習得
あのゲートを離れて2時間後だ。
彼女達の体力では、スマホで撮影したポイントまでがやっとで限界だ。
『親分、何かが飛んでくる』
俺にも見えたぞ。ワイバーンだ。
「皆、草むらに隠れろ」
俺らの上空を飛び去って行く。
「もう、大丈夫だ」
気をつけながらゲートの方を見る。
10羽のワイバーンがゲートと上空を旋回。
1羽だけが飛び去った。俺らの反対方向へ・・・
残った9羽は地上に着地。
乗っていた兵士がワイバーンから飛び降りたぞ。
そのまま壊れた飛行物体に入ってゆく。
そんな光景も動画に撮って、日本政府に送った。
「危なかったわ」
「ゲートへ入った人達は大丈夫かしら・・・」
「彼らが選んだ選択だから仕方ないよ」
「え!あなたって少し冷たいところがあるのね」
「そうかな・・・」
『ここ危ない』
「ゴブも危ないって感じるか・・・」
『きっと周辺を探すハズ』
「君らも辛いが出発だ」
急いで逃げたせいだろう。
そうとうきついのか、まだ肩で息をしてるぞ。
「ここで休憩しよう」
「助かるわ・・・もう、限界だったのよ」
「それなら早く言ってくれれば良いのに・・・」
「そうね・・・そうするわ」
元気そうなオークを見る。
「オークにおんぶさせるのって・・・ありかな」
「え!無理、無理」
「オークは仲間だから大丈夫だって・・・なぜ信用しないいだ」
「あなたは知らないの・・・オークにレイプされた人もいるのよ」
え!本物のオークも性欲が強いのか・・・
「オークはコボルトの臭いが分かるか・・・」
『わかる』進化したオークが代表で話したぞ。
オークのグループでは、すでにリーダーが決まったようだぞ。
「なら、コボルトを生きたまま捕まえて来てくれ」
『わかった』
おお、凄い勢いで走って行ったぞ。
「何をさせる積もりですか・・・」
「コボルトを殺してもらうから・・・もう、覚悟をしてもらってもいいかな・・・」
「分かりました。すでに覚悟はできてます」
「え!もう、殺すの・・・やるしかないのね」
「大丈夫よ。私達は死んでもおかしくなかったのだから、これぐらいやらないと・・・兄に申し訳ないから・・・兄のためにも」
早いなーー、瀕死状態のコボルトが引きずられて来たよ。
俺は、ちょっと元気なコボルトの首を片手で締め付ける。
ああ、暴れるなよ。
オークに目で合図する。
分かったように手足を押さえつけたぜ。
押さえる前に死んでた。
あれ!何の表示も無いぞ。コボルトは、ちょっと弱すぎたか・・・
「ゴブのナイフを使うか、俺みたいに首を絞めるかを本人に任せるから・・・」
女の子達は、コソコソと相談してるな。
え!4人同時にやるのか・・・1人はナイフを選択したぞ。
目をつぶって必死だ。
あ、オークの腕に刺したぞ。
え!オークは平気な顔だぞ。
「痛くないのか? 」
『脂肪に刺さったから、あまり痛くない』
「手を握って誘導するから、切りつけないでくれよ」
「お願いします」
それでも目を開けないのか・・・
手を握ると小刻みに震えてる。それでもナイフを首に誘導。
「思いっきり刺すんだ」
あ、めちゃくちゃ血が吹き出る。
血で服が・・・これは大変なことになったぞ。
え!ライムが服にまとわりついて血を吸取ったぞ。
あんなに血に染まった服が綺麗になってるぞ。
ライムには、そんな特技があったのかよ。
あ!何か感じたのか彼女は恍惚状態だぞ。
「私はやったわ」
「わたしも」
「ほらほら、1体ですませる気なのか・・」
ちょっと酷だが追い込むしかない。
1人が嘔吐している。鼻水を垂らして見てられない。
そんな彼女に1人が介抱している。
後の2人は、決心したようだ。
あれ、首を絞める力が増したような・・・「ギャン」とコボルトが鳴いて死んでるぞ。
22体のコボルトを殺した事に・・・哀れな死体が・・・
俺が殺したコボルト前で、「蘇れコボルト!」と言い放つ。
目がまん丸なコボルトが立ち上がった。
キョロキョロしながら「よ・・・ろし・・・く」と言ったぞ。
「あまりにも早急だったから、君達の名を聞いてなかったね。自己紹介といっしょに取得したものがあれば教えて欲しい」
「柏木奈々18歳。【身体強化】1つを習得。肉体的に全てが強化、視力や動きが強化されて、こんなことも出来ます」
地面の落ちていた石を拾いあげて「ミシ・・・グシャッ」と握りつぶした。
「え!ナナねぇーーそんなことが出来るの・・・」
皆もギョッとしたような・・・
「私は柏木嬉々18歳で、奈々は姉で双子です 。【風魔法】と【素早さ倍増】を習得しました。【風魔法】は、皆さんが思い描くようなものです。【素早さ倍増】は、2倍も速く動けて、神経伝達が異常に速いです。なので皆さんの動きが遅く見えることもあります」
顔が微妙に違うから二卵性の双子なのだろう。
「私、山吹理沙17です。趣味は特にありません。 【瞬間移動】をもらいました。想像するような事が出来ます。それに1度行ったことがある場所なら行けそうです」
「それなら、1度日本に帰って戻ってこれるなんて、素晴らしい能力だわ」
「それが違うの・・・もらう前の経験はダメなの・・・」
「考えればそうね・・・諦めるしかないわね」
「私の紹介をしても・・・楓静14です。【結界】を手に入れました。何でも防御できます。テレビでやってたミサイルも平気で防げるような・・・そ、それに結界に閉じ込めて消滅も出来ます。ただし相手の強さで出来ないことも・・・」
「まあ、なんとかなるでしょう・・・オークの2人は、寝る場所を探して来い。ゴブとトカゲは、オークを引き連れてキラーラビットを狩って来てくれ」
『わかった』と言って2人は言ってしまったよ。
『お前ら付いて来い』
ゴブもオークを連れて行ってしまったな。
残ったのは、ライムとロックと彼女達だ。
「クーゥ」
あ、お前も居たな・・・
彼女らは、ちょっと離れた所で話してるな。
話声がまる分かりなのに・・・聴覚器官も異常に発達して、あの距離なら簡単に聞き取れる。
鏡もないから確認出来ないが、ぽっちゃした顔が引き締まったような・・・
それに身長も伸びた・・・
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