10話:大・爆・発
「透明化が――」
天井に穴をあけるくらいは予想してたけど! まさかうえの階の洗濯機が!!!
「「「爆発したあーーーーーーーーッ!」」」
――なんだあの魔女たち、自分でやっといてあごがはずれるくらいびっくりしてるじゃないか。リアルに目玉が飛び出す顔はじめて見た。さすが魔女。それより“偽透明化”の正体は、カメレオンのように景色に擬態する布?⋯⋯かくれみの術?
『魔法なんていうとおばあさまにしかられる』とは、それが忍法だからか?
「ねっ、この粉塵ならカメラもまっしろよ、いまのうちに隠れましょう?」
カリンさんにさとすように耳打ちされて、はっとしたぼくは“透明化”を再開する。だけど、
「魔女がくのいちなら、ぼくは忍者になれる可能性が⋯⋯?」
「あかんてメト! それ以上属性増やされたら一般人のオレの立つ背があらへんて!」
それもそうか。
「⋯⋯⋯想定外、だけどうえにひとはいなかったようね。 ならいいわ、いそぎましょう」
「そうねおねえさま。 ヤツらがくるわ」
「隠密は失敗。 それは想定内。 ここまでこれたのが奇跡」
はらりとめくれた光学迷彩のような布を忍者おねーさんたちが手にとり頭上にもちあげると、姿がまた消えた。
それから、とんっ、と地面を蹴るような音がすると、なんというか、室内に充満したナニカがうすくなった。
⋯⋯⋯魔力、かな。知ってるようで知らないこの感覚は、歌姫を見たときに感じたものとすこし似ていた。
「⋯⋯⋯いけるかしら?」
マダムが、洗濯機のうえにならぶ乾燥機の一台にたつと、穴あきになった上階の床に手をかけた。ぼくとおなじく低身長だけど、ギリギリ届いたみたいなんだけど。
「なにやってるの?」いや、やりたいことはなんとなくわかるんだけど。
「わたしを踏み台にしてうえにあがるのよ!」ああやっぱり。
「さあはやく! 腕がプルプルしてあまりもちそうにないわ!」
「⋯⋯いこうか」「せやな!」「カリンさん、ごめんなさい」
「「「おじゃまします」」」
「秘密基地に忍びこむ子供のようでわくわくするわね!」
マダムの頭をヒザで踏むことにはとても抵抗があったけど。
本人が満足そうだからいいか、と、みんなでマダムをひっぱりあげながらぼくが思ったときだ。
「“式神――モード・狛犬”、さあ侵入者どもを嗅ぎわけろ」
あけっぱなしの、三十階につづくドアの先でスーツの男がそういいはなつと、鈴の音をしゃりんっと鳴らしながら獅子のような模様をした犬が二匹、僕たちめがけて宙を蹴った。