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46 ギルドにて

楓達がブレイカーギルドの強化ガラス製の自動ドアを抜けると、そこはロビーになっていた。

広さは60m×40mほどの広い空間で奥に受付ブースがあり、右奥には階段とエレベーターホールが見える。

道路に面した左の壁面は、窓ガラスで占められているが右の壁には電子ペーパーを張り付けた掲示板が壁一面に鎮座していた。

 キョロキョロしている大雅、アリシアに比べて如月兄妹は室内を素早く見渡して危険が無いか確認をしていた。その様子は、過剰な警戒心に見えるのでちせは首を傾げていた。

「大雅クン、アリシア、そんなにキョロキョロしなくていいじゃない」

ラーニャが苦笑しながらたしなめる。

「いや、俺は初めて入ったし。テレビや動画で見るのとあまり変わらないんだな」

そう話していると、近くのブレイカーギルドの緑と茶を基調にした制服を着た女性職員が声をかけてくる。

「こんにちは。ギルドに用事かしら?」

「あ、はい。俺とこっちのクラスメイトは加入の相談で、えっと如月達はなんだっけ」

「ワタシとちせは、特に用事がないから大雅クン達の付きそいネ」

すすっという動きで、ラーニャはアリシアの傍に寄って行く。

「私達は、飛騨支部から来た事の報告に来ました。すぐに出来そうですか?」

小柄な美夏が、ギルド職員を見上げて聞く。

「ええ、大丈夫よ。まず、お友達の案内をするから1番ブースで待っていてもらえる?加入希望の人は私について来て下さい」

「それじゃ、また後でな」

「私達が遅くなりそうでしたら、先に帰っていてください」

「あ、楓とは別件だしワタシ達は依頼でも見てるねー」

気を利かせたラーニャも、ちせを伴って掲示板の方へと歩いて行く。

1番ブースに入って3人が座っていると、すぐに男性職員がやって来た。その職員はかけた眼鏡を直しながら椅子に座った楓達ににこやかに話しかける。

「わざわざ、報告に来てくれてありがとうございます。俺は本田といいます、今後ともよろしく。そして飛騨支部からは引っ越しの件は聞いています。しばらくの拠点は岩戸市(ここ)ですか?」

「ええ、その予定です。あとは命令系統の報告ですが、HSSに加入しているので命令の優先度はHSSになります」

3人の代表として楓が対応をしていく。

地元のギルドは、結構タメ口や年齢を笠に着た口調で応対する職員が居たが、ここでは違うようだ。

「そうですか、飛騨ではかなり活躍されたブレイカーをHSSに取られるのは残念ですが、仕方ないですね」

「その点はすみません。緊急の依頼についてはなるべく対応します。あと2点の手続きがあります」

「はい」

「1つは先日の遭遇戦での報酬の受け取り、もう1つは自分の銃器ライセンスの進行具合を聞きたいです」

「なるほど、少しお待ちください」

手元の端末のキーボードを操作しながら、ギルド職員は情報を照会していく。

「確認がとれました、まず来訪者撃退の報酬はホブゴブリンとハルピュイアのものですね。魔石に加えて希少部位を回収できました。現金と現物のどちらの受け取りにしますか?」

ちら、と楓が美夏を見ると代わりに美夏が口を開く。

「今回は現金での支払いでお願いします。このギルド証の口座に入れてもらえますか?」

と、美夏は自分のCランクブレイカーのギルド証を差し出す。

これは国内のあらゆる行政サービスと連携をされているギルド証なので、報酬の受け取りの手続きが大幅に簡略化されている。

「わかりました。こちらのリーダーにかざしてください」

言われるままに、美夏がギルド証を読み込ませるとすぐに処理が完了され、美夏の端末の画面に入金確認のメッセージが表示される。

「ありがとうございます。それと、弟の銃器ライセンスはどうなっていますか?半年前に申請と試験をしているので、そろそろ結果が出ると思うんですけど?」

「確認します…。あ、これは先ほどギルドに連絡が来ています。次は実技試験になるので、5/9に自衛軍の入間基地に出頭しろとの事です」

出頭、という言葉に軍の官僚組織らしい言い方だな、と楓は自分の父やその同僚の事を思い出していた。

「必要書類などは後に送付します」

「わかりました。今のところは以上ですね。ご対応ありがとうございました」

そう美夏が本田に礼を言うと、3人は立ち上がってブースを出て行く。

ロビーを見渡すと、まだ大雅達は戻っていないようだ。ふと楓の目にエレベーターから降りて来た一人の軍人の姿が飛び込んできた。

「あれ、柳澤さんじゃないかな?」

つんつん、と美夏と美冬を突っつく楓。

「ん?そうみたいね」

視線の先に居たのは、楓達の父親の同僚だった柳澤という迷彩服に身を包んだ自衛陸軍の士官だった。

ギルドの幹部と一緒にエレベーターを出て歩いて来た所を見ると、何かの会合だったのだろうか。

自衛軍の軍人がギルドの施設に居る事は珍しい事なので、周囲にいたブレイカー達も注目していた、そしてその視線を感じた柳澤が周囲を見渡すと、その目が楓達のところで固定される。

その表情は、少しだが驚きの表情が見える

「見つかったね」

「そうだな、ま、挨拶しておくか。柳澤さんとは久しぶりだしね」

柳澤がこっちに向かいそうな所を見てとり、自分から歩み寄る楓。

「楓君、美夏ちゃんと美冬ちゃんじゃないか!」

ちょっといかつい容貌の柳澤だが、今は満面の笑みを浮かべている。

「お久しぶりです、柳澤のおじさま」

美夏と美冬が折り目正しく挨拶をし、楓は自衛軍式の敬礼をする。

「お、なかなかいい敬礼が出来るようになったじゃないな、楓君も元気そうだな」

見本のような敬礼を返して柳澤は親しげに話しかける。

「君達はブレイカーをしていると聞いたが、活躍しているようだね。この街には慣れたかい?」

と、話しかける柳澤の後ろからギルドの幹部がすまなそうに割り込む。

無理もない、放置されてしまっている様子なので第三者からみてもかわいそうな状態だった。

「あ、申し訳ない。この子達は以前お話をした、かつての上官のお子さん達です」

「それは、如月少佐の事ですか?」

「ええ、そうです。思わぬ再会に興奮してしまった、面目ない」

そう、すまなそうにギルドの幹部に謝る柳澤。

「いえ、お気になさらず…。そうですか、彼らが」

そう言うのは、この支部のギルドマスターだった。

楓達はその顔は写真で見ていたので知っていたが、直接顔を合わせるとは思わなかった、というのが正直な感想だ。

「ここで立ち話も難だから、また別な機会に話そう。また訓練をしたかったら、基地は無理だが紹介出来る訓練所があるから紹介するよ。とりあえず、名刺を渡しておく」

そう名刺入れから、名刺を取り出して何やら書き込む。

「PMC(民間警備会社)をやっている、部下がやっている訓練所だ。興味があったら連絡してやってくれ。そいつらにはいい刺激になるだろうし」

「お気遣い、ありがとうございます中佐」

「ハハハ、君たちに階級で呼ばれるのはくすぐったいな。それじゃ、またな」

そう言って、ギルドの幹部たちと一緒に立ち去る柳澤。ビルの前には高機動車が待っていて、それに乗って行くようだ。

「急に会うなんて、びっくりしたわ。でも、訓練所のアテが出来たわね。調べてみてから連絡しましょ」

「そうだな。とりあえず、大雅達を待つ間は下調べをしておくか。美冬はどうする?」

「あたしは、掲示板の依頼を見てくる。魔石が報酬の依頼があったら条件をみておきたいし」

「わかった、ひとまずそうしよう」

そう楓が言って、3人はそれぞれの行動を開始したのだった。

大雅達が、長時間のオリエンテーションでぐったりとした感じで帰ってきた様子を見た美夏は、同じような経験をしたので同情を禁じえなかった事は付け加えておこう。

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