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32 エルフ護衛任務

楓達が任務を受諾した事を確認した後、柊と柚月が特殊遊撃室を出て行くのを見送って、3人は早速準備を開始する。

楓は闇切丸とサブアームの魔剣を両脇のホルスターに差し込み、制服の上に地元から持ってきた軽ボディーアーマーを身につけていく。最後に投げナイフが5本差してあるベルトを袈裟懸けに付けて準備が完了する。

美夏は魔法の発動体の杖を持ち、対刃繊維を使ったカーディガンをブレザー下に、対刃繊維のタイツで足を覆う。

美冬についても同様だが、美夏は使っていない防御魔法を付与をしたアミュレット型の魔道具身に着けている。

これは美冬が美夏のカバーに入る際に、被弾する可能性が高いので美冬の行動を阻害しないように防御力を追及した結果だ。

「かなり重装備なんですね」

準備の様子を見ていたカナが驚いた様子で聞いて来る。

「ん、そうね。任務の内容にもよるけど出来る限りの重装備をするのがあたし達のやり方なの。あ、そうだ。話し方はタメ口で大丈夫よ。その方が話しやすいし」

PCにHSS本部に任務受諾の報告をしていた美夏がカナへ言う。

「ありがとね。そうさせてもらうわ」

「美夏ねぇ、準備は完了だ。移動ルートだがナビのルートでいいと思うだがどうだ?」

と携帯端末に表示をした地図アプリの画面を美夏、美冬、カナに見せる。

「そうね…カナさん。近道とかなければこれで行くけどいい?私達はまだ土地鑑が無いので教えてもらえる?」

「うん、学校の北口からだとこのルートで大丈夫よ」

「それじゃ、出動するよ」

そう楓が言って、4人は施錠をした特殊遊撃室を後にする。

4人の様子を1匹の黒猫が塀の上から見ている事には、楓達は気が付かなかった。

それを確認したのか、黒猫はウンッといった風に伸びをした後に4人の後ろをついて行ったのだった。



数日前に日向神社へと向かっていた裏参道を4人は夕焼けの中進んでいく。

護衛ミッションのため、美夏は美冬に感知魔法の「硝子の目」を上空に展開して周囲の監視をしている。

「カナさん、ちょっと聞きたい事があるんだけど」と美夏。

「何?」

「この街だと、エルフ誘拐事件って起きているの?私達の地元だと、エルフ自体が少なかったから自警団とかで守れていたけど、都会では結構起きているって聞んだけど?」

それを聞かれたカナは顔を曇らせる。どうやら図星のようだ。

「うん、確かに起きているね。学園の生徒もそうだし居住区やその外に住んでいるエルフの誘拐は起きている…。だから美夏さんもエルフだから気を付けてね」

「そっか…。それでちゃんと戻ってこれる人はいるの?」

「うん、HSSや警察のおかげで助かる人もいるけど…それでも、行方知れずの人も居るのよ」

美夏達は岩戸市に引っ越してくる段階で、出来る限りの危険情報を集めている、それでも実際に住んでいる人の生の声は重要だ。

テキストデータなどには無い情報が、実際の会話に込められていると父に教えられた事を、3人は忠実に守っていた。

「エルフ居住区やこの街は、自警団が発達しているから安全だけどね。それでも防ぎきれていないのが実情かな」

4人は参道の脇道に足を進める、案内板には「エルフ居住区」と書いてあり、進入にあたっての注意が書いてある。

3メートル幅で整地されている、土がむき出しの道が鬱蒼とした木々に覆われている。

道の先には夕日の光が見えるので、そこがエルフ居住区の入り口だろう。

4人は他愛のない話をしながら、そこへ向かっていく。

出会ったばかりだが、カナとは美夏、美冬はウマが合うらしく何かの推しキャラの話で盛り上がっている。

入り口に近づくと、頑丈な門が開かれておりそこ2人のエルフが立っている。

「カナさん、あの人達は何かな?」と敵意は無いが楓が聞く。

「居住区の自警団の人たちよ、HSSなら腕章を見せればフリーパスのはずだからね」

「忘れないようにしないとだな」

「ええ、まあ入り口までなら問題ないから深刻に考える事は無い、かな?」

そう小首を傾げて楓を見るカナ。

「わかった。こういった任務は多いのかな?」

「うん、これだけと言うよりついでに警備任務をやったりしているよ」

「まあ、私達は初めての任務だからこのくらいでいいんじゃない?複雑な事をやるにしても、情報が足りなさすぎるわよ」

美夏が逸り気味の楓の方をポンポンと叩いて落ち着かせる。

「情報?」

「うん、まだ引っ越してきて間もないからね。徐々に街は歩いているんだけどね」

「あ、私で良ければ居住区なら案内できるわ。早速案内する?」

「助かる!と言いたいんだけど今日は時間が無いから、別の日でお願いできる?」

「それなら、みんなでカナさんに連絡先を聞くのはどう?」

硝子の目に精神を集中させていた美冬が提案をする。

「俺もいいのか?」

「楓にぃが女の子と連絡先を交換するのは…うーん…複雑だけど良い…かな」

「いや、苦悶の表情を見せながら言われても困るんだが?」

美冬のこの反応に慣れている(なお、美夏も同じような反応を見せる)楓はスルーをする。

「それじゃ、カナさん。居住区に着いたら教えてもらえるかな」

そう話しながら進むと、エルフ居住区の入り口に到着をする。遠目で確認したように2人のエルフが油断なく鋭い視線を楓達に向けている。

「おかえり、カナ。そちらは誰だ?HSSのようだが見たことのない顔だな」

一人のエルフがカナに聞いている。

「ただいまです。こちらはHSS特殊遊撃室の如月さん達ですよ。柊先生と柚月先生の依頼で私を送り届けてくれたんです」

「特殊遊撃室…?もう無かったはずじゃないか?」

カナに説明を任せるより、自分の役割だと思った楓が前に出てその疑問に答える

そのまま、設立の経緯などをかいつまんで説明をすると、門番の2人の顔から警戒が薄くなっていく。

「そうなのか、疑って悪かった」

「いえ、いいんです。これから特殊遊撃室をよろしくお願いいたします」

ぺこりと頭を下げて、さきほどまでのわだかまりをスッキリとさせる楓。

「さ、これで任務終了ね。えっと…報告のためカナにはこの書類にサインをお願い」

と、クリップボードに挟んだA4用紙に任務報告の項目が印字されたプリントを渡す。

「はい…うん、これでいいかな」

「多分、大丈夫。それじゃ、家に着くまで気を付けてね」

「うん、またね。今日はありがとう」

そう手を振ってエルフ居住区の中に入り、その姿が見えなくなるまで見送った後3人は学園へと戻るために歩き出す。

初任務が完了した事で達成感はあるが、カナから聞いたエルフの誘拐事件の話が3人の胸中を複雑にしていた。

(誰がやっているかわからないが、これは本部でも情報を集めるか。美夏、美冬を守る事は父さんとの約束だしな)

無意識に闇切丸の柄をグッと握り込む。

いつもはそういった雑な使い方に文句を言って来る闇切丸からは、むしろ励ますような思念が伝わって来て闇切丸も楓の決意をわかっているようだ。

(俺は姉と妹を絶対に守る。邪魔する奴は全て叩き潰す)

そう決意を新たにした楓は学園へと戻って行ったのだった。

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