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【完結】ヴェノリュシオン ~ 違法研究所を摘発したら、実験体にされていた遺伝子組み換えされた子供を育てることになりました ~   作者: 廿楽 亜久
第4話 知見

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04

 しばらくして戻ってきた牧野の手には、小さな器。

 器の中には、雑穀で作られたおかゆが入っていた。さすがに、以前のように肉というのは、杉原に注意されたのだ。


「ってわけで、P。食ってみないか?」


 少しだけ眉を潜めたP03に、牧野も予想通りだと、P03の前に腰を下ろした。

 そして、ふたつ持ってきていたスプーンのひとつを手に取ると、自分の口へ運んだ。


「ん……うまいよ」


 しっかりとおかゆを飲み込むと、もう一方のスプーンでおかゆを掬い、P03へ差し出す。


「大丈夫だ。ほら、Pも食べてみろ」


 もし、P03が食事の仕方を学んだとすれば、それはあの4人だ。

 彼らは必ず、G45が毒味をして、安全を確認してから食べ物を口に運ぶ。彼らなりの生き残り方だ。

 だとすれば、P03も誰かがその食べ物が安全であることを示せば、食事を口にする可能性は高い。


「…………」


 スプーンを差し出しながら、P03が動くのを待っていれば、おずおずとスプーンの先に口を付けた。

 ゆっくりとした頬の動きが止まると、今度はスプーン全体を覆うように、口を付けた。


「うまいか?」

「……うん」

「腹が痛かったり、気持ち悪くなったりは?」

「ううん」


 大丈夫そうだと安心しながら、器をP03へ渡そうとすれば、口を開けて待っているP03。


「……」


 反射的に、またおかゆを掬って、口に運んでしまう。


「P、ちゃんと自分で……」


 また口を開けて待っているP03に、今回は仕方ないと、口に運ぶ牧野だった。


「興味深いデータでした。協力感謝致します。牧野軍曹」


 突然やってきては、許可も取らずP03の部屋に入り、仮眠を取り始めた時は何事かと思ったが、P03の能力によるものと知れたのは、研究部隊にとっても大きな収穫だった。

 その上、P03が頑なに食事を取らなかった理由もわかったのは大きい。


「そうなると、やはり確認したいのは、軍曹が体験したという精神世界ですね。実を言うと、エンジェルポーションを私も吸ってみたんです」

「は!? 嘘でしょ!?」

「ちゃんと許可を取りましたよ。数が少なくては、事実すら確証を得られませんから」


 研究所から回収したデータの確認が終われば、今度は実際にいるヴェノリュシオンたちとの照合を行う予定になっている。

 ただP03に関しては、ヴェノム研究所ですら、ほとんどわかっていないというのが事実であり、”エンジェルポーション”すら確立された技術ではなかった。


「エンジェルポーションを使用したと思われる方々にも確認を取ったんですが、既に依然感じたような兆候は見られないと。私も精神世界に入れたことはありませんし、今のところ、人間では軍曹だけが現状、精神世界に入っている存在ということになります」


 P03の能力の解明には、彼女の協力はもちろん、彼女たちが口する精神世界についてを知る必要がある。

 ”超能力”という、今まで人間が踏み込むことのできなかった世界に踏み込むことのできる存在。研究者でなくても、心躍る存在だ。


「ですので、協力お願いしますね。牧野軍曹」


 これが命令でなければ、ぜひ拒否したいものだ。


 嬉しそうにレポートをまとめている橋口をしり目に、杉原はカメラに映し出されるP03を見つめていた。

 P03の事情が分かった今、次にやることは決まった。


「牧野軍曹」

「ん?」


 橋口から以前体験した精神世界について、根掘り葉掘り尋ねられた牧野は、少し疲れた様子で杉原を見上げる。


「ヴェノリュシオンたちを、全員一緒に監視することは可能ですか?」


 定期的な検診は必要だが、P03が日常生活が可能であることを確認できれば、彼女も他のヴェノリュシオン同様、何か役に立てる方法を探ることになる。


 既に、エンジェルポーションの事例があるため、医療部隊で活躍することは可能だろう。

 だが、理解できない力での治療は、治療以上に恐怖を生む。ならば、他のヴェノリュシオンたちと共に行動した方がいい。


「回復後、Pは他と合流する予定だったろ。何か問題があったか?」

「えっと……人間基準なのかもしれませんが、他のヴェノリュシオンは男でしょう? 以前の、G45に関しても、力の差があるように感じまして……我々よりは力があるようですが、ヴェノリュシオンに比べたら、P03は人間に近い肉体をしています」


 P03は、牧野同様、ヴェノリュシオンの攻撃で容易く怪我をする可能性がある。

 身体的な問題については、研究部隊である橋口も同じ意見らしく、肉体としての強度は、他のヴェノリュシオンに比べて低いという。


「もし、群れ内部での戦いが起きた場合、まず勝てないと思われます。ただ、雌雄という話であれば、唯一のメス個体ではありますので、そもそも戦いに巻き込まれない可能性も高いですが」

「一応、人間ですよ。橋口さん」

「あぁ、そうでしたね。失礼しました。ただ、男女としてしまうと、少々生々しいでしょう?」

「そ、れは確かに……」


 ふたりが懸念することはよくわかった。

 その上で、牧野は、大丈夫だという確信があった。


「Pの能力には、どうやらあいつらにも拒否できないことがあるらしく、T曰く、俺もPのせいで攻撃をできないらしい」

「あぁ……先程の牧野軍曹のように、体を支配するということですか」

「詳しいことはわからないが、そういうことなんだろう」


 寝ぼけて攻撃されないように守ると言ったことも、おそらく同じことだ。

 P03の能力なのだろう。

 橋口たちもそれならば、監視を牧野に任せることにするのだった。


 牧野自身、とても個人的な感覚のため、口にはしなかったが、例えP03の能力が無かったとしても、4人はP03を傷つけるようなことはしないように思えた。

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