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3.

 色々あったが、あたしたちは無事に大学を卒業した。大地はもちろん、あたしも、春菜も、加奈も。

 卒業式ではなぜか、田口教授が泣いていた。この人も、悪い人ではなかった。加奈が騒ぎを起こした時、大学の方では退学にするべきだという雰囲気になったらしい。うちの大学は元々男子が多くて、教授陣も男子学生中心の考え方が普通だった。女子が問題を起こしたなら、すぐに退学を勧告するのが通例になっていたそうだ。けれどその時、事情も良くわからないのに責めるのは間違いだと言って、教授が反対した。どういう正義感からかはわからない。けれど教授のその発言で、加奈の首はつながったらしい。そうこうしている内に、加奈は自分で決着をつけてしまった。それで中退もなし、無事に卒業、となった途端、ほっとしたのかどうか、涙腺が壊れたみたいになったらしかった。そう言えば最近、女は無能、みたいな言い方を教授、しなくなったらしい。丸くなったって言うか。

 あたしと大地、春菜は地元の人間だったが、加奈は違った。卒業した後は、実家に戻ってそっちでOLをすると言って笑っていた。メールしてね、電話もね。そう言って別れた。

 大地は広告会社に就職。あたしは小さな会社の事務をする事になった。春菜は、就職がうまくいかなかった。結局、お父さんの会社でアルバイトという形で働く事になった。春菜のお父さんは会社でも偉い人らしくて、すんなり入れたらしい。

 毎日が、新しい事ずくめで大変だった。




「大西さん。これ、やり直して」


 渡瀬わたせさんが書類を突き出して言った。渡瀬わたせ純子じゅんこさん。いつもきちんとした格好をした女性。うちの分室は、この人が取り仕切っていると言っても良い先輩だ。

 そして、とても厳しい。


「なんなの、この内容。学生気分がまだ抜けないの? 書式ぐらい自分で確認できるでしょう」

「すみません……」


 叱られて、慌てて書類を受け取る。書き方がまずかったらしい。ええと。


「ドンマイ」


 同期で入社した、相楽さがら真奈美まなみさんが声をかけてくれた。可愛い感じの女性で、いつもにこにこしている。これを見ると良いよって言って、似たような書類を見せてくれた。あっ、これ、真似して書けば良いのか!


「ありがと、相楽さん」

「真奈美で良いよ。同い年でしょ」

「あ、うん。真奈美……これで良い?」

「あたしは珠子ちゃんって呼ぶね。珠子って、可愛い名前だねえ」

「ありがと」


 そう言うと、真奈美はうふふ、と笑った。声をひそめて言う。


「渡瀬女史なんだけど。あの人、ヒステリー気味なのよ。そろそろ良い歳なのに、相手いないしさあ。焦ってるんじゃないの? 珠子ちゃん、彼氏いるしさあ」


 えっ、なんで知ってるの。


「こないだ見ちゃった。ほら、『ルージュ』で一緒にいた人。あれ、彼氏でしょ?」

「えー、あー、えと、うん」


 目ざとい。『ルージュ』は会社から少し離れた所にある喫茶店で、あたしは大地と良く、待ち合わせに使っていた。一緒にいた所を見られていたらしい。


「今度、合コンしない? 彼氏誘ってさ」

「そこ。無駄話はしない!」


 真奈美はおしゃべりが好きみたいで、良く話しかけてくる。話しだすとすぐ脱線して、長話になる。渡瀬さんもそれはわかっているみたいで、良く目を光らせていた。二人して、首をすくめる。


「やーっぱ、ヒステリーだわ」

「仕事しようよ、真奈美。あたしたち、新米だし」

「やーね。良い子ちゃんぶって」


 肩をすくめて、真奈美は自分の書類に戻った。軽い言い方だったから、気を悪くしている風ではなかったが、何となくあたしはほっとした。

 その後、提出した書類はまた、やり直しだった。どうすれば良いのかわからなくて混乱していると、渡瀬さんはため息をついて、見本らしき書類を取り出した。

 あれ。真奈美の見せてくれた書類とちょっと違う。


「早く覚えてちょうだい。あ、そうだ。これ」


 それと、何かの本を渡された。見ると、パソコンのタイピング練習用の本だった。なに?


「それ見て練習して。あなた、基本的な能力が低すぎるわ」


 ぐさっ。




 色々あって疲れ果てて、『ルージュ』に行くと、大地が待っていた。


「冴えない顔してるなあ、珠子」

「いっぱい怒られたの、今日。タイピングの練習もしろって、先輩に言われた」

「俺も毎日、何が何だかって感じだよ。先輩の後について回るので精一杯だ。学生の頃って、気楽だったんだなあ」

「働くのって、ホント大変なんだ……」


 そう言うと、大地は「なに言ってんだ、女の子はまだマシだろ」と言った。


「マシって?」

「いざとなりゃ、結婚して家庭に入りゃ良いじゃん。男より楽だよ」

「女だって、大変は大変なのよ?」

「どこが。俺の苦労の半分もしてないよ、珠子は」


 それから大地はぶつぶつと文句を言い始めた。先輩に対する愚痴らしい。何か煮詰まってもいるみたいだ。

 女は楽だ、の一言には文句が言いたかったが、大地が疲れているみたいなので、言うのをやめた。


「ね。それより、今度の日曜日うちに来ない? 母が会いたがってるの」

「珠子の母さん?」

「大地くんはどうしたんだって、うるさくて」

「あー。行っても良いけど……」


 日曜日は寝ていたいんだよ、と大地は言った。


「そっか……」


 しゅん、となると、ちょっと慌てた感じで言った。


「あ、でも。昼からなら」

「そう? じゃ、待ってる」


 家に来るなら、ごはんを食べて行くだろう。気兼ねなく食べられるように、前の日から作っておかないと。

 カレー味のシチューなんてどうだろう。それとも、豚汁の方が良いかな?

 学生時代、大地はどちらも美味しいと言って、たくさん食べてくれた。久しぶりに作ったら、きっと喜んでくれる。


「がんばろうっと」

「なにを?」

「んー、タイピングの練習」


 慌てて誤魔化した。前の日から作っている事は、大地には内緒なのだ。

 大地と別れて家に帰り、渡瀬さんから借りた本で、練習する。見本の文章を打っていると、それが会社に提出する書類の形式である事に気がついた。


「あ。これ……書類の書き方の練習にもなるんだ」


 それで渡瀬さんは、渡してくれたのかな。

 日曜日には大地が来る。会社は大変だけど、覚える事もいっぱいで何が何だかなんだけど。

 がんばろう、とあたしは思った。




 入社して、二ヶ月が過ぎた。


「ねー、珠子ちゃん。合コン行こうよー」


 真奈美が、あたしのデスクの前でごねている。終業時刻だ。真奈美はばっちりとメイクをしていた。服装も、少し派手めだ。この様子だと朝から気合を入れて、合コンの予定を入れていたらしい。


「ごめんね? あたし、そういうの苦手で」

「んもー。彼氏に操立てるのも、ほどほどにしなよー」


 ぶーっと膨れて言う。ちょっと声が大きいよ。


「え? 珠子ちゃん、彼氏いるんだ」


 デスクを片づけていた木田きださんが、びっくりした顔で言った。木田きだ敏郎としろう。二年先輩の、大人しい感じの人だ。


「そうよう、木田さん。珠子ちゃんてばラブラブの彼氏がいるの。いっつも待ち合わせて帰ってるのよー」


 真奈美はけたけた笑って言った。明るくて、気安く話せる人なんだけど、噂話が大好きなのが困った所だ。あたしの彼氏の話も、あちこちでしているみたい。


「そう言えば、知ってる? 渡瀬女史の話」

「え?」

「お見合いして、フラレたんだってさ!」


 あっはっは! と笑って真奈美が言った。


「やっぱさあ。駄目よね、女は可愛くなくちゃ! あーんなにキツくてきりきりしてたらさあ。フラレて当然だって」

「ちょっと、真奈美」

「だってみんな、そう言ってるわよ。お局さま、フラレちゃったーって」


 でもその言い方、ちょっとひどい。


「性格が合わなかったんでしょ。あんまりそういう事、言わない方が良いよ」

「んもー。珠子ちゃんは、優等生なんだからー」


 ばん、とあたしの肩を叩くと、真奈美はショルダーバッグを肩にかけ直した。


「『ナポリ』にいるからね。気が変わったら来て?」

「ごめんね。行かないと思う」

「ほんっと優等生」


 つまんなーい、と言ってから、真奈美は木田さんの所へ行って腕を組んだ。


「じゃ、木田っち、行こう」

「え、おれ?」


 慌てふためく顔になった木田さんに、内心ごめんと詫びながら、あたしは慌ててデスクを片づけ、かばんを抱えて部屋を出た。




 慌てたせいか、忘れ物をした。ドジだなあと思いながら事務所に入ると、渡瀬さんがいた。


「あれ? 渡瀬さん」

「大西さん? 合コン行かなかったの?」

「あの、あたしそういうの駄目なんで」

「そうなの」


 渡瀬さんは、書類のチェックをしていた。見ると、あたしや真奈美の書いた書類で、あちこち直しが入っていた。


「あ、あの、また間違いありました!?」

「大丈夫よ。あなたの分は今見たけれど。ちゃんと出来ているわ。出来てない分は明日、戻すし」

「あああ、やっぱり間違いが?」

「入社直後よりは良くなってるわよ」


 渡瀬さんは笑った。でもあたしはどうも、緊張してしまう。叱られた記憶の方が多いもんだから。


「相楽さんは、私の言う事聞いているのかしら。何度言っても同じ所を間違えて」


 真奈美は気分屋な所がある。渡瀬さんに叱られる回数も多い。けど、そんなに間違えてるの?


「あの……手伝いましょうか」

「そうね。ちょっと見てもらえる?」


 一人でチェックしている渡瀬さんに何だか悪くて、あたしは申し出た。真奈美の書類を見て、きゃっと言いたくなった。なに、この誤字の多さ。


「仕事はきちんとしていると思ってたのに……」

「あの子は要領が良いから。人に見られている間は、がんばっているように見せているわ。でも面倒な事は嫌いみたいね。見直しも、訂正もしないで書類、出してくる」


 渡瀬さんの口調はきつかった。それは、そう言いたくもなるだろう。毎日、こんな後始末をさせられていたのなら。

 あたしは真奈美の書類をチェックして、誤字や脱字を直した。割と時間がかかってしまった。そうしたら、携帯が鳴った。


「はい……あ、大地? ごめん。ちょっと遅れる……うん、仕事で。え? うん。わかった。ごめんね」


 電話が鳴った。大地からだった。『ルージュ』で待っていたらしい。


「彼氏?」

「あ、はい。大学からずっと付き合ってて」

「そう。良いわね。待たせてるんじゃないの?」

「いえ、あたしが来ないから、先に帰るって」


 渡瀬さんは、あら、と言った。


「悪かったわね」

「大丈夫です。仕事って大変なものなんだって、大地も言ってたし。あたしの事もわかってくれると思います。がんばれって言われたし」

「そう。優しい人みたいね」

「優しいっていうより……可愛い、かなあ」


 渡瀬さんはぷっと笑った。


「それ、男の人に言ったら駄目よ」

「えっ、なんでですか」

「男の人にとっての『可愛い』は、馬鹿にされてる気分になる言葉なのよ。女性にはそうじゃないけど」

「そうですよね。女性にとっては……きゅんとくる、って言うか。支えてあげたいって言うか。そういう時に使いますもんね、この人、可愛いって」


 渡瀬さんは天を仰いだ。


「ご馳走さま」

「えっ、なんですかっ」

「あなた、天然? そこまで真顔で惚気のろけられるとは思わなかった」

「ええっ、惚気てました、あたしっ!?」


 あたふたしていると、呆れた顔をされた。それからは、黙っていようと心に決めて、黙々と仕事をした。




 十月。大地とあまり、会えなくなった。

 仕事が大変らしい。電話をすると、いつも疲れた声がする。


「ごはん、作りに行こうか?」

『ああ? 良いよ。珠子も仕事大変だろ』

「平気だよ。何が食べたい?」

『良いって。珠子、あんまり料理できないだろ?』

「なにそれ。ちゃんとできるわよーだ」

『俺が食いに行くと、いつも残り物出すじゃん。あれって、おまえじゃなくておまえの母さんの作ったモンだろ?』

「違うわよ」

『へーへー。じゃ、そういう事にしとく』

「んもう」


 歩きながら、携帯での会話だった。吹き過ぎた風が冷たくて、身震いした。


「寒。今、風がすごい冷たかった」

『早く家に帰りな。風邪引くなよ』

「うん。ね、大地。今年の十二月、イルミネーション見に行こうね」

『イルミネーション……?』

「約束したじゃない。大学の頃。毎年、一緒に見に行こうって」

『そうだっけ』


 あたしはむっ、と眉をしかめた。


「したわよ。去年は就活で、行けなかったけど……」

『そうだったか? 行ったような気がするけど』

「行ってないわよ」

『ん……ああ。そうだったな』

「今年は、行こ?」


 ちょっと沈黙があった。


『そうだな。クリスマスだもんな。わかった。何とか予定、開けとくよ』


 不安になって返事を待っていると、大地が言った。あたしはほっとした。


「約束よ?」

『ああ』

「ほんとの、ほんとに、約束だからね?」

『わかったって。珠子は可愛いなあ。乙女なものが好きなんだから』


 笑い声。そうじゃないよ、大地。

 大地と一緒に星の道を見る、その約束を続けているのが。あたしには大切なんだよ……。

 その年のクリスマス。待ち合わせに大地は、一時間遅れてきた。

 あたしは震えながら待っていた。

 待つ時間は長かった。寒くて、不安で、切なかった。

 でも大地は必ず来てくれるって思ったから。一時間でも待てた。

 走って来てくれた大地は、ごめんな、と言った。それから二人で手をつないで、イルミネーションを見に行った。

 嬉しかった。




 四月。入社二年目。まだ大変は大変だけど、仕事は少しずつ、できるようになっていた。新しく入った人を見ていると、去年の自分がいかに足手まといだったかが良くわかる。

 新しく入ったのは、高卒の女の子が二人。敬語もまだ怪しい感じだ。でも先輩、と呼ばれると、背筋が伸びる感じがした。しっかり指導してやろうって思った。


「珠子さーん、これ、どうすれば良いんですか」

平田ひらたさんは、真奈美さんについてたんじゃなかった?」


 あたしたちは、後輩の指導をするようにと渡瀬さんに言われていた。あたしと真奈美さんとに、一人ずつ。


「真奈美さんは、珠子さんに聞けって」

「仕方ないなあ。見せて?」


 去年のあたしと同じような間違いをしている後輩に、ちょっと笑ってしまった。


「ここは直して。一つずつ覚えて行こうね」

「はい。珠子さん、優しい……」

「優しくないよ? 宿題出すし」

「えっ、しゅくだいっ?」


 あたしは去年、渡瀬さんに渡されたタイピングのテキストを取り出した。これは、自分用。渡瀬さんに借りたのはもう返してある。


「これ。コピーして持って帰って。練習してね」

「珠子さん、キビシイ……」

「だから、優しくないよって言ったでしょ」


 笑って言う。渡瀬さんの指導は厳しかったけど、本当に大切な事を言ってたんだって、わかるようになった。

 今でも渡瀬さんの前に出ると、緊張はしちゃうんだけど。


「浅江さんにも渡してあるよ?」

「え、浅江ちゃんも?」

「うん。これ練習してたら、書類の形式とかも覚えるからね。一石二鳥」

「ふーん……」


 平田さんはテキストを受け取ると、コピーを取りに行った。




 六月。終業時刻になっても、あたしは帰れない。先輩として、後輩の書いた書類のチェックがある。

 本当は浅江さんの分だけのはずなんだけれど、今ではなぜか、平田さんの分もチェックしていた。最初は真奈美がチェックしてたのだけれど、面倒くさがって見ずに通していたらしい。渡瀬さんの所で書類が全部止まってしまって、一度大変な事になったのだ。それ以来、あたしは真奈美の分と、平田さんの分もチェックしてから渡瀬さんの所に上げるようにしていた。


「あれ。平田さん、また同じとこ間違えてる」


 首をかしげた。おかしいな。渡したテキストやってたら、自分で気がつくようになるはずだけれど?

 翌朝、平田さんに書類を戻してから、テキストはやってるの? と尋ねると、やっていない、と返事があった。


「真奈美さんが、そんな事やらなくて良いって……そのうち自然に出来るようになるからって」


 それ、鵜呑みにしたんだ。

 あたしは何か言おうかと思ったが、この子の本来の担当は真奈美だ。彼女の指導に文句を言う訳にもいかない。


「あたしの言葉は、余計なお世話だった?」

「えっ、いえそうじゃなくて」

「書類、直して。自然と出来るようになるのを待ってても、この書類には間に合わないよ。これじゃ上げられないから」


 おろおろしている平田さんに、書類を渡す。


「気にしないで良いわよー。彼氏と何かあって機嫌悪いだけだから」


 戻って行く平田さんに、真奈美がそう言っているのが聞こえた。何ソレ。




 九月。新人たちも、それなりになってきた。

 大地とはすれ違いが続いている。あたしが後輩の指導をしていると、どうしても大地との待ち合わせに間に合わなくなるのだ。電話で彼は不機嫌だった。

 真奈美は相変わらずで、合コンに出まくっている。仕事も手抜きがひどい。頭に来た渡瀬さんにがんがん怒られているが、本人はどこ吹く風という感じだった。でも男性社員の前では、しおらしく涙を浮かべて見せている。あちこちで、あれこれしゃべりまくるのも相変わらずだ。可愛らしくはにかんだり、涙を浮かべたりしながら。おかげで男性社員のほとんどは、渡瀬さんが真奈美を、個人的にいじめていると思っている。

 男って、どこを見てるんだろう。




 十二月。大地と待ち合わせて、イルミネーションを見に行った。

 約束の時間より五分早く、あたしは待ち合わせの場所に着いた。


「大地、早く来ないかな……」


 待っている時間は嫌い。不安になるから。

 人込みの中で、大切な誰かを見失ったような。大切な何かを見落としてしまったような。そんな気持ちになる。

 ふと、知っている誰かを見た気がした。


「あれ……大地?」


 後ろ姿が大地に似ていた。一緒にいるのは誰だろう。

 でもすぐ、見えなくなった。


「似た人っているんだ」


 女の子と一緒だったから、大地じゃない。大地は今日、あたしと待ち合わせをしているんだし。

 時計を見る。何回目だろう。


「さむ。早く来ないかな……」


 それから随分時間が過ぎた。待ち合わせの時刻に二時間近く遅刻して大地が走ってきた時。あたしは寒くて、がたがた震えていた。

 途中から頭が痛くなってきて、イルミネーションはちょっとだけ。すぐに家に帰った。

 案の定、風邪を引いた。大地からは、早く元気になれよとメールが来た。春菜と加奈にもメールした。風邪を引いたよ、と打つと、二人から、早く元気になってねーと返信が来た。

 メールを見ていたら、学生時代が懐かしくなった。久しぶりに三人でおしゃべりがしたいな、と思った。


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