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44 最初に出会った時より静かになった

「にゃ」

楓達の前に不意に足先だけが白くなった黒猫が現れる。

日本のイエネコとしては大型で、フォレストキャットに近い大きさなんだろうか、と猫好きの美冬は心の中で思っていた。

「あら、副団長の使い魔のスルーシね。こっちに来てくれていたの?」

「にゃーにゃっ!」

そう鳴いた後、地面爪で文字を書いているスルーシ。

「えっと」

「ホリョ リョウカイ シエン スル キカンセヨ」

古代の楔文字のようなカタカナだが、なんとか読める。

「すごいわね、これは副団長の使い魔?」

美冬が目を丸くしながらもとかに聞く。地元でもその周辺でも使い魔は珍しく、さらにここまで使いこなせているのものは見たことが無い。

「うん、そうよ。この子が居るならマナの支援が受けられるって事だからね。あー助かったわ」

うんっと伸びをしてもとかは、拘束をした2人に目を向ける。

「これから学園に連れて行くから、無駄なことはしない事ね。最低限の治療はしたから歩けるはずだし。さ、行くわよ」


そして30分後、楓達は道中何も妨害も受けず、HSS本部に到着をしていた。

拘束した2人は防音設備のある面談室(取調室)に連れて行かれ、第二の団員が事情を聴いている最中だ。

戦闘で疲労をした楓達3人は適当な椅子に座って休憩している。宝翔学園ではさすがに大規模な戦闘の後では、それに参加をしたHSS団員は1時間の休憩が認められている。

授業はどうなるのか?という事は基本的に実技系のもの以外は、個人端末で補習が可能なためそれで補っている。

なお、総力戦では無い限り戦闘に出る人員は交代制なので、基本的に連続出撃はあまり無いようになっている。

この事から、特段の理由が無い限り楓達の特撃室は次の戦闘には参加しないはずだ。

そう説明を受けながら、美夏と美冬は消耗した魔力回復薬(エーテルポーション)を服用をして欠乏しつつあった魔力の回復、楓は手に入れた魔剣の分析をしていた、詳細に調べているが予想通り悪影響を及ぼすタイプの魔剣では無さそうだ。

付与されている魔法は、切れ味増加(シャープネス)に加えて硬化魔法、物理障壁(マテリアルバリア)展開がある事は分かった。

楓でも十分に使えるので、かなり広い範囲のランクの魔剣使いが使えるものだ、魔剣を扱っている店やブレイカーギルドに売ってもそれなりの金額になるだろう。

ただし、楓の呼びかけに答えないので魔剣の意思は持っていないのが残念だと思う。

それ以外に、ゴブリンアーチャーの弓矢を戦闘後に()()みたがそっちには魔力は無かった。

来訪者の持つ武器も多岐に渡るので、魔剣以外にも魔力を持つものが発見される。

それらも付与された魔法によって価値が決まり、主に軍事関連の市場で取引をされてブレイカーにとって重要な資金源にもなる。

魔剣の他に来訪者から回収した魔石が有る。魔石の正式名称は魔素含有石(エーテルストーン)と言い、魔力の根源となる魔素を含有している石状の物質の事を指す。

使い道は広く、自分の魔力の代わりに使用をしたり付与魔法の媒体に使う事がメインであるが、その魔石を出した来訪者の特性を調べる事が出来るものがあったりとモノによっては価値が高いものもある。

特にゴブリンの上位種や大型来訪者のものは、含有する魔素が多く取引される値段がそれなりに高い。

もちろん、大型の来訪者になればなるほど出現数が少ない傾向なので価値は相対的に高くなっている。

楓達は使えそうなものを手元に置いて、さらにその能力を引き出すためにギルドや職人へ加工を依頼している。

地元でも楓達の魔石収集癖は知れ渡っており、その貪欲な姿勢に反発するものや後ろ指をさされた事も一再ではない。

「楓、どんな感じ?」

色々と省略をして美夏が聞いて来る。

「魔剣はいい感じだよ。鎧関係は切り裂いたから回収してみないとなんとも。魔石はオーガ以外はエーテル含有量が少ないから使えるかギリギリだな」

「そっか、ちょっとしょっぱいわね」

「仕方ない、こればかり運だろう。この魔剣は3つ以上の魔法が付与されているみたいだから、価値はあると思う」

そう言って、急造の鞘に入れた幅広剣タイプの魔剣を指差す。

「へえ、自分で使うの?」

「うーん、この重量バランスだと俺の戦闘スタイルに合わないけど、この構造は面白いと思うから手元に置きたいんだけど?」

と、幅広の魔剣の峰の部分を指差す。そこには、何かをひっかけるような部品が20列配置されていた。

「これって、ソードブレイカー?」

「俺達の世界のソードブレイカーは、レイピアとかを折る用だったけど来訪者の世界では、違う使い方をしていたかもしれない。こいつに込められた魔法を上手く使ってレイピア以上の武器を壊していた可能性がある。だから、研究用に持っておきたいんだ」

(マスター、まさかその不格好なものを我に組み込むつもりか?)

ジトっとした闇切丸の声をあえてスルーをしている楓に気が付かずに。

「それなら、そうしましょ」

楓の魔剣を鑑定と研究する能力は信用できるので、方針を即決をする美夏。

「HSSとの分配は回収の処理が終わってからになるから、この魔剣は手元にくるように交渉にするかしら」

それに頷きつつ楓が美夏と美冬に話しかける。

「放課後はどうする?ギルドに顔を出してみるか?」

「それが良いと思う。顔を出しておかないと印象悪くなっちゃうし。それじゃ、特にHSSから命令が無ければ放課後はギルドに向かいましょ。聖典旅団の事もギルドからの情報を引き出したいわ」

「そうだな」

楓の脳裏には、ついさっき聖典旅団にしてやられた情景が焼き付いている。

不審者を逃がした、という事になるがあのまま連中をエルフ居住区に侵入されていたらもっと危険な事態になっただろうと推測する。

もとかが本部に連絡をいれた時でHSSから所轄の警察、ギルドへは事情は伝わっているので非常線が張られているはずだ。

休憩時間が終わる10分前に本部を出て、3人は授業に戻ったのだった。

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