何かを変えたくて
大人になってみても、別に何の楽しみもある訳じゃない。
仕事もあるけど、人付き合いも別に対等って訳じゃないし、
こんな人生をずっと送り続けて、本当にいいのだろうかと思う。
「ああ〜、ダルいなあ」
「こら、ノエル、ちゃんと仕事して!!」
「はい、すみません」
そう言って、俺はいつも通り傷薬を作っていく…
それを買うのは、もちろん冒険者たちである。
正直、俺は客でもあるこの人たちが羨ましくなる。
仲間パーティーに囲まれて、
もちろん本音で物事を語り合って、信頼関係を築いている。
はあ、とは言っても俺、
怪我なんてしたくないしなあ。
俺の親は普通の商売人だったし、
そりゃ、学校には冒険者に憧れる子供は多かったさ。
でも、不安定だし、死ぬかも知れないわけで、
別にみんながモンスター被害に遭ってるとか、そういう訳でもないんだよな。
まあ、つまりなにが言いたいかっていうとさ、
敢えてそんな職業に就く必要もないってことなんだよ。
でも、こうしてこのまま何にもしないで、薬売って、
人生が終わってくってのも、なんかつまらない。
夢ってわけじゃない、
ただ、今の自分の現状が違う、なんて理由で、俺は仕事を減らしては、ダンジョンに冒険に出てみようと思った。
上手くいけば、一攫千金だ、
なんて嘘ついてな。
いや、まあそれもある。
「あ、じゃあ俺、この辺で時間なんで…」
「あ、うん、お疲れ様」
同じくバイトをしているエリカが、
そんなふうに言って時計を見る。
「あのさ、ポーションってさ、店員価格で買えたりするのか?」
俺は試しに尋ねてみる。
「ノエル、風邪引いてたの?」
「いや、違うよ。 ただ聞いてみただけ…」
「店員は半額で買えるんだよ…まあうちは、ポーションと、解毒薬と、それから帰還魔法陣と、万能薬、基本的なものしか置いてないけどね」
「じゃあ、ポーション50個と解毒薬10個、脱出用の魔法陣10個、万能薬2個買ってくよ」
「えっ? もしかしてノエル、ダンジョンに挑戦するの〜?」
「まあ、退屈しのぎにな…ちょっと気分転換とか、ストレス発散になればと思って…ただそれだけだよ」
「ふうん、まあ、確かにそういう人も結構いるけど、だいたい3日坊主ってところだとおもうよ?」
「やってみなければわかんないさ、まあ、確かにこんな覚悟だとやられちゃうかもなあ」
俺もそうだと思うよ、実際。
大体にして、体育の成績がクソだった俺のことだ、
子供の頃からゲームなるものを遊んできたけど、だいたい一週間もしないうちにクリアしちゃうんだよな。
「んじゃ、まあそういう訳で、また来週」
「また来週」
そういうと俺は外に飛び出て、武器屋へと向かっていく。