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7 HSS団長室での団長と副団長

宝翔学園防衛機構、通称HSSは学園の特色の一つと言う以上に、宝翔学園を来訪者を初めとしたあらゆる脅威から学園を護る組織として知られている。

組織を構成するのは、主に生徒で戦闘部隊や支援要員を含めて500人程度。

宝翔学園が3000人の生徒を抱える中で、組織としての規模の大きさは学園随一だ。

もちろん、教師にも戦闘経験がある人員がいるので、来訪者の強度によって独自に行動をとる教師もいる。

 団員は部活との掛け持ちを認めているため、多くの生徒は武道系や、魔法研究系に多い。

今では規模が安定しているが、草創期から魔導戦争までの期間のHSS所属生徒の生存率はかなり低かったという壮絶な過去を持つ。

 その中で来訪者に加え、宝翔学園のエルフや魔法師を標的としていた組織との暗闘により、多くの若い命が散っていった。

組織のトップの団長が殉職した事も一再ではない、それぐらいの激闘が学園のみならず岩戸市で行われていた。

状況が変わったのは、魔導戦争時に団長になった御崎という男子生徒だった、本人の戦闘力はあまりなかったが、類まれな政治センスで当時はバラバラに戦っていた岩戸市の自警団やエルフ居住区をまとめ上げ、岩戸市軍と後に言われる組織を構成し、不利な状況を覆す事に成功する。

そのまま、岩戸市軍がまとまっていたら未来は違っただろうが、御崎は原因不明の死を遂げる。

だが、その時に培われた各組織の絆と戦闘経験は、その後のHSSの成長に強く寄与した。

現在は、捜査室と言う名前の大部隊が6つ存在し、以下に小隊と呼ばれる戦闘単位が有りそれぞれに人員が配置されている。

規模が最大なのが第一捜査室で、戦闘部隊としては精強を誇る。

次に第2から第6捜査室と人員が少なくっていく。

第2捜査室だけは例外で、情報収集を主体とする位置づけになっている。

また、団長直下に特殊遊撃部隊と言う存在もいるが、近年は目立った活躍が無く、内外からはあまり注目されていない。

そのHSSの本部は部室が集まる部室棟の3階にある。

今の部屋の主は、神代直と塔依代マナの2人である。

その2人が来客用のソファに座って、もとかから報告のあった如月兄妹の言葉を話している。

「如月小隊だって?」

「ええ、もとかさんが今朝出会った、気になる兄妹は地元でそう呼ばれていたみたい」

公的な場では敬語で話すマナだが、直と2人の時はその猫を軽く脱ぎ去る。

「小隊と言うくらいだから、戦闘力はあるんだろ?地元の戦歴はどうだったんだ?」

「第二捜査室に調査を頼んだけど、詳しい情報は少ないわ」

「…第二でも調べ上げられないのか?」

「あの兄妹の出身地は、ついこの間までDゾーンだったのよ。外部から調べられる情報には、限界があるわ。ただ、断片から考えると、あの地域のDゾーンからの解放には、あの兄妹と実家の神社がかなり役に立っているようね」

「パーソナルデータは?」

「わかる事は少ないわ。家族構成は陸軍所属の父親が行方不明、母親は実家の神社の巫女、姉はエルフ、弟は人間、妹は魔法師よ」

「今の世界を凝縮しているみたいな家族だな」

「ええ、かなり珍しいわよ」

「”ナイトメア”の2つ名を持つお前さんに言われるとはね」

「エルフの姉は精霊魔法の使い手。得意属性は炎。特筆すべきは妹ね、治癒魔法を使えるみたい」

自分の持つ魔法特性を冗談交じりに当てこすられたマナが、軽く頬を膨らませながら言葉を続ける。

生物の破損、怪我を治せる魔法の使い手は素質に左右される魔法師の中ではかなり少ない。

その中でも魔法構成を正確に展開しても、実用レベルの治癒能力を満たす魔法師はかなりレアで、医療、軍事分野へと引く手が数多である。

そのため一部では、治癒魔法師の営利誘拐や、非人道的な実験材料にする組織もいる。

「それは凄いな、治癒のレベルはどれくらいか気になるな」

「私も気になるわね。でも詳細は不明。ただ妹に目をつけた連中が動いているみたい。どうする?」

「情報漏れか?」

「リーク元はわからないけど、手を出そうとしている面々を見ていると、この情報を手に入れられるとは思えないのがもとかさんの結論みたい」

「ふむ…踊らされている可能性もあるのか」

「じゃあ、誰が?までは掴んでないみたいだけどね」

「まったく、ヒト同士で馬鹿やってる場合じゃないだろうに…。まずは来訪者をどうにかするのが先だろ」

忌々しげに直がボヤく。

「保護対象にする?」

治癒魔法師が拉致された場合、多くのケースで悲劇しか生まない、その懸念がマナの言葉に潜んでいる。

「そうだな、もとかがその3人をここに招待したんだろ?」

「そうよ。来てくれたら会ってみる?」

「…いや、生徒会との会議があるから、それは今度だな。受付のリズに任せよう。マナは水晶の目をその兄弟に頼む」

「わかったわ」

「素直に聞くということは、興味があるようだな?

「さぁ?」いたずらっぽい笑みを浮かべるマナ。

「まあ、いい。そんな姉妹に囲まれているこの真ん中の弟は、何者なんだろうな」

「彼については、実家で剣術をやっていたらしいわ。あと3人ともあなたと同じブレイカーよ」

「それは助かるな、ブレイカーランクは?」

ブレイカーギルドに登録されていて、ランクを与えられているという事は訓練生以上の戦闘経験がある事を指す、最初から戦闘単位に組み込む事ができるか否かはかなり入団に必要な要素となる。

「姉がランクB、妹がE弟がCね」

ブレイカーランクはその名の通り、ブレイカーギルドが制定しているランクで、数が増えるほど位が高くなる。

主に戦闘力の大小がランクに比例をして増える傾向が多いが、ブレイカーギルドの活動に寄与をした人物にも割り振られるため、いわゆる事務方の人員にも高ランクのものがいる。

最低ランクはG、最大はSSSランクとなっており、SSSランクは日本国内で見ても数十人というくらいのレアなランクである。

「年齢にしては高めって感じだな」

「ええ、まさにブレイカー協会の資料にあるみたいな年齢とランクのマッチングよ」

「腕なら戦いになればわかるさ。猫を被っていても俺とマナなら見破れる」

「監視レベルを上げます?」

HSSのリソースを使いますか?と言う意味で尋ねる。

「いや、お前の水晶の目で充分だろう。記録はいけるか?」

「見た情報は、スフィアに入れています。戦闘になって破壊されても記録の破損は最小限です」

魔法師はスフィアと言う、魔力で構築された特別な記憶野を脳内に形成している。

その資質にもよるが、そこを利用して魔法の行使の補助にしたり、サブ脳として魔法を介して得た情報を記録する場合もある。

「ふむ…それで行こう」

「それでは、生徒会室に行きましょう。遅れると会長がうるさいですから」

「わかった」

腰かけていたソファに軽い悲鳴を上げさせながら直が立ち上がる。

直は愛用の刀、マナはMLPの長い木の杖を手に取る。

そうして二人は団長室を後にしたのだった。


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