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第7話 束の間のティータイム

「ふぅ……」


 カナタくんに供給をしてから数日後、何をしたのかはまったく分からないけど、本当に多くの生徒がここを訪れ供給を受けてくれた。どの生徒もレオくんとカナタくんと同じように、なぜ純度が高いのか聞いてきたけど如何せん魔法の知識はほとんどないので、自分のことながら何一つ理解できてなかった。

 学園にある文献を読んではみたものの、まずはそこに書いてある単語を調べることから始めなければならず、たくさんの時間がかかってしまい読めてふたつほどだった。


「レオくんに教えてもらうまで、魔力の純度のこともよく知らなかったし……」


 就任して日は浅いけど、一応教師の端くれとしては魔力のこと、魔法のことをもっと知っておくべきじゃないかな。

 そんなことを考えていたら、供給室のドアが開いた。

 今は授業中で、緊急以外の生徒は来ないはず……。


「やあ」

「理事長!」

「グレース先生のお茶に合うお菓子を持ってきたんじゃが、一緒にどうじゃ?」

「まだ勤務中ですよ、アイザックさん」

「それなら、わしの命令ってことにしようかの」

「ふふ、命令、承りました」


 理事長はレオくんの次に供給室を訪れてくれて、こうやってよくお菓子の差し入れをしてくれる。秘書の方がいらっしゃるから秘書さんと食べたらどうか、と勧めたけれど、わたしのお茶がおいしいから、とここに来てくれる。多分、わたしの様子を気に掛けてくれているんだと思う。口実のために持ってきているお菓子もおいしくて。小さい頃に死んでしまって記憶にほとんどないけど、祖父と過ごす他愛ない時間ってこういうものなのかな。


「はい、どうぞ」

「おお! これじゃこれじゃ。街で売っとるものなのに、グレース先生が淹れるとうまいのは、なんでじゃろうなぁ」

「、特別なことは何もしてないんですけどね」

「ほっほっ、一緒に飲む人がグレース先生じゃからかのぅ」

「そうなら嬉しい限りです!」


 アイザックさんとの穏やかなお茶会は時間を早める魔法があるのか、気が付いたら授業も終わる頃になっていた。


「そうだ! アイザックさん、ひとつお聞きしてもいいですか?」

「なんじゃ?」

「わたし、魔力とか魔法のことをもっと知りたいんですが、なにか参考になる文献などありますか? できれば、易しいものだと有難いんですけど……」

「ふむ、文献か……」


 アイザックさんは持っていたカップを傾けお茶を飲み干し、斜め上を見て少し考えているようだった。そういえば魔法学園には初等部があるし、その教科書でも見ておけばいいのかな。


「……文献で易しいものはほとんどないが、内容を分かりやすくかつより詳しく理解でき、他人にも伝わるように話せる者はおる」

「もの……人ってことですか?」

「ああ。話をつけておくから、放課後理事長室に来れるかの?」

「え、あ、そんな急にいいんですか? 先方の都合も……」

「彼の性格からすると喜んで引き受けるから大丈夫じゃ!」

「そう、ですか……。では、放課後お伺いしますね!」


 ちょうど約束を取り付けたところで、授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。アイザックさんは「じゃあ、帰るかの」と言ってひらひらと手を振りながら、供給室を去って行った。

 放課後に供給に来る生徒には申し訳ないが、外出中のプレートを入口に下げておこう。

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