16話 自宅に2人の美少女
「なんで、俺の家まで着いてきたの?」
一輝は怪訝な顔を羽矢と莉菜に向ける。
「いやぁ〜。今日は朝元の家で遊びたい気分になってな。ついな」
「私も!」
羽矢と莉菜は一輝の表情など気にした様子もなく、お互いに見つめ合って微笑んだ。
「いやいや。いきなりすぎだろ」
一輝は思わずツッコミをいれる。一輝は彼女達の理由に強引さを感じた。
「そうでもないぞ。人間急に何かやりたくなるときがあるだろ?例えば、突如、ネット小説が無性に読みたくなるとかな。それと同じだ」
羽矢は筋が通った理由を述べた。
「た、確かに・・・」
一輝は渋々、納得したような表情を示した。実際に、羽矢の言い分は最もだった。
「まぁ、いいけど」
一輝はリュックサックから鍵を取り出し、自宅のドアを開放した。
「はい。どうぞ!」
一輝は面倒臭そうに羽矢達に入るように促した。
「さすが!朝元!!」
「では、おじゃまします!!」
2人はご満悦で一輝の自宅に足を踏み入れた。
「美月はまだ帰ってないみたいだな」
一輝は靴箱周辺を確認して、自宅のドアを閉じた。
「それにしても、朝元とは付き合いは長いが、自宅におじゃましたのは初めてだな」
羽矢は興味津々で一輝の自宅のリビングを眺めた。リビングにはテレビや長いソファ、ガラス状の机などが存在する。
「それに、懐かしいなー!Weeeeがあるじゃないか!」
羽矢はテレビの台に設置されたWeeeeのもとに駆け寄った。
「そんなに興奮することかな?」
一輝は胸中でそんな疑問を抱いた。
Weeeeは10年前に、日本の大手ゲーム会社によって大ヒット商品である。家族全員で楽しめるゲーム機で、当時は1家に1台はあるほどだった。
「朝元!Weeeeやらないか?私は久しぶりにプレイしたいのだが」
羽矢はWeeeeの本体を指差しながら、遊びの提案をした。
「別にいいけど。莉菜はどうなんだ?」
一輝はリビングで適当に佇む莉菜を気に掛ける。
「私?私はそれでいいよ。楽しめればなんでもいいから」
莉菜も乗り気だった。
「そういうことだからやるか!ゲームのソフトはWeeeeのスポーツでいいか?俺の家はそれしかソフトがないんだ」
「問題ない。私はそれがやりたかったしな」
羽矢は頷いた。
「わかった。ちょっと待っててくれ」
一輝はテレビ台の中から、Weeeeのスポーツの箱を取り出し、ディスクをWeeee本体に投入した。
Weeee本体から起動音が生まれる。
「競技はベースボール、テニス、ゴルフ、ボーリング、ボクシングがある。ちょうど、リモコンは3つあるから、3人でプレイできるボウリングかゴルフをやらないか?」
一輝はWeeeeのリモコンを羽矢と莉菜にそれぞれ渡した。
「私は、ゴルフをやったことがないから、ボウリングがいいな!」
「私もボウリングがいいー!」
「了解」
一輝はリモコンを操作して、ボウリングを選択する。
「2人共やり方はわかる?」
「あぁ。今はないが、昔は家にあったからな。何回かプレイしている経験者だ」
「私も、昔持ってたから大丈夫!」
「オッケー。じゃあ、行くぞ!」
一輝はリモコンを下から上に振り上げた。その結果、Weeeeのキャラクターがボウリングの玉を放った。玉はピンの真ん中に向かい、すべてを倒した。
『ストライク!』
ゲームのアナウンスがはきはきした声で事実を伝える。
「おぉ〜」
莉菜はリモコンを手に所持ながら、拍手をする。一方、羽矢は盛大に驚いた様子だった。
「最近はプレイしてなかったけど、昔は何時間もプレイしてたからな」
一輝は得意げにならず、謙遜した態度を取る。
「むぅ!私も負けないぞ!!」
羽矢の番になり、一輝と同様にリモコンを下から上に振り上げた。ゲームのキャラが放ったボールはピンに当たりはしたが、2つほど残ってしまった。
「くっ。最低でもスペアだな」
羽矢は悔しそうに顔を歪めた。
もう1度、リモコンを振り上げて狙い通りスペアを獲得した。
「次は私だね。とりゃ!」
莉菜はリモコンを操作するが、ボウリングの玉はピンを1つも倒せず、ガターに潜ってしまった。
「やっちゃった。久しぶりやったらうまくいかないね」
莉菜はリモコンの振り具合を確かめながら、苦笑した。
「次はガターしないようにしないと」
莉菜は次は何とか5本ほどのピンを倒した。
「おにぃ〜。ただいま〜!帰ってきてたんだね。って、羽矢さんと莉菜さんがなんで家にり?しかも、ゲームでWeeeeやってんの。楽しそう〜。私も混ぜてよー」
ボウリングで1週が終了した時点で、美月が帰宅した。美月は3人がゲームを楽しむ光景を認識し、学生カバンを下ろさずに、一輝達のもとに駆け寄った。
⭐️⭐️⭐️
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