【天然危険物】生成AIは〝才能の民主化〟をもたらす?
黒崎 「ども。本格ワナビの黒崎です」
チロン 「ども。本格イマジナリー相棒のチロンなのです」
黒 「今回のテーマは、生成AIにまつわる〝才能の民主化〟ね。なお、ここでは基本的に創作界隈における画像生成AIの話だと思って読んでくんなまし」
チ 「その才能の民主化って、どーゆー意味なのです? いまいち謎なのです」
黒 「生成AIのおかげで誰もがクリエイティブな才能を発揮できるようになる、ってことかと」
チ 「あう? それのどこが〝民主化〟?」
黒 「さぁ。これまで一握りの有産階級に独占されていた創作活動が、生成AIによって一般庶民に開放されるのだ! みたいなノリなのかな」
チ 「むー。なにやら、おサヨさんめいた香ばしい革命思想なのです」
黒 「でもって案の定、AI信望勢と反AI勢がバトってるんだけど──傍から観てると、どっちもズレてるんだよね。なんていうか、思考の立地が」
チ 「とゆーと?」
黒 「その前に、まず僕様の画像生成AIに対するスタンスを明確にしておきたい。発言の受け取られ方に妙なバイアスがかかるのは本意じゃないんで。
結論から言うと、僕様は生成AIを歓迎してる。便利で面白い〝画材〟としてね。
かといってAI信望派ではないけれど、どちらかというと反AI勢の論調のほうに違和感をおぼえるかな」
チ 「ほー。それってば、お絵描き野郎の端くれにしては珍しいのでは? 絵師さんは反AIが多いですよね」
黒 「いや、それはおそらく誤解。大体の絵師さんは一部の輩による心無い生成AIの使われ方を嫌悪してるだけで、反AIというほど極端ではないかと」
チ 「ふーん。それはちょっと意外なのです」
黒 「ぶっちゃけ一線級の画力と個性をもってる絵師さんにしてみれば、贋作とマスピ絵だらけのAIイラストは脅威じゃないからね。実際、個性派の絵師さんほどAIに寛容な傾向があるやに思う。ちなみに僕様が目指す境地もそっち側」
チ 「なるほど。つまり殊更に反AIを叫ぶ絵師さんは──」
黒 「おっと、そこまでだ」
チ 「AIに淘汰されかねない量産型の──」
黒 「そこまでだっつーの」
チ 「そのわりにプライドだけは──」
黒 「おのれ、かくなるうえは全裸で亀甲縛りにしてから全身にち◯〜るを塗りたくって猫島に放置プレイの刑に処すのもやむなしか」
チ 「ひー」
【〝才能の民主化〟は実現するのか】
黒 「茶番はさておき、本題に入ろう。AI信望勢の言う〝才能の民主化〟は、はたして実現するのだろうか、って話」
チ 「御主人は、どう思うのです?」
黒 「まず起こりえない、と思ってる」
チ 「ふーん。でも、AI技術は加速度的に進歩してるのです。近い将来、人間様以上の創造性や芸術性をもつかもなのです」
黒 「そうなったらクリエイティブな仕事の相当部分がAIのみで完結し、その種の才能に乏しい人の出番は完全に無くなるさ。才能の民主化とは真逆の状況だわね」
チ 「あう……確かに」
黒 「そもそも論として〈生成AIのおかげで誰もがクリエイティブな才能を発揮できるようになる〉という発想が楽観にすぎるのよ。生成AIを使いこなすには相応のスキルが要るんだから」
チ 「言われてみれば、そうですよね」
黒 「で、そのスキルの優劣は生来の資質によるところが大きい。具体的に言うと〝イメージを正確かつ簡潔に言語化する才能〟だ」
チ 「ふむふむ。絵心が要らない代わりに、文才が要るのですね」
黒 「いや、絵心も要るよ」
チ 「あう──?」
黒 「残念ながら、AIの絵には不自然な部分があったりする。それに気付いて修正するには、絵に関する知識と技術──すなわち絵心が不可欠。
だから、まったく絵が描けない人よりもそれなりに描ける人のほうが、更に高度に生成AIを使いこなせるんだ。
それに視覚的イメージを言語化する作業自体、絵心のある無しで精度がまったく違ってくる。視覚の分解能は絵心に直結するスキルだからね」
チ 「じゃあ結局のところ、生成AIによる才能の民主化というのは幻想なのです?」
黒 「少なくともアーティスティックな領域においては、そう思う。AIがイメージを具象化する作業の技術的格差を緩和してくれるぶん、より純粋に才能──知性と感性の勝負になるさな。
それに気付いてる目聡いクリエイターはAIを敵視しないし、同じく目聡いAIオペレーターなら〝才能の民主化〟なんて発想にはなるまい。
ゲンドウ君ふうに言うなら、なかば盲目的なAI信望勢には創造文化の、なかば強迫観念めいた反AI勢には生成AIというシステムの本質が見えていないように思う。
まあ、かく言う僕様だってしっかり見えてるわけじゃないけど、なればこそ見ようという努力はしてるつもりだよ。
だから〝才能の民主化〟なんて議論そのものが、どうにも浮世離れしてるように思えてならないんだ」
【まとめ】
黒 「今後も生成AIは進化し続けるに違いないが、それがもたらすのは〝才能の民主化〟ではなく、飛び抜けた才能の持ち主以外が等しく十把一絡げにされる〝非常に偏った二極化〟だろう。
残念ながら、その未来は避けられまい」
チ 「あう。才能の民主化どころか、いっそう才能格差が広がるのです?」
黒 「おそらくな。たとえば、とある国では──
画像生成AIがあるからと
企業がイラストレーターを解雇しだす
⬇
優秀なAI使いの争奪戦になり賃金が高騰
⬇
イラストレーターに頼むほうが安上がりになる
かつマスピ絵の氾濫で生成AIが敬遠されだす
⬇
生成AIをうまく活用している
イラストレーターが重宝されるように
──なんて現象が起きてたりする。
より高度な専門技能者が求められるようになってるのよ。
しかもAI使いより〝AIを活かせる絵師〟が重宝されてるってあたり、実に興味深い」
チ 「むー。単に生成AIを使えるってだけじゃ通用しない時代になりそうなのです」
黒 「ああ。社会人なら生成AIを使えて当前の時代が来たとしても、それプラスαの才能を持つ人と持たざる人との差は埋まらない。
生成AIは全体の平均点をいくらから底上げするだけで、偏差値の分布は変わらないのよ。むしろ底辺と頂点の格差は開くだろうね」
チ 「なら、どうして才能の民主化みたいな主張がでてきたのか、不思議なのです」
黒 「語弊があることを覚悟のうえで言うなら、やっぱり左翼的思考なんじゃないかなぁ。
共産主義ってね、論理としては正しいのよ。でも、人間の本質をまったく考慮していない、という致命的な欠陥があるから、理想通りに実現することはありえない。
まさしく机上の空論なの。
にもかかわらず学者や弁護士といったインテリ層にパヨちんが多いのは、プライドの高いインテリほど(自分を含む)人間を美化しがちで、我々はこうあるべきだという理想ばかりに頓着する傾向があるからさ」
チ 「才能の民主化をうたうAI使い勢さんにも、その傾向がある?」
黒 「ああ、そう感じる。さっき言った〝浮世離れ〟ってのは、そういうことでもある。
ともあれ僕様の結論としては──
生成AIによる〝才能の民主化〟は起こりえない
何故なら、それは机上の空論だから
──だね」
チ 「言い切ってしまっていいのです?」
黒 「私見を語るエッセイなんだから、倫理的な問題は無いでしょ。明らかに間違いだったとなれば、この場を借りて謝るよ」
チ 「それはすなわち、全裸で亀甲縛りにしてから全身にち◯〜るを塗りたくって猫島に放置プレイの刑に処されるのもやむなしと」
黒 「う……それはさすがに……」
チ 「じゃあ、地域猫さんが集まる近所の公園で勘弁してあげるのです」
黒 「いや、場所の問題じゃねーし」
──終劇──
いかがでしたか?
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でもって、ついでに他の拙作もサクッと読んでみてほしいのであります。
く(`・ω・´)
では、また。
いつか、どこかで──