13話 あのとき見ていた(莉菜サイド)
「あ!かずくんだ!!」
莉菜は体育館裏で一輝を発見すると、すぐに声を掛けようとした。
しかし、莉菜はある異変に気がつくと、強く口を噤んだ。なぜなら、一輝と対面する形で松本がいたからだ。
「朝元君。君のことが好きなの。だから、もしよければ付き合ってくれないかしら」
松本が一輝に告白をした。
「えっ・・・」
莉菜は驚きを隠せなかった。目の前で身に覚えのない女子生徒が一輝に告白を申し込んでいる。あの女子生徒は一輝とどういう関係なのだろう。様々な考えが莉菜の脳内にポンポンと生まれた。
「うん!喜んで!!」
一期は嬉しそうに迷わず告白を了承した。
「・・・」
莉菜の心に悲しみと寂しさの融合した感情が渦巻いた。信じられなかった。まさか、一輝が告白を了承するとは夢にも思わなかった。なんだかんだ、断ることを予想していたし、願ってもいた。
それから、ご存じの通り、片山を中心とした男子生徒達が登場し、松本が嘘告白をしたことを明らかにした。
「えっ・・・」
莉菜は片山の声を知覚し、目を丸くした。一瞬、片山が何を言っているのか、理解できなかった。
体育館の裏で片山達の声が響く。
一輝は戸惑いが隠さずにいる。
莉菜はこの光景を見ていると、徐々に怒りが込み上げている。
そして、莉菜の怒りが最高潮に達したのが、嘘告白を実行した松本の行動だった。
松本は情けなしに、追い討ちを掛けるように一輝を口撃した。心底、見下した顔で。
莉菜は一輝が膝から崩れる光景も目にした。
「ひどい・・・許さない」
莉菜はプルプル身体を震わせ、多大なる怒りを抑えていた。自分の幼馴染が傷付けられ、黙っていられるわけではなかった。それに、莉菜には一輝に恩があるから。
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