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【完結】ヴェノリュシオン ~ 違法研究所を摘発したら、実験体にされていた遺伝子組み換えされた子供を育てることになりました ~   作者: 廿楽 亜久
第14話 殺意無き殺意

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02

 牧野が慌ただしく出て行った後、杉原は、古い地下道の書かれた地図へ目をやっていた。

 ”H03”と記載された地下道は、かつて、セーフ区画の壁を建築していた際の司令部と病院を繋いでいた通路だ。


 T19の報告から、P03を連れて逃走した方向は、元司令部ではなく、病院の方らしい。


「…………」


 それが不思議だった。


 元司令部は、現在も使われている別の駐屯地だ。

 もし、そちらの駐屯地が掌握されているのなら、そこに逃げ込めばいい。

 わざわざ、既に誰もいない廃病院を選ぶ必要はない。選ぶならば、それなりの理由があるはずだ。


「単純に、アイツらを殺処分の話が、非正規な話だからじゃないんですか?」


 久留米が奔走している理由だ。

 

「そうかもしれません」


 P03の殺処分許可についても、感染力のあるアポリュオンウイルスの可能性が残っているからだ。

 もし、それが証明されれば、殺処分は覆しようがない。


「…………影山さん。この病院、放棄された理由は何ですか?」


 病院が放棄される理由のほとんどは、変異種による破壊だ。

 特に、セーフ区画が確立される前は、9割を占める、放棄理由になっている。

 そのため、基本的に、放棄となった病院の道具や設備は、後日回収できる範囲で回収されており、大きな設備程。そのまま病院に残されている。


「え゛っと……調べないとわからないです」

「……そうですか」


 杉原が立ち上がると、影山も不思議そうに首を傾げる。


「研究部に行ってきます。本当に、橋口さんが関わってるなら、何か手がかりがあるかもしれませんし」

「お、俺も行きます!」


 慌てて杉原を追いかける影山に、眉を潜めながら振り返る杉原に、影山は肩にかけたアサルトライフルのスリングへ手をやりながら、答えた。


「研究部隊に敵が混じってたら困りますし」

「……なるほど」


 もし、研究部隊にスパイが混じっていて、橋口の事を調べようとした瞬間に襲われた時、制圧できる人がいることに越したことはない。


 杉原は、影山と共に、研究部隊の元へ向かえば、驚きながらも、いつもと変わらない様子で迎い入れられる。


「杉原さん? あの、何が起きているんですか? 外の騒ぎは?」

「答えられません。それより、P03の研究資料について、まだ提出されていない資料はありますか?」

「い、いえ……全て提出しています」


 ヴェノリュシオンに関して、医療部隊と研究部隊は、共に研究しており、資料はお互いに共有している。


 アポリュオンは、元々ひとつの研究所が、事故を秘匿したことで、地球全土に広がり、生態系を破壊した経緯がある。

 故に、研究機関が、アポリュオン関係の資料を秘匿することは、推奨されない。国の機関ならば、なおさらだ。

 少なくとも、共同研究をしている相手に隠すと言う事は、最悪、事故を起こした場合、あることないこと、全ての責任を被せられる可能性が出てくる。

 だからこそ、研究員の言葉は、嘘ではないのだろう。


 だが、本当に全ての資料を共有しているわけではない。

 お互いに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に関しては、共有していない場合もある。


「申請予定のものは?」

「そのレベルのものですと……」


 仮説と呼ぶには怪しく、まだ頭の中に思い描いている程度の発想となれば、視線が橋口の個人パソコンに向けられる。


「杉原さん……!? さすがに、それは……」


 橋口の個人パソコンを開こうとすれば、慌てて止める声が響く。

 犯罪捜査でもないのに、遠慮なく個人のパソコンを開こうとする杉原に、研究部隊の全員が、眉を潜めていた。


「命令です」


 だが、杉原は、静かに言い放った。


「緊急事態につき、謀反の疑いのある、橋口研究員のPCの中身を閲覧する必要があります。開いていただけますか?」


 パンデミック以来、自衛隊の一部の組織は、大きく変化した。


 その一端が、研究部隊だ。

 基本的には自衛隊の一部隊として数えられているが、この変異ウイルスの溢れる中、必要な人手を確保するため、彼らのほとんどは隊員としての訓練を受けていない。

 外部機関が自衛隊と名乗っているようなもので、他の部隊からは、一線を引かれている部分も多い。


 しかし、有事の際には、階級に乗っ取った絶対的命令系統が適応される。


「「…………」」


 不安そうにお互いに顔を合わせる研究員たちは、最終的に、研究部隊の副隊長へ目をやるのだった。


「……わかりました」


 駐屯地内から爆発音や銃声が響く状況が、通常などと、口が裂けても言えない。

 ならば、これは”緊急事態”と認めざる負えない。


 橋口のパソコンに残された研究資料のほとんどは、確かに既に共有されている資料だ。

 だが、共有されていない資料も残されていた。


「うわ……結構、量ありますね」

「橋口さん、ちゃんとファイルを整理するタイプですね」


 ヴェノム研究所のサルベージした復元データから、最近のヴェノリュシオンたちの血液データまで、全て目を通そうとすれば、3日はかかる。

 辛うじて、別れているファイルから、関係のありそうなファイルを開き、斜め読みしていく。

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