第102話 金言
「どうしたのよ。朝からずっとボーッとして」
週は変わり月曜日。
羽矢と莉菜にダブル告白を受けて約2日が経験した。
一輝は日曜日を丸1日を消費し、真剣にどちらかを選ぶか熟考した。羽矢か莉菜のどちらかを選択するかを。
羽矢と莉菜はどちらも魅力的な絶世の美少女だ。両者ともに同じくらい西城高校で人気を誇る。
羽矢は一輝と小学生からの仲であり、趣味も合う親友である。一方、莉菜は幼稚園からの幼馴染であり、美月と同様に一輝の良き理解者である。
どちらともに魅力が多すぎる。良いことばかりだ。
だから最終的な日曜日では選べなかった。ただ頭を悩ませただけだ。
リビングやベッドで必死に考えたが、納得のできる決断は成せていない。
「そうかな?そんな風に見えた」
一輝は松本に返答した。だが、視線は机を見つめる。視線は松本と合致しない。
「どうしたのよ。元気ないわね」
松本は一輝の隣の席へ座った。
帰りのホームルームが終了し、しばらく経過する。ほとんどの生徒は教室から退出していた。
当然、一輝の隣の生徒も早々と帰宅した。
「・・・大したことないよ。少し考え事があるだけ」
一輝は素っ気なく答えた。正直、今はそっとして欲しかった。
「もしかして、増本さんと与田さんに告白されたとか?」
松本は探るように言葉を紡いだ。
「え!?なんでそれを。・・・はっ」
一輝は失態を理解し、瞬時に口元を塞いだ。だが、既に遅し。手遅れだ。
「ふ~ん。正解だったわけね」
松本は得意げな表情を浮かべた。机に頬杖も付き始めた。
「・・・もうバレてるよね。ならしょうがないよ。松本さんにも教えるよ」
周囲を確認した。幸運にも、今、教室には一輝と松本しか見当たらない。
一輝は順序立てて、羽矢と莉菜に告白された事実を松本へ話した。
美月の時とは異なり、時おり上手に言語化できない場面もあった。
松本も美月と同様に、静かに最後まで一輝の話へ耳を傾けた。もちろん頬杖を付いたまま。
「ふ~ん。それにしても驚きね。まさかあの2大巨頭の増本さんと与田さんに同時告白されるなんてね。すごいわね!」
松本は一輝を称賛した。うわべだけの言葉では決してない。
「この学校の男子は羨ましがるどころか発狂するでしょうね」
「なんか他人行儀だね。こっちは大変なんだよ」
一輝はむっとした。少しは松本に他人の気持ちを推量して欲しかった。
「ごめんごめん。不快に感じたなら謝るわ。それにしても、朝元君がどちらかを選択する未来は想像できないわ」
「どうして?俺が2股を掛ける人間に見えるの?」
「そうじゃないわよ。なんていうか朝元君は増本さんと与田さんを選ぶイメージが無いというか。どちらも悲しませないことを望むような。ちょっと言語化が難しいわね」
説明を諦めたのか。松本は大袈裟に肩を竦めた。
「どちらも悲しませない?」
その言葉が引っ掛かった
羽矢と莉菜を悲しませたくない。泣かせたくない。松本の言う通りだ。
羽矢や莉菜の悲しむ姿を想像し、最終的にはどちらと付き合うかの選択できない。そういった状態が日曜日だった。
「そうか!そういう考え方もあるんだね」
一輝はスマートフォンを取り出し、SNSで羽矢と莉菜にメッセージを送信した。2人とも屋上に来るように呼び出す旨のメッセージを送った。
「松本さんありがとう!俺、決断できたよ!」
一輝は勢いよく席から立ち上がり、教室を退出した。
「あ、ちょっと待ちなさいよ!私にもどう決断したか教えなさいよ!」
松本は制止させようと試みた。だが、全く無駄であり、一輝の背中は一瞬で消えてしまった。
「ふっ。まったくしょうがないんだから」
松本は両腕を組み、おかしそうにうっすら微笑んだ。一輝の今後が良い方向に向かうように。




