第103話 決断の結果
「2人共、長い間待たせてごめん」
一輝は誠意を込めて頭を下げた。
放課後に突入してから行く分か経過していたが、偶然にも羽矢と莉菜も校内に身を置いていた。
「そんな畏まらなくていいぞ。それで・・・。決断できたのか?」
羽矢はいつになく真剣な表情と口調で確認を取った。そこに笑みは存在しない。
「・・・うん。そうだね。決断できたよ」
一輝は羽矢と莉菜の交互に視線を走らせた。それぞれと目が合った。2人とも緊張が顔や身体に現れる。
「いよいよなんだね」
莉菜は緊張した面持ちで生唾を飲み込んだ。
「うん・・・」
一輝は意図的に間を開けた。緊張感が胸中に溢れ出す。心臓の鼓動は加速し、身体中が熱が出ているみたいに熱い。
覚悟を決めろ。増本と莉菜に俺の決断した内容を伝えないと。
奮い立たせるため、何度も自身へ言葉をぶつけた。その度に微量に心は安心を獲得した。
「まず2人共ごめん!俺はどちらかを選ぶことはできなかった!」
「は?」
「え?」
羽矢と莉菜の目が天になった。予想外の展開だったのだろう。
「どういうことだ朝元。もしかしてふざけているのか?」
羽矢の顔に怒りが滲む。流石に看過できなかったのだろう。
莉菜は信じられないっといった顔を形成する。
「ふざけてないよ」
一輝は真面目な口調で対応した。
「俺が1番頭を悩ませたのは、2人を悲しませたくなかったからだ。俺が増本か莉菜のどちらかを選べば、選ばれなかった方は悲しむことになる。これは避けられない」
「そうだな」
羽矢は相槌を打ち、次の話へ促した。
「だから、俺は決めたんだ。2人を絶対に悲しませない方法を」
一旦言葉を区切り、次に備える。息も大きく吸った。
「俺は増本と莉菜。お前たち2人と付き合う!これが俺の決断だ!」
一輝は噛まずに、決断内容を伝えた。引かれてもいい、怒りをぶつけられてもいい。
正直に自身の心へ従って決めたのだから。一輝は羽矢と莉菜の両方に好意を抱いているのだから。
「そうなんだね」
莉菜は何度か頷いた後、俯く。
「こんな俺に絶望した?最低だと思った?」
「いや、そんなことはない。むしろ逆だ」
羽矢が即座に返答した。どうやら、怒りや呆れを抱いていないようだ。
「私達2人のことをしっかり考えてくれたんだな。ありがとう!心に沁みたよ」
「私もそこは嬉しかったよ。かずくんの優しさや誠実さが垣間見えたよ」
「そうか」
一輝は少し安心した。少なからず、不快感を与えなかったようだ。
一方、羽矢は無言で一輝を見据える。タイミングも図る。
「2人と付き合うか。・・・面白いな!私は受け入れよう!!」
羽矢は普段の明るい口調で笑顔を溢した。
「莉菜はどうだ?納得がいかないか?」
「ううん。正直、未来は想像できないけど。かずくんと付き合えないよりはマシだから。私も受け入れるよ!だってかずくんと付き合えるんだもん!」
羽矢と莉菜。両者共に一輝の決断を受け入れた。2人共、一輝の想定以上に好意的だった。
「ありがとう!こんな俺を好きでいてくれて」
一輝はダッシュで駆け出し、羽矢と莉菜を抱き寄せた。
(完)




