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第15話 回復魔法の使い手はお気に召さない 後編

「……あの人、ぼくのことちゃんと見てくれないから……」

「見てくれない? 教室やここまで送ってもらったのでは?」

「それは! ……理事長がそう言い付けたから、ぼくが命令したからで、ルカ先生が自主的にしてくれたわけじゃないし……」


 そう言われれば、そうとも捉えることができるかもしれない。けれど、本当にイーゴンくんのことを見ようとしないなら、理事長からのはまだしもイーゴンくんの話は聞かないだろう。それに、今朝の遅刻の理由をルカ先生はきちんと分かっていた。見ていないわけではない。そう伝えようとしたら、先に彼が言葉を繋げた。


「……ぼくね、自分がわがままなこと分かってるし、困らせてるんだろうなぁっていうのも分かってるの。それでも周りの人はぼくのこと、しかたないなぁ、って可愛がってくれるの。ぼくが回復魔法持ってるからかもしれないことも分かってる。けど、可愛がってもらえるの嬉しいから下心があっても、いいんだよね。でもあの人は……」

「……」

「ぜんぜん可愛がってくれないし、やることだけやって終わりって感じで、ぼくと深く関わろうとしないんだよね。まあ、ルカ先生、基本的に誰にでもそうだからあの人の性格って言えば、それまでなんだけど……。でも、でもなんかいやなの!」

「……最後はなんとなくの感情、なんですね」

「うん……。ぼくのこと、ちゃんと見てほしい。みんなにそうでも、ぼくだけ特別に見てほしい……」

「……ふふ」


 世界に3人という大きな存在が、目の前でこんなに小さな子どものような言動をしているギャップに思わず笑みがこぼれる。そう思っていたのが彼にバレたのか、再び頬を膨らませた。


「今、子どもっぽいって思ったでしょ! いいもん、子どもで! 大人になったらかわいいって言われなくなるし!」

「ふふ、イーゴンくんはいつになっても、かわいいって形容詞が似合ってそうですけどね」

「ほんと? ……ふふん! 嬉しい! 先生もかわいいよ! すき!」


 座っていたイーゴンくんが立ち上がって飛びついてきた。椅子の背もたれがキィと軋んだちょうどその時、供給室のドアが開いた。もうお昼休みも終わるというのに供給に訪れたのだろうか。


「……今、好きって……」

「え? ……あ、レオくん!」

「レオ? あーなんか見たことあるかも!」


 首に腕を回して抱き着いたままのイーゴンくんはそう言う。レオくんは外見もだが、成績も優秀で人目を引く生徒だ。一度くらい見かけていてもおかしくないだろう。


「あ、あの、イーゴンくん、離れてもらっても……?」

「……あ、ごめんなさーい!」

「いえ。……それで、レオくん、どうかされましたか?」

「……またひとり……」

「え?」

「……いえ、なんでもないです。失礼しました」

「え、え? レオくん?」


 レオくんは足早に供給室を後にする。普段は来ないお昼休み、それも終わる頃に来るなんて大事な用事だったのではないだろうか。


「……なんの用事だったんでしょうね……?」

「……ふぅん、なるほどぉ……」

「はい? どうかしましたか?」

「ううん! なーんでもない! じゃあ、ぼくももう教室戻るね!」

「あっそうですね! すっかり時間経ってしまいましたね」

「うん、楽しかった! またお昼一緒に食べてもいい?」

「もちろん! いつでも来て下さい!」

「やったぁ!」


 頭上で大きく左右に手を振って帰っていくイーゴンくん。

 たくさんのお話ができてよかった。そういえば、誰かとお昼を食べるのは、学園に来てから理事長以外初めてだった。やっぱり人と食べるご飯はおいしいなあ。


「さあて、仕事、片付けなきゃ!」


 両手を上に伸ばして、身体を軽く解してから仕事に取り掛かった。



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