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18 HSS団長・神代将直と副団長の塔依代マナ

6/21 キャラクター名を変更しました。

前 神代直

後 神代将直

 3人がHSS本部に入ると、そこは対来訪者戦の指令室に様変わりをしていた。

壁面の大型ディスプレイが全て点灯し、戦域情報が表示されているようだ。

そのディスプレイの前には、2人のエルフの男女が立って、指示を出しているように見える。

オペレーターの役割を持つ生徒がヘッドセットを付けて、各種指示などを伝えており喧噪に包まれれている。

「とりあえず、忙しそうだから隅っこにいるかな」

「そうねー」とそそくさと隅に移動した美夏は、タブレットに書籍を呼び出して読み始めてしまう。

「あ、私は今日のログボをとってこよっと」

美冬も完全にサボりモードになっているのを見て、楓はため息をつく。

その様子が目立っていたのだろう、目ざとく3人を見つけた男子生徒が近づいてくる。

「おい、お前らは何をしている?暇だったらやる事を見つけて動け」

まだ戦闘状態にあるのだろう、若干トゲトゲしい口調で詰問をしてくる。

楓は視線を向けると、その生徒は制服の上にタクティカルベストと各所に装甲をつけた戦闘服を着ているところを見ると、戦闘をする団員と見立てる。

校章を見ると学年は高等部3年のようだ。

「いや、そんな事を言われても」

「状況を見ろ、まだ校内でも数か所戦闘が起きている。そこに向かう頭もないのか!?」

そもそも自分達の事を知らないで、状況云々を言って来て、さらに責任放り投げな指示をしてくる団員に対して、むかつきを覚えてきた楓は同じような口調で返すことを決めた。

両親に教えてもらった中で、自分達のスタンスは相互主義と決めている。

礼には礼を、無礼には無礼と返すのは当然だ。

「どうやら、頭が無いのはアンタだね。俺達が一般生徒とも知らずに命令をしてくる事から状況を見えてないのはアンタだよ。それに一般生徒への戦闘参加の命令権は無いでしょ。で、もし俺達が団員だとしても自分の判断で戦闘をしろって?必要なブリーフィング無しで放り出す気が満々なやり方は、無謀な命令じゃないですか?」

「は・・・?」

ポカンと口を開ける団員、言い返された事に衝撃をうけたようだが、それによって反省より逆切れを選択してしまった。

「なら、なんで一般生徒がここにいるんだ?邪魔をしに来たのか?」

「いや、団長に呼ばれたんですよ。先輩」

「神代が?なんでお前たちのような奴らを呼んだんだ?冗談もたいがいにしろ」

「細田君、それは本当だから。それに、そんな態度を彼らに取らないでもらえる?」

見ると、ティスが険しい表情で受付机からこちらに歩いてきたところだった。

「まったく、なんであなたはそうやって無駄に偉そうにするのかしら。何回注意すればいいの?」

じろっと睨むと、細田と呼ばれた団員は年下のティスに言われて顔を真っ赤にして口をつぐむ。

「楓君達、ごめんね。団長はもう少ししたら来るから本部を出てからすぐの団長室前に待ってくれていいわ?ここだと落ち着かないだろうし」

「え、いいんですか?」

「うん、エルフの子を救ってくれて、来訪者の大隊を倒してくれた君たちに悪い事をしちゃったし」

その内容を聞いて、細田は顔を真っ赤な顔をさらに赤くしている。

どんな感情でそうなっているか、美夏は全然興味なかったが。

「わかりました。それじゃ美夏ねぇ、美冬。いくぞ」

「はーい」

「…あと1ページ読みたかったのに」

ブツブツ言う美夏を立ち上がらせて楓達はHSS本部を出る、そこでちょうど神代直と塔依代マナの二人とバッタリと出会う。

その二人は戦闘から帰って来たばかりの様子で、神代はHSSの紋章入りの戦闘服、塔依代は魔法使いらしいローブと帽子を被っていた。

戦闘の埃も落としていなようなので、ところどころ汚れが目立ってしまっている。

「お、君たちが如月兄妹か?よく来てくれたな、歓迎するぜ。俺は神代直、HSS団長をやっている…ティス、何かあったのか?」

「ちょっと細田君がね、後で報告するから」

「わかった。ほぼ掃討戦だから作戦指揮は、リシャールとベアトリーチェに任せる。何かあったらすぐに呼び出してくれ」

そう話している直を置いて、マナが3人に話しかける。

「私は塔依代マナ、副団長です。よろしくお願いしますね」

「どうやら、俺達の事は知っているみたいですね」

「まあな、まず団長室へ来てくれ。詳しくはそこで話そう。いいか?」

「ええ、喜んで」と美夏。

「では、こちらへ」と塔依代が団長室へ導く。

団長室は楓達の視点から見ると、実戦向きの部屋という印象だった。

過度な装飾も無く、応接セットと実用的な机や椅子、専用と思われるPCやディスプレイが置かれている。

何故か、副団長と書かれた机の上に黒猫がだらーりとした姿勢で寝ている。

「まあ、かけてくれ」と直がソファを指さして、自身もマナと一緒に座る。

「あ、めっちゃ座りやすい」と美冬が言う通り、ちょうどいい硬さのソファだった。

「今日は一般生徒にもかかわらず、活躍してくれたようだな。そして1人の命を救ってくれてありがとう」と頭を下げる直。その態度に嘘は感じられず、楓達はそこに神代の実直な性格を感じる。

「礼には及びません。私達は自衛のためにやったことですし、人を助けるのは当然ですから。と、お話はそれだけじゃなさそうですね?」

「あはは、さすがにわかるか?」

「直・・・。だから言ったでしょ」とマナ。

「どんな話なんですか?勝手に自分達の役目を取るな!とかそういう事を言われるのかと思ってたけど」と美冬が物おじせずに言う。

「いやいや、そんな事はしないさ。それ以前にブレイカーであるから、一般人の救助についてはとやくは言えないさ。それで、今日の状況について詳しく聞きたかったという事がメインだな」

「そうですか、それでは説明しますね。情報魔法を使いたいんだけど、二人とも受け入れられます?」

情報魔法は、偽情報を流すことも可能なので前提として受け入れ側の許可が無いとマトモに機能しないという制限がある。

「そうだな…。悪いが情報の干渉が怖い、タッチパネルを貸すからそこに書き込んでくれ」

そう神代が言う間に、塔依代が壁面ディスプレイとタッチパネル、ペンの用意をする。

「わかったわ、ええとね…」

と、美夏がメインとなって、10分程度の時間を使って状況を教える。

「はー。すごいな君らは」

「そうね、ここまでとは思わなかったわ」

説明が終わった後、神代と塔依代が感嘆の声を上げる。

「今までの戦闘経験はどの程度あるんだ?」

「私達は故郷でブレイカーとして、10歳から来訪者と戦っているの、その中で経験を積んできて私はブレイカーランクはB、弟はC、妹はEを持っている。戦闘訓練は父親が自衛軍の士官だったから、まあその伝手でちょっとね。それで基本的な戦術単位は兄妹3人が最小で、適宜他の集団と共闘をしていたわよ。一番相性がいいのは兄妹なのは付け加えておくわね」

「なるほど、それだからウチに入る場合は兄妹で組みたいって事なのか」

顎に手を当てて考え込む神代。

「ちなみに魔法ランクはいくつなの?」と塔依代。

「ナイトメアと呼ばれる貴女に言うのは恥ずかしいんだけど。私がDランクで得意系統は炎属性と情報系統。妹はCランクで水と光系が得意なダブルファウストと認められているわ」

「それは凄いですね。ファウストに至る生徒は少ないのできっと努力されたんでしょうね」とほほ笑む塔依代。

「君達はウチに入団を希望でいいのか?目的も聞きたいんだが」

ちら、と美夏が楓と美冬に視線を送る。それに二人とも同意の色を載せた視線で答える。

「そうね、目的は父親の捜索のために時空魔法を使う来訪者との戦闘機会と、この学園にある魔法資料の高レベルの閲覧権限を欲しい。それのためにHSSで実績を積む…という事ね」

全ては話さないが、当面の目標を伝える。しかし、真摯に答えたことが直の琴線に触れたのだろう、深く頷いてから口を開く。

「教えてくれてありがとう。俺としては君達をHSS特殊遊撃部隊に配属をさせたい」

「特殊遊撃部隊って、もとかさんが今は活動していないはずじゃないんですか?」と楓。

「その通りだ、しかし君達を俺たち直属として部隊に配属させて部隊を復活させる。ただ君達のみの人員配置ではないから、何人かが入る予定だ」

「それって・・・」と美冬が首をかしげる。。

「特別扱いではないんじゃないですか?周りは納得するんですか?」と楓が言う。

「まあな、ウチとしてのメリットは戦闘要員の獲得が出来る事、ウチの弱点となりつつある可用性不足の流れの改善を期待だな。特殊遊撃部隊に期待するのは、捜査室の垣根を超えた柔軟性のある組織になる流れを作る事、また有力な戦闘集団が柔軟性をもって来訪者と敵対組織に対処できる仕組みを作る事だな」

放胆ともいえるドクトリンを伝える神代。しかし、その口調と態度を見て3人は納得感を受ける。

「・・・ふう、わかったわ。でもうまく全て出来るとは思わないでね。もちろん、協力は求めるけどいいかしら」

美夏がまっすぐに神代と塔依代を見据えて了解の意思を伝える。

「もちろんだ、丸投げはしないからな。まず、最初のミッションは特殊遊撃部隊としての実績を積んでくれ、そうすれば反対する奴らも居なくなるはずだ」

「なんか、乗せられた感じですけど。わかりやすくていいですね」と楓。

「美夏ねぇと楓にぃが言うならあたしは異論はないわ」と美冬も同調する。

「決まりだな、口約束だが君達は今から特殊遊撃部隊として俺とマナの直下に付いた事になる。詳しい資料、説明は明日にしたいんだが?」

「明日は厳しいわ、ちょっと日向神社に行かないとだから」

きっぱりと美夏が断る。さすがにこれ以上時間をかけると母親が怖い。

「そりゃ悪かった、まあ明日以降にしよう。担当はティスにするから。備品などは少し遅れるはずなので、早めに手続きはしておいてくれ」

「わかったわ」

「あ、団長。今日の戦利品はどうすればいいんですか?」と戦利品を入れた袋を見せる楓。

「今日のところは、ブレイカーギルドの規約に沿ってくれ。HSSに入った後は基本的にHSSの内規とブレイカーギルドとのやり取りが入る」

「わかりました。美夏ねぇ、美冬そろそろ出ても大丈夫か?」

「ええ」

「それじゃ、明日からよろしくお願いします」

そう言って3人は団長室を後にした、その胸中に去来するのはこの学園に来る前とは違った期待感が芽吹いていたのだった。


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