第100話 同時告白
一輝は美月が用意してくれたご馳走を存分に召し上がった。
羽矢や莉菜も大変満足していた。
美月は好意的な感想を耳にする度に頬を緩ませた。特に、一輝の感想を聞いた際はだらしなく頬を緩ませた。
「「「ごちそうさまでした」」」
「お粗末様でした!」
簡単な料理の挨拶も済ませる。
「私が食器などの片づけをしますから、ご自由にくつろいでください」
美月は慣れた手つきで食器や箸などを台所へ下げた。そのまま流れるように、流し場で食器を洗い始めた。
「さすがにそこまでは気が引ける。手伝うよ」
羽矢と莉菜は食器を流し台へ移動させた。流し場へ食器や箸、コップなどが追加された。
「ありがとうございます。ですが、もう大丈夫です!羽矢さんと莉菜さんはお客さんですから。ごゆっくりどうぞ」
美月は満面の笑顔でお礼を伝えた。その際、非常に嬉しそうでもあった。
美月の豊かな表情は羽矢と莉菜に眩しく映った。
「わ、わかった。ここはお言葉に甘えようか」
「うん。美月ちゃん悪いけどお願いするね」
羽矢と莉菜は後は美月に任せ、一輝のくつろぐソファへ移動した。
一方、一輝は敢えて手伝おうとしなかった。来客があった場合、美月がすべてやりたがることは経験上から熟知していた。兄弟なため、妹の考えを知り尽くす。
「俺はそろそろ就寝するつもりだけど、増本と羽矢はどうする?」
「う~ん。私はもう少し起きておく」
「私もそうしようかな。リビングで自由にくつろぐ予定」
羽矢と莉菜は各々答えた。
「なるほど。じゃあ、先に寝るよ」
一輝はまず洗面所で歯磨きを済ませた。きっちり3分間歯を磨いた。
「美月おやすみ!」
食器洗いに勤しむ美月へおやすみの挨拶をした。
「うん!おにぃおやすみ!それと、明日の約束は忘れないでよね!」
「うん忘れてないよ。隣で一緒に寝るんだろ?」
「よろしい!」
美月はにんまり幸せそうに微笑んだ。胸中の感情が前面に顔全体から露見する。
「増本と莉菜もおやすみ~」
一輝は羽矢と莉菜を軽く視界に入れた後、階段をゆっくち上がり、自室へ辿り着いた。
部屋着からパジャマに着替え、室内の電気を落とした。真っ暗では眠りに付けないため。意図的にオレンジ色の豆電球に設定した。
ベッドに身を投げ、自身の身体へ掛け布団と毛布を掛け、目を瞑る。視界が真っ暗に変貌する。
静かな時間が続く。
カチャッ。
突如、一輝の部屋のドアが開く。
「うん?」
怪訝に感じ。ベッドから起き上がり、ドアの辺りを確認した。
「よ!」
そこには羽矢と莉菜の姿があった。莉菜は羽矢の後ろに隠れるように佇む。
2人共パジャマを身に纏う。羽矢は黒一色の寝間着。莉菜は全身が水玉模様の寝間着だ。
「どうしたの?何か俺に伝え忘れた?」
一輝は一旦、ベッドから降りた。まだ目はしっかりと覚醒する。
「何もないぞ?ただ朝本と一緒に寝るために入室した。ただそれだけだぞ」
羽矢は平然と答えた、恥ずかしがる素振りを一切示さずに。
莉菜も呼応してゆっくり頭を縦に振った。
「え・・・。まじ?」
一輝は表情が硬まった。完全に予想外の展開だった。羽矢と莉菜が一緒に寝る。そんな展開など誰が予想できるのだろう。
緊張と同時に興奮も覚えた。なぜなら西城高校の2大巨頭と隣に寝られる体験など一生味わえないかもしれないから。
「よ~し!布団にお邪魔するぞ!」
羽矢と莉菜は許可を取らずに、勝手にベッドへ上がった。
羽矢は右側、莉菜は左側。
「当然、朝元が寝る場所はわかるよな?」
羽矢は試すように一輝へ疑問をぶつけた。
「・・・」
ベッドの真ん中にスペースが空く。容易に想像できた。羽矢と莉菜に挟まれて寝ろ。そういうことだろう。
「さ、さすがにダメだろ。考え直さないか?」
一輝はわずかに残った理性に従い、提案した。ここで羽矢達が引いてくれる可能性も無きにしも非ずだ。
「かずくん・・・私達と一緒に寝るのは嫌なの?」
莉菜は寂しそうに瞳を揺らした。非常に不安を感じているようにも見えた。
「い、いや。そんなことないよ。絶対にないから」
一輝はすぐに莉菜の言葉を否定した。悲しげな莉菜の顔を視認するなり、自然と口元が動いた。
一輝は慌てて、ベッドの真ん中へ移動した。
当然、羽矢と莉菜に挟まれた状態になった。
左右に美少女の温もりを感じた。
「そういえば、一緒に寝るのは幼稚園以来だね」
莉菜は一輝の腕に巻きつき、嬉しそうに微笑んだ。
「おっと私は初めてだな。喜ぶべき幸福だな」
羽矢は一輝の足に自身の足を絡めた。
「お、おい!」
弾力のある柔らかい足が一輝へ絡み付いた。
腕には柔らかい胸の感触も存在する。男の理性をダメにする柔らかさだった。同時に一輝の自宅のボディーソープの香りが漂う。一輝も同じ製品を使用する。しかし、一輝からはここまでいい匂いはしない。
「なんだ動揺してるのか?もしかしてウブなのか?」
羽矢は一輝を挑発した。
「・・・」
一輝は虚を突かれた。完全に図星だった。恋愛経験が皆無なため、ウブなのは否めない。
「かずくんは恋愛経験ないもんね。そこも可愛いけどね」
莉菜は嬉しそうにギューっと腕に力を込めた。シャンプーの香りが一輝の鼻腔を容赦なしに刺激する。
「はぅ!?」
一輝は情けない声を漏らした。無意識に漏れ出た。
寝れねぇ~~。
「いきなりだが。私と莉菜から重要なお知らせがある」
羽矢が話を切り出した。
「うん。私もある」
莉菜も首肯した。
羽矢も莉菜も急に真剣な表情に変貌した。
「緊張するな」
「私も」
羽矢と莉菜は、ほぼ同時に深呼吸をした。2人共、一輝へ密着したまま。
羽矢と莉菜が緊張する光景は珍しい。一輝も今まで1度も目にした経験がなかった。
「朝元、私と付き合ってくれないか?」「かずくん、私と付き合ってください!」
羽矢は顔も赤く染め、告白した。
一方、莉菜も顔も赤くしつつ、目を強く硬く瞑った。
「・・・。え?・・・え~~~」




