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24 楓の単独遭遇戦

篠塚屋を出た楓は、早速ピリピリとした緊迫した空気を感じ取っていた。

この感覚は時空振動が発生する直前や、直後に発生する現象で研究は進んでいるが、仮称として干渉感と言われている。

まず、携帯端末で美夏に連絡する。

『楓、状況はどう?』

「干渉感が起きている、これから合流するように動くから、美夏ねぇ達はブレイカーの活動要請があるまで待機していてくれ」

『わかったわ。楓の位置は美冬の端末で見ているから追跡している。時空振動の範囲内にいる事は把握しているわ』

「途中、一般人が居た場合はブレイカーとして動くのでトレースを引き続きよろしく。何かあったら連絡する」

『ええ、気を付けてね』

通話を切り、端末にブレイカーギルド用のマップアプリを表示する。自分の位置と姉と妹の位置を表示させ、合流までの最短距離をルート表示をする。

周囲は旧市街にありがちな入り組んでいる道だが、元来た道を戻れば問題なさそうだ。

癖となっている遮蔽物伝いの移動をし、曲がり角では死角を消しながら歩を進めている。

(この先にシェルターか、念のため逃げ遅れを確認するか)

そう思ってマップに表示されたシェルターに着くと、数人の一般人が閉ざされた扉を叩いているところだった。

「早く開けて!怪物が近くにいるの!」

その中の若い女性が叫ぶ。パニックになっているのだろうが、下手をすると来訪者を呼び寄せる可能性が高い。

「言わんこっちゃない」

その声を聞きつけたのだろう、ホブゴブリン1匹が締め出された一般人に迫ってくるのを視認する。

「!?」恐怖にひきつった表情を浮かべる一般人達を見て、楓は彼我の距離を測り不意打ちを警戒しながら闇切丸を引き抜きながら走り出す。

「シッ!」ベルトのホルスターからサバイバルナイフを引き抜いて、即席の手裏剣としてホブゴブリンに向けて投げつける。

まず、戦闘力の無い一般人から自分に注意を向けることが必要だ。

「ギャアッ!」

「お、上手く行った」

走りながらだったので、命中に不安があったら見事にホブゴブリンの顔にナイフが直撃する。

「こっちに逃げて!俺が引き受けます!」

大声を上げて、虚脱状態の一般人に遮蔽物に隠れるように指示を出す。

「ああ、助かる」と自分の方に逃げてくる人達と入れ替えに、ホブゴブリンの前に立ちはだかる。

本当なら、不意打ちをしたかったがそれでは一般人に犠牲が出る恐れがあった。

ホブゴブリンは、ブロードソードを装備して、新品に見るハードレザーアーマーを装備しているようだ、地位が高い部類なんだろうか?と考えつつ、周囲に取り巻きの来訪者が居ないかを警戒しながら正眼に闇切丸を構える。

『マスター。我がピンを打つか?』

(いや、まずアイツを倒してからだ。時間をかけないで片付ける)

『了解した』

「ブレード・オン!」魔力を闇切丸に注ぎ込んで切れ味増加(シャープブースト)の効果を発現させる。

「ガアァ!」

ホブゴブリンが剣を上段から振り下ろしてくるのを、左に避け右足に力を込めてホブゴブリンの膝を切り割る。

人間に比べてかなり太い足が半分くらいざっくりと切り裂かれて、ホブゴブリンはバランスを崩す。

それでも、もう一撃楓に剣を浴びせるホブゴブリンの攻撃を避けて首をざっくりと切り裂く。

おびただしい体液を上がった事から、頸動脈のような箇所を切り裂いたのだろう。

「ふう、闇切丸。ピンをよろしく」

『承った…半径100メートル以内には来訪者はいない模様』

「わかった、さんきゅ」

刀身についた体液を振り飛ばして、一般人の隠れている箇所へ向かう。

「怪我はありませんか?俺はブレイカーです、助けが必要でしたら言ってください」

「助かったよ、ありがとう」

とスーツ姿の中年男性が礼を言う。

「すまないが、シェルターを開けてもらえるように中の人に言ってもらえないか?時空振動が収まるまでは、我々はそこに退避したいんだ」

「わかりました、ちょっと待ってください」

楓はシェルターに繋がるカメラ付きインターフォンに向けて、ブレイカーの紋章を見せつつシェルター解放の交渉を始める楓。

どうやら、中に居る人々は近くに来訪者がうろついているので、閉め切ってしまったという事だった。

締め出された人にとっては非情な判断ではあるが、開けたままのシェルターに来訪者が入り込んだ結果、凄惨な状態になる事もあるので理解は出来る。

そういった被害を減らすことが、自分のブレイカーとしての役割と思っている楓は今回も、同じように動いたに過ぎない。

「ありがとう、ブレイカーさん」もう一度、閉まり始めるシェルターの扉の奥からパニックになっていた女性が頭を深々と下げている様子を見守った後、楓はホブゴブリンの戦利品を回収し録画データをブレイカーギルドのサーバーに送信をしてからて姉と妹との合流を目指して、警戒しながら歩き始める。

「しかし、ホブゴブリンが1体だけか?こいつらは取り巻きがいるはずだが」と、別の路地を覗き込んだ楓は、6体のゴブリンが絶命をしている事を見て取り巻きが居なかった理由に納得する。

「周囲にブレイカーの反応は無いな」と近づいて死体を検める。全て銃弾によって絶命している事から銃持ちの誰かがやったのだと想像がつく。

弾痕から射線のアタリを付けた方角を見ると、200mほど離れたマンションの屋上にスコープらしき光がちらりと見えた気がした。

スナイプをしてくれたのだろうと思った楓は、それに気が付かないフリをしつつ一瞬、サムズアップをしてからその現場を離れる。

「この街に来て、飛行タイプを見ていないが銃持ちはどれくらいいるんだろうな」

基本的に飛行タイプの来訪者は、飛び道具や魔法が無い限りは苦戦する。

どれくらい銃持ちの人員がいるかで、飛行タイプが大量発生した場合の有利不利が決まると言っていい。

そう考えていた楓の耳に、再開発地区の方角からバサバサッという羽音が聞こえてきた。


■設定の補足です。

【用語】銃持ち

・当世界観の中で、未だに銃器所持が他国より厳しい日本(それでも現実よりは緩くなった)で、銃器の使用ライセンスを持つ人の事。

・年齢制限がかなり緩くなっていて、10歳からライセンス取得は可能となっている。

・対空攻撃能力の不足がブレイカーギルドから要請という形で強く言われているので、規制緩和の道筋はある状態。

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