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9話:ライブ配信開始まで3.2.1⋯⋯スタート!

「ちいさければちいさいほど高いところにある乗り物ってなーーーーーんだ!」

 

 その生放送は、メトたちが29階にたどりついたときにはじまった。


「“流れ星花火大会”特別生放送をごらんのみなさま こんばんは! ハナビはなんといま、ニューゲイト・タワーホテルの上空にきています!」

 

 プロペラの音にまけじと彼女は声をはりあげる。


「本来は花火大会本会場の熱気を現場からおとどけする予定だったの! だけどだけど、もうみんなわかるよね! そうです、なんといま、世界を魅了してやまない“歌姫みこ”が一ヶ月ぶりに世間に顔を見せてるのですぅーーーーっ!」


 どんどんぱふぱふっ、という効果音とほぼ同時、画面がさっとニューゲイト・タワーホテルの最上階にあるバルコニーにうつる。

 不機嫌さを隠しもしない顔をした歌姫がそれでも、ヒジをつく手とは反対側を、ひらひらとふる。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 見ました、見ましたよね! 歌姫がなんと本カメラにむかって手をふって見せてくれました!


 どうしましょう、大手企業を飛び出し、ゆめのチューバーデビューして3年! インフルエンサーに名を連ねるも再生回数は下降ちゅう! 下着姿すら覚悟していたハナビちゃん、世界デビューまで秒読みだぁぁぁあーーーーーーー!」


「これこれ落ちつきなさい。 下降どころか墜落(ついらく)したらどうすんじゃ」


 台本があるかのような完璧なツッコミだ――。ニヤッ、と撮れ高を確信したカメラマンが、狭い室内ではねる動作をみせるハナビを おさめる角度で操縦席へとカメラをまわした。


「あっ! ごめんなさいご紹介がおくれましたーーー! こちら(かめ)ジイこと! ハナビがのるこのヘリコプターの運転手さんですぅーーーーっ!」


「ジジイはお呼びでない? こりゃまた失礼しました」


「亀ジイさんはなんとですね、本日の特別生放送にノーギャラでご協力いただいてるんだよぉーーーー! ヘリコプターを用意してくれた叔父さんのお友達なの!」


 ハナビは声を渋くさげる。


『いいかい、【花火の裏でこっそりハナビの浴衣のヒモをほどいてみた――!】なんて動画をとるのはよしなさい。 おじさん、知人をたよってみるからね』

 

 だから叔父さんと約束したんだよ! ねっ、カメラマンさん!」


 こくん、とカメラを縦に動かす。大手テレビ局を退職して三ヶ月、『“バズ”のためなら炎上も辞さない』と、孫ほど歳のはなれた姪っ子がいいだしたため、歌姫到来のこのチャンスをのがすわけにはいかなかったのだ。


 ――そんな叔父さんカメラマンの耳に、爆発音がどこからか届いたのは、「身勝手にあおるなコメント欄、絶対に脱がさせんぞ」とつぶやいたときだった。


「ん? いまホテルの方からすごい音がせんかったか?」


 コクピットの亀ジイがいぶかしげにまぶたをほそめた。長年の経験が、ホテルの横壁へとカメラを自然と動かすが、姪のハナビが画面にわりこんできた。


「くぅぅ、さあさあ盛り上がってきましたよみなさん、お祭りの幕開けをカウントする花火が打ちあげられました! “流れ星花火大会”スタートまでのこりわずかです!」


 いま、ホテルの方から鳴らなかった? ハナビちゃんがいってるし、音が反射したんじゃない? 知ってるか、いまの祭りがはじまる前に鳴らす花火、号砲花火ってゆんだぜ? 合法花火?ぎゃくにこわいかも!

 

 群衆はざわめく。そのもようをズームでとらえるカメラマン、それに亀ジイやハナビと、この場にいるだれもが違和感をいだきながらも、すずしい夜風がそれを吹き飛ばす。


 ただひとり、バルコニーの歌姫をのぞいて。


「⋯⋯⋯⋯はじまった」


「さあさあさあそれではみなさん! 今日はおもっきり、一夜をハナビとお楽しみしましょう! 


 チャンネル登録高評価、よっろしっくねーーーーーー!」






 人気チューバーの喫煙室コーナー――⭐︎


 もーーー。 ハナビはね、浴衣を着てもらったペットの“ハナビまる”に一肌ぬいでもらうつもりだったのよー! あれは叔父さんの勘違いなわけだ! だけど下着姿まで考えたのもほんとなんだよねー。 だから結果的に大炎上とデジタルタトゥーをギリギリ未然にふせいでくれたんだね!


 ぷはーーー。(煙をはく叔父さんとにおいがうつらないように小型扇風機でそれを飛ばすハナビちゃん)


 あっちなみに、ハナビまるはボールパイソン(ニシキヘギ)で、性別はオス、ちょっとだけこわがりなやさしい子! こんど動画にでてもらうね! ってことで、チャンネル登録⭐︎評価よろしくおねがいしまーーーす!


 ――⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎


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