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第92話 平和の訪れ

「迷惑を掛けてすまなかった」




 昼休みの屋上において、羽矢はベンチに座る一輝と莉菜へ頭を下げた。




 神妙な面持ちで誠意も感じられた。




 あれから、愛羅からの嫌がらせは消えた。




 愛羅から一輝に対してもう余計なマネはしないと告げられた。




 その際、一輝は驚きを隠さなかった。




 想像以上に早く愛羅が折れてくれた。この現実に多少なりとも驚いた。




「ど、どうしたんだ増本!?らしくないぞ!」




「そ、そうだよ!頭を上げて!」




 一輝と莉菜は慌ててベンチから立ち上がった。




「いやこれは私からの気持ちだ。少なからず2人に迷惑を掛けた」




 羽矢は頭を下げ続けた。真顔のまま、地面の一点を見つめる。




「はぁ、恩とか気にしなくていいから」




 一輝は半ば呆れながら、弁当箱をベンチへ置いた。弁当はもちろん美月の特製だ。




「大切な人が困ったら助ける。当然のことでしょ」




 一輝の言葉に羽矢は目を大きく見開いた。




 流れるように頭も素早く上げた。自然に一輝と羽矢の視線が合致した。




「・・・朝元・・・」




 羽矢はぼそっと一輝を呼んだ。瞳も幾分か潤む。




「ちょっと照れくさいな。きれいな眼差しでそんなに見つめないでくれ・・」




 一輝は照れを隠すように、羽矢から目を逸らした。




 身体は幾分か熱く、ほのかに頬も紅潮した。




 一輝にとって恥ずかしい展開になった。




「なあ朝元。抱きついていいか?」




 羽矢は真剣な表情で尋ねた。突然の要望だった。




 冗談などではない。表情や口調から容易に推察できた。




「・・・増本が気が済むなら構わないが」




 一輝は視線を逸らしたまま、ぎこちなく答えた。




 体温の上昇と照れ隠しの最中であるため、疑問も浮かばなかった。だから、あっさり了承した。




「あ!?ずるい!私も抱きつきたい!!」




 莉菜も便乗しておねだりした。




 彼女は行動が早く、準備するように手に持っていた弁当箱をベンチに置いた。




「どうだ?2人同時にいかないか?」




 羽矢からようやく薄い笑みがこぼれた。




 非常に嬉しそうだった。




 心を許せる友人を持つことに喜びや幸せを感じているのだろう。




「うん!それがいいね!!」




 羽矢は足早に一輝に歩み寄った。




 莉菜は一輝の隣に佇むため、特に動く必要はない。




 一輝は羽矢と莉菜といった絶世の美少女にサンドウィッチの具のように挟まれた。




「お、おい。同時にってどういうこと?」




 一輝は羽矢と莉菜を交互に目視する。




 2人共薄く口角を上げる。一輝はいささか不安を覚えた。




「莉菜いくぞ!せ〜の!」




「えい!」


 


 羽矢と莉菜は息を合わせて一輝へ抱きついた。羽矢は右から莉菜は左から抱きついた。




「ふぇ」




 羽矢と莉菜の柔らかい豊満な胸や身体の感触を刹那に知覚した。




 男をダメにする柔らかみが一輝を遠慮なく襲った。




 一輝は困惑しつつも、多大な興奮を覚えた。特に身体に胸が当たっていること。




 胸は一輝に幸福感を提供した。




「えへへ。かずくんの体温だ〜。落ち着く〜」




 莉菜はだらしない笑みを形成し、一輝の身体に頬を擦り付ける。




「ああ。本当に同感だ。この至福は朝元以外からは受け取れない」




 羽矢は身を委ね、静かに目を閉じた。




 キーンコーンカーンコーン。




 昼休み終了のチャイムが鳴り響く。




 だが、羽矢と莉菜は微動だにせず、一切動揺せずに一輝の身体を堪能する。




「お、おい。チャイムが鳴ってるぞ。遅刻するよ」




 一輝は歯切れ悪く羽矢と莉菜に声を掛けた。正直、もう少しこの幸せに身を浸していたい。




「むっ。今いいところだからダメだ」




「え〜。もう少し楽しませてよ〜」




 羽矢と莉菜の似たような言葉を発し、決して身体を離さなかった。




 離れる素振りすら一切存在しなかった。

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