色のショートカットの髪を揺らし、
不機嫌な顔で机をバシバシ叩いた。
私の名前は鈴白雛里、スリングショット(パチンコ)
が得意な花の中学生。
「チーターしとる人って、どんな人ですかね?」
ボサボサ髪と左右で柄の違う靴下、
アイデンティティーは炭酸ミルクシリーズの
クサヤ味が好きだということ。
そんな僕の名前は三笠京、
口臭ケアはちゃんとしてるよ。
チーターする理由は、
ズルして勝ちたい卑怯もの、
それは間違いないけど。
少ない労力で勝って、
愉悦感に浸りたい、
自己満足の塊。
「そんなものは、全然凄くない」
眼鏡が歩いていると言われるほど、
眼鏡フェチなイケメン、
叶井商とは俺のこと。
「PCにある程度詳しい人じゃないと、
チーターって難しいと思うよ」
柊県、戸塚市。ツブヤキ町、令和中学
裏サイトの管理人、朝日九玖ルとわぁー、
アタシのことだ!
中学へ入学と同時に裏サイトを立ち上げ、
情報屋に近い立ち位置にいる。
「チーターの話しじゃないけど、
私の弟がゲームで負けて、
煽られたみたいで」
鈴白、弟いたんだ。
初めて知った。
「煽る人は勝っても、負けても煽るよね。
煽り煽られるのを楽しむとか、
ちょっと意味わかんないかな」
話し半分聞き流し、
スマホで裏サイトをチェックをする。
へぇー、転校生がうちのクラスにくるんだ。
「たかがゲームじゃないか、
そんなことより、もっと眼鏡を愛せ」
何言ってるんだコイツ、
という空気になる。
「僕は、タコプラーヌで煽られたことあるよ。
ピョンピョンジャンプして、何度も煽られた
けど」
三笠が、タコプラーヌしているのことに
驚きというか。
「結局、煽りもただの自己満だからさ、
何で他人の◯慰に、付き合わなきゃならないの?」
ここが戦場なら、勝つためにいくらズルを
してもいいと思うけど。
叶井の言う通り、
たかがゲームなんだよね。
ゲームを好きな気持ちを、
踏みにじるのではなく、
それらは遊びでしかないから。
アタシもゲームは好きだよ、
でも、現実との線引きは
ちゃんとしないと。
「もうすぐホームルームの時間だね。
僕は、自動販売機で炭酸クサヤミルク
買うから、先に行ってるよ」
挨拶を交わし、4人はそれぞれの
場所へ帰る。
低年化の激しい現代日本、
私たちの時間軸は、
転校生の登場で大きく変わる。
隠された黒塗りを暴くことで、
私たちはどこへ向かって進むのだろう。