表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】ヴェノリュシオン ~ 違法研究所を摘発したら、実験体にされていた遺伝子組み換えされた子供を育てることになりました ~   作者: 廿楽 亜久
第14話 殺意無き殺意

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/67

05

 声が、苦痛に呻く、声が響いた。


 鼓膜を震わせるわけでない、脳を直接震わせる叫び。

 その声を聞くのは、二度目だった。


「また、またアイツらッッ!!!!」


 怒りに任せ、目の前の壁を殴る。


 声のする方へ。助けを求める声が響く方へ。

 最短距離で、まっすぐに。


「――ッ」


 叩き割れない壁に、もう一度腕を振りかぶれば、制止の声が響く。


「待て待て! ここ地下! 地下だからァ゛ッッ!!」


 直後、男を黙らせようと、S08の拳が男の頭部を強打する。

 ヘルメットの変形する音と床に叩きつけられる体に、周囲にいた隊員たちも、怯えたように後退るが、その音にすら、S08は殺気のこもった視線を向けた。


「ア゛ーーもう、ジャマだなァッッ!!」


 何度殴りつけても割れない壁に、苛立ったような声を上げるG45に、S08も怪訝そうな表情で壁を見つめるが、また聞こえてきた金属音にすぐに目をやる。

 そこには、研究所で降りてきたのと似た梯子と、上を指さす隊員の一人。

 上を見上げれば、やはり同じような白い光が漏れてきている。


「…………」


 ゆっくりと視線を下せば、上を指さしていた隊員が、大きく何度も頷いている。


「繋がってない! 上がれ!」


 先程の隊員のように、音を発した瞬間に殴られるのではないかと、できる限り短い単語で要点だけ叫ぶ。

 途中で同じように殴られる覚悟をして身構えていたが、予想とは裏腹に、S08は考えるように動きを止めると、壁を殴り続けているG45の襟を掴んだ。


「何しやがるッ!!」

「壊れる気配がない。こっちから行くぞ」


 子供にしては、ひどく低く落ち着いた声に、隊員たちは息を飲んだ。

 だが、引きずられるG45には効果がないらしく、大きく歯をむき出しにして、体を大きく回転させ、S08の腕から抜けだそうとして、思いっきり放り投げられた。


 雄たけびのような、叫びのような声が、地上の部屋へ遠ざかっていくと、S08も素早く梯子を上がっていった。


「…………」


 その様子を唖然とした様子で見送っていた隊員たちだが、慌てたように無線に手をやり、病院にいる隊員全員へ、G45とS08のことを伝えた。


「おい! 無事か!?」


 そしてもう一人、倒れた隊員へ駆けよれば、隊員は呻きながらも、意識ははっきりしているようだ。


「…………俺、ヴェノム研究所の調査班だったんだけどさ、そん時より、威力が低いような気がするんだ……気のせいかもしんないけど……」

「お前に、ヴェノリュシオンのゲンコツマイスターの称号をやるよ……」

「…………いらねェ」


 横になる隊員へ、慰めるように肩に手をやるのだった。


*****


 目の前が歪みそうな叫び声に堪えながら、牧野は、橋口を拘束していた。


「止め方は!?」

「教えると思いますか?」


 ここで橋口を殺したところで、意味はない。

 この叫びを何よりも早く止める術を知っているのが、目の前の女で、その女は、これこそがP03を救う方法だと思っている。


「杉原! P03を入れたMRIが起動した!」


 これ以上、こいつと会話する意味はない。


 杉原へ無線を飛ばしながら、周囲を見渡し、緊急停止ボタンを探す。

 緊急というくらいだ。赤いとか、何かしらの目立つ色をしてあるだろう。


「ッ……」


 脳が直接揺さぶられるような感覚に、自然と息が上がっている。


「……なるほど、軍曹もP03と繋がっているのですね。ということは、他のヴェノリュシオンたちにも、SOSが発されているわけですね」


 拘束されたまま、興味津々とばかりに目を輝かせ、考察を続けている橋口は、少しだけ目を細めた。


「距離については、ほとんど関係ないとしても、彼らのいる場所を踏まえて、来たとしても……」


 いくら彼らの足とはいえ、この廃病院へ辿り着くには、少しばかり時間が必要だ。

 少なくとも、P03の髄液が十分に加熱される時間程度の時間には、足りるはず。


 やはり、現状、最も危険なのは、自分を拘束し、P03が干渉を続けている牧野だ。


「ぐ……」


 だが、その牧野も、P03の干渉に耐え切れないのか、額を片手で抑えている。


 助けを求めながらも、その相手に負担を強いる。

 以前も、自分の能力に、牧野が耐えられなかったというのに、また同じように失敗を繰り返す。

 やはり、知能は未だに未熟ということなのだろう。


 そっと視線をMRIの方へ向けた、その時だ。

 MRIの騒がしい駆動音とは別の、扉が拉げる音が響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ