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第26話 最前線

 ――翌朝。

 偵察部隊と物資を運ぶ隊員と共に、最前線へと向かう。道中は十分に安全なルートを辿るため、そこまで心配はないと言う。軍人は慣れているかもしれなけど、わたしは……。


「……ベネットさん、大丈夫ですか」

「……、」

「ベネットさん?」

「へっ? あ、は、はい! えっと……、」

「……手を、出していただけますか?」

「え、手、ですか?」


 オリバーさんの言う通りに右手を彼の目の前に差し出すと、わたしの手を彼の両手が包むように握る。


「な、なにを……、」

「心を落ち着ける魔法です。私はここにいます、何があっても守りますから」

「っ!」


 思いがけない行動に心拍数が高まる。

 今まで幾度となく供給のためにキスをしてきたが、本当のキスはしたことがない。つまり、男性と男女の関係になったことがなく、そういったことに免疫がない。オリバーさんが任務のためにわたしに尽くしてくれていることは十分承知しているが、彼の何気ない行動がわたしを動揺させて落ち着くどころではなくなる。けれど、先ほどまでの不安や恐怖などの気持ちが多少は薄まった。


「あ、の……もう、大丈夫ですっ」

「本当ですか?」

「本当です! それに、みなさんをお待たせするわけには……」

「……それもそうですね。行きましょうか」

「はい、」


 一足先に休憩ポイントで待っている部隊を慌てて追いかけた。


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「ここが、最前線……」

「あまり動き回らないようにお願いします。この土壁の範囲内でしたら、多少の攻撃でも防げますので」

「土壁、ですか」

「はい、土魔法で作られています。よほど攻撃を集中させない限り、滅多なことでは壊れません」


 土魔法で作られた壁がテントの役割を果たしていて、燃費がよくて供給をあまり必要としない魔法士はここで食事や休憩などをとるらしい。土壁は大きくて目立つもののその強度によって、攻撃の対象になってもそう簡単には突破されないという。

 同じ土属性のルカ先生はゴーレムを作っていたけど、こういう使い方もあるのね。


「……では、早速供給を」


 手当てをした傷を見て最前線はさぞ魔法が飛び交っているのだろう、と思っていたけど、戦場とは思えないほど静かだった。荒れ地だろう場所がさらに荒れて噴煙が出ているくらいしか戦っている証拠は見られない。軍議で予想された通り、敵軍は後退したのだろうか。それでも、供給することには変わりはない。


「ベネットさん、適宜休憩も挟んでください。こんなところで休めというのも無理な話でしょうけど……」

「ふふ、たしかにそうですね。供給が一段落したら少し飲み物を頂きますね!」

「物資から温かいものを用意します」

「ありがとうございます、オリバーさん」


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 休憩を挟みつつここにいる隊員にはほとんど供給をし終えた。このまま、戦況が動かないならわたしとオリバーさんはテントの位置まで戻ることになる。


「やっぱり、後退したか……? それなら今が攻め時じゃないのか?」

「いや、指揮官がその判断を下してない限り、俺たちは動けない」

「そうだけどよ、」


 あまりの静けさに隊員たちもどこかそわそわしてしまうのだろう。撤退なら攻撃はしなくてもいい、後退なら今が一番隙ができる時。それを全員が分かっている。でも、罠だったら……。その可能性も理解しているからこそ、動けない現状がもどかしい。


「グレースちゃーん、暇だよー」

「ディ、ディエゴさん……! 戦場なんですから、暇ではないかと……」

「んー、でも、俺早く暴れたいんだけどなー」

「ディエゴさんはどの属性なんですか?」

「俺は火だよ。普通の人よりも高温で出せるのが特徴だから、天敵の水魔法にも強いんだよねー」


 おおよそ戦場、それも最前線ではされないような他愛ない会話をして、その時を待った。


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