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【完結】ヴェノリュシオン ~ 違法研究所を摘発したら、実験体にされていた遺伝子組み換えされた子供を育てることになりました ~   作者: 廿楽 亜久
第15話 伸ばした手

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01

――熱い、痛い。痛い痛い


――――イタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイッッ!!


――――助けて、助ケテ!!


 どれだけ叫んでも、目の前に浮き上がっていくのは、泡だけ。


 泡をどれだけかき分けても、足をばたつかせても、何も見えない。何も聞こえない。


 うるさい誰かの悲鳴だけが、木霊し続けていた。


*****


 開けるというには、随分と手荒な入室をしたG45とS08は、脳を震わせる悲鳴を上げ続けている、小さな通路に入っているP03の元へ跳ぶ。

 ふたりの体が、MRIへ近づいたその瞬間、腰と足が、自分たちの意思に反して、MRIの方へ引き寄せられる。


「ハ……!?」


 空中で、見えない何かに引っ張られるような感覚に、G45もS08も、慌てて、体制を立て直そうとするが、間に合わず、変な体制でMRIへぶつかってしまった。


「カッヒューー」


 意図しない体制で勢いよくぶつかったせいか、息が詰まった。


 反射的に打ち付けたわき腹を抑えるが、その腕が体の下から抜けない。

 腕は確かに動いているのに、体が機械に張り付いたまま動かない。


「ぅ、ぐ……」


 首を動かして、P03の入っている小さな通路へ目をやる。


――あと少し。


 叫び、助けを求めるように暴れる、P03の足はすぐそこにあるのに、自分たちを押さえつける見えない圧で、体が動かない。

 手も足も、自由に動くというのに。


「P……! Pィ……!!」


 また届かない。


 あの時と同じだ。

 水槽の中で苦しんで叫ぶ、P03を助けられなかった。救えなかった。


 G45たちができたのは、P03を苦しめた人間を殺すことだけで、P03を水槽から出すこともできず、水槽の前で待つことしかできなかった。


「ゥ゛、ァ゛、ァアァ、ァアァァア……ッッ!!」


 G45の目から溢れる涙が、零れ落ちていく。


 G45とS08が、どれだけ力を入れても、体は機械から離れることはなく、どれだけ手を伸ばしても届かなかった。


「――――」


 助けを求めて叫ぶ声が、すぐ傍にあるのに、届かなかった。


 S08も表情を歪めたその時だ。

 突然、甲高い空気が渦巻く音が響き渡った。


「うわっ……!?」


 G45ですら、耳を塞ぎたくなる音が響き渡り出すと、ふたりを押さえつけていた圧力は突然消え、ふたりは床に落下した。

 辛うじて、G45は両手足で着地し、S08は耳を塞いでいたせいか、受け身も取れず、床へ落下した。


「お前ら、無事か!?」


 自分たちの壊したドアを越えて入ってきた音に、G45は勢いよく顔を上げる。

 だが、その声の主が牧野だと気が付くと、自分の歯を噛み砕く勢いで食いしばっていた、力が少しだけ抜けた。


 そして、震える口を、開いては閉じ、今度は弱く歯を食いしばると、苦し気に呻き声を漏らした。


「マ゛キ゛、ノ゛、さ゛……ッ!!」

「!! G、落ち着け。大丈夫だ」


 涙をこぼしながら、必死に言葉を紡ごうとするG45に、牧野は少しだけ目を見開き、G45の前に膝をつくと、G45へ視線を合わせた。


「Pぃが……!! Pを、助けて……」


 嗚咽混じりに、そう口にするG45に、牧野はG45の頭へ手をやり、しっかりと頷いた。


「任せろ」


 牧野の言葉に、G45は頭に乗せられた温かな手に導かれるように、小さく頷く。


 その様子に、牧野は小さく息をつくと、もうひとり、床に這いつくばっているS08へ目をやる。


「だから、Sのこと、見ててやってくれ。緊急だったとはいえ、ひどい音だったからな」


 MRIの緊急停止のために必要だったとはいえ、間近であれほど大きな音が鳴ってしまったのだ。

 聴覚が強化されているS08にとっては、相当のダメージだっただろう。

 その証拠に、今も、両耳を抑え、床に小さく丸くなったまま、動いていない。


 G45は、ゆっくりとS08の方へ顔を向けると、小さく頷いて、S08の傍らに座った。

 その様子を確認すると、牧野は、ゆっくりと立ち上がり、ストレッチャーの上で静かになったP03の足を見下ろした。

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