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家の中を探るとなかなかに面白いものが
わんさかと出てきた。
この世界の地図や現代でいう冷蔵庫のような
食材を保存する長方形の鉄箱、原理はわからないが
手をかざすと水、お湯が流れる石。
ほこりを被った本棚にはたくさんの書物もあり
何冊か読んでみたがもちろん当たり前のように
読めるわけもなかった。
「異世界にきてまだ数時間だがなんとかなるもんだなぁ」
俺は冷蔵庫の中のパンとジャムを貪りながら
呑気にそんなことを呟いていた。
俺がやっていることは完全なる盗人だ。
もしここのサイコパスな住人が帰ってきて
激昂してきたら感動するほどの土下座をかましてやろう。
といいつつも心のどこかで帰ってこないのだろうと
俺は思っている。
その理由はシンプルなものだが
ほこりを被った本棚、腐りにくそうな
食品の数々、貴重品と思われそうなものが
明らかに少ないといったことが分かったからだ。
この世界は現代の俺がいた世界よりも
モンスターと呼ばれる脅威がある以上
治安もきっと良くはない。
どの世界にも悪いやつがいる訳で
モンスターを倒せないものや金持ちを狙う
盗賊が必ずいるはずだ。
そんな奴らがこんな家を見つければ金目の物は
根こそぎ持っていかれるだろう。
さすがにこの世界でいくら平和ボケのやつが
いたとしても最低限大事なものは持っていくはずだ。
とりあえず使えそうなものは借りていこう。
盗むのではない。借りて行くのだ。あくまで。
地図を見ればいまの場所がわかりやすく
赤い点で記されている。
この森は迷いの森と呼ばれているそうだ。
なぜかわからんが日本語で書いてる。
なにかの魔法か?読む人によって
言語を変えてくれるようなものなのか?
地図の上からこの森から近い街を
指でなぞれば街の名前も浮かんできた。
ファルトリア
次の目的地はここだな。