37話 ファミレス①
「今日、一緒に外食しないか?」
時刻は18時。一輝の家に身を置く羽矢が提案する。現在、家には一輝、羽矢、莉菜、美月がいた。学校終了後、彼らはゲームや雑談をして遊んでいた。
「それは構わないけど、他のみんなはどう?」
一輝は周囲に目を向ける。すると、莉菜や美月と目が合う。
「私は大丈夫だよ!」
「おにぃ、私も大丈夫!まだ料理も準備してないし」
莉菜と美月がほぼ同時に応答する。
「それじゃあ決まりだな」
羽矢が片目を瞑ってパチンっと指を鳴らした。
それから、4人はファミレスへと向かう。
「おにぃ。どうする?何にする?」
店内に入り、テーブル席に座ると、美月が一輝の隣を当然のごとく確保する。
羽矢と莉菜はその光景を目にした直後、ギョッとする。あまりの美月の行動の速さに先手を取られた。どうやら、2人は一輝の隣を狙っていたようだ。
「どうしようかな?まだ決まらない。ファミレスなんか久しぶりだからな・・」
一輝は頭を掻きながら、メニューを眺める。どのメニューも魅力的に見えるため、中々決められない。
「まぁ、無難に1番人気のハンバーグを選ぶか」
一輝は注文するメニューを指で差す。
「ふぅ〜ん。おにぃそれにするんだ。じゃあ、私もそれにするよ!」
美月は一輝に身体を寄せ、メニューを覗き込む。
ぴくぴくっと羽矢と莉菜の眉がほぼ同時に動いた。
「美月、ちょっと近いぞ」
一輝は目を細めて軽くたしなめた。
「えーいいじゃん。これくらい」
しかし、美月は全く気にせず、さらに身体を密着させる。そして、上目遣いで甘えるような声を出す。
「そ、そうだぞ!朝元の言う通りさすがに距離が近すぎるんじゃないか」
「わ、私もそう思うかな・・」
2人も慌てて一輝の言葉に賛同した。
「そうですか?別にこのぐらい普通ですよ。ねっ、おにぃ」
美月は2人の言葉を受け流すように述べた後、微笑みながら一輝を見上げた。その顔にはなぜか不思議と有無を言わさない迫力があった。
(確かに、美月は俺にいつもベタベタだが)
「う~ん、でもなぁ・・・」
一輝は腕を組んで考える素振りを見せる。もちろん、演技である。彼は美月に弱いのだ。彼女のお願いなら大抵のことは聞いてしまうだろう。
「もう、おにぃったらそんなこと言って。本当は嬉しいんでしょ!」
美月は満面の笑みで一輝の腕に抱きついた。
ぴくぴくっと再び、羽矢と莉菜の眉が動く。
「お、おい!美月!!家じゃないんだぞ!」
一輝は美月の予想外の密着に動揺を隠せない。
「そんなの関係ないもん」
美月は注意など無視して、次は一輝の肩に頭を載せる。美月のスキンシップは止まる見通しを立てられない。
「関係あるわ!」
一輝は無意識にツッコミを入れる。
「はぁ〜。こんな状況だが、増本と莉菜は注文するメニュー決めたの?」
一輝は観念し、盛大なため息を吐いた後、言葉を投げ掛けた。
「・・・私はもう決まったぞ」
「・・・私も」
羽矢と莉菜は目を逸らしながら、どこか不満そうに答える。
(2人共どうしたんだろう?)
一輝は違和感を覚えながらも、呼び出しボタンを押した。
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