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【完結】ヴェノリュシオン ~ 違法研究所を摘発したら、実験体にされていた遺伝子組み換えされた子供を育てることになりました ~   作者: 廿楽 亜久
第3話 狩猟

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10/67

01

 久留米は、医療班からの報告を読みながら、小さく息を吐き出した。

 P03を含めた、ヴェノリュシオンたちの健康状態の報告は、全員が良好であることを示していた。

 生まれてから一度も試験管の外へ出たことのないはずのP03ですら、既に歩行程度であれば問題なくできているという。


「この世界を生きる新人類、か……」


 個体それぞれに特徴的な能力は持っている。


 G型は未知な生物や植物を食すことのできるよう、耐毒性能を高められている。そのため、彼らを抑えるための麻酔銃の弾が効かなかった。

 銃を噛み砕いたという強靭な顎も、強化された肉体も、人間にとってはあまりにも驚異的だ。


 G型だけではない。他のヴェノリュシオンたちも、それぞれが人類が特殊な力を手に入れるための実験体。

 倫理を捨てた研究者たちが、この世界に生き抜くために必要と判断した力を宿した子供たちだ。


「…………」


 だいぶ慣れてきたコップ内の揺れる水面に、久留米は顔を上げた。



「――というわけで、お前たちには仕事をしてもらうことになった」


 牧野が半ば投げやりにヴェノリュシオンたちに言えば、元気よく返事をしたのはG45だけだった。


「よくも、俺たちに仕事をさせようと思えるものだな」

「案外頭が悪いんじゃねーか?」

「Gよりはいいみたいだけどね」

「お前たちが、毎日のように壁だのドアだのを破壊するからだよ!」


 ただでさえ、まともな資源が少ないというのに、毎日のように破壊行為を繰り返されてはたまったものではない。

 いっそ、外で暴れるだけ暴れて、疲れて眠ってくれない欲しいという、やや願望の混じった任務だ。


「そのGPSのついた腕輪は外すんじゃ――」


 言ってる傍から、既にT19が監視のためにつけられている腕輪を引きちぎっている。

 半ば予想通りだ。


 解析が進んだおかげで、ヴェノリュシオンのことも多少わかっていたが、だからと言って、すぐに対策が取れるわけではない。とりわけ、ヴェノリュシオンたちの力に合わせた装備なんてものは、簡単に用意などできるはずもなかった。

 しかし、そんな不確定な状況で、ヴェノリュシオンを監視ができない外に出すわけがなく、牧野にも秘策があった。


「外したところで、Pには居場所がバレてるんだから、大人しくGPSつけとけよ」

「うわぁ……今すぐ、この人殺した方がよくない?」

「なんで、みんなマキノさんのこと、すぐに殺そうとするんだよ! いい人じゃん!」

「G……」


 ヴェノリュシオンの中でも、最も優しく、味方をしてくれるG45に感動していれば、三人は微妙な表情で見つめる。


「G、お前は撃たれてなかったか? よくそれで”いい人”って言えるな」

「お前らよりいい人だよ」

「「「……」」」


 珍しくG45に言い負かされた三人は、それぞれ視線を明後日の方向へ向けた。


「それで、俺らは何すればいいの?」


 後ろの三人は、だいぶ不満そうだが、目を輝かせているG45の頭を軽く撫でると、改めて仕事の内容を説明する。


「お前たちには、食料の確保を頼みたい」

「食料の確保?」

「要は、狩りだ」


 ヴェノリュシオン開発の第一目的として、脅威である変異種との共存というものがあった。

 現在の、食料に適した生き物を育てるのではなく、昔のように変異種を狩猟し、食料とする。変異種の飼育ができない状況では、それが最善であるとして、彼らの肉体が強化されている理由のひとつとなっている。


 そして、G型の存在理由だ。


「あ、なら、俺が食って、毒か確認してあげるよ!」


 ” G型 ”

 口顎改良型の名の通り、顎が強化されているが、主たる目的は、消化機能の改良だ。

 過酷な環境下で、生物が毒を食らっても生き残れるように進化するのと同じように、G型は人間が食すことのできない毒を食らうことのできるように改良された。

 新人類創造計画において、最も重要視されていた実験であり、他の型番に比べて圧倒的に多い被検体数が、その重要性を証明していた。


「俺、40番台だから、結構テイスティングやってたからさ!」


 元気よく手を上げてアピールするG45に、牧野は何とも言えない表情を向けるが、少しだけ目を伏せると、視線を合わせるようにG45の前に屈んだ。


「じゃあ、頼んでいいか?」

「任せて!」


 サルベージされた研究データには、G型は70体ほどの被検体がいたはずだ。

 彼らの実験のほとんどは、人体における毒を実際に食らい、生き残れるかというもの。そして、毒を判別できるかどうか。

 中途半端な研究における被検体が、どのような最後を迎えるかなど、レポートを読むまでもない。


 だが、無邪気に笑うG45に、牧野はひとつだけ注意した。


「無理はするな。毒だとわかったら、すぐ吐き出せ」

「俺、毒に強いから大丈夫だよ?」

「有毒か、無毒かさえわかればいいんだ。食う必要はない」


 これは研究ではない。

 有毒とわかったなら、その変異種は食べないだけだ。改めて、無毒な変異種を探せばいい。


「わかったか?」

「うーん……わかった」


 今までは、毒であろうと食せることが大事であり、毒であるなら飲み込むなという命令は、いまいち理解できなかったが、牧野の言葉に頷いたG45だった。


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