原子力発電所の安全保障上の問題
原子力発電所が軍事的ウイークポイントになるとの話は前にも書いたことがあるが、ここ数日、原発への攻撃を非難する声明がロシアからもウクライナからも出てきている。
なんでも、「戦争犯罪」として定義されている項目に原発への攻撃があるそうな。
なぜ、戦争でルールが守られると思うのだろうか。戦争はそんな理性的な行為だろうか。
銃で殺すのはいいが、クラスター弾で殺したら戦争犯罪。
軍事施設への攻撃はいいが、病院や学校への攻撃は戦争犯罪。
戦争をするにしてもルールは守ろうね。って誰が守るのか。
そもそも核は使えば学校も病院も無差別に吹き飛ばすわけで、犯罪の責任は相手側にあるというお約束の言い訳で何でもアリにするのが戦争。でなければ、核兵器の保有自体が犯罪予備でダメだろう。
それが守られる前提であれば、原発隣接地や病院や学校に軍を配備するでしょうね。
敵から攻撃されない場所に攻撃拠点を置けば戦争が有利になるのは当然。
仮に攻撃されても相手の戦争犯罪を主張するのに役立つし。
当初、ロシアが原発への攻撃をしたとウクライナが批難をしていたが、原発を含むエリアがロシア軍に占拠されてしまうと、今度はロシアが拠点化するのは自明のことで、それを許せないウクライナは原発に隣接するロシア軍を攻撃するだろうし、結果として原発施設の一部に損傷が出るのも必然。そしてお互いが原発への攻撃を非難し合う。
ウクライナだって原発を含むエリアを奪還するためには、その周辺から攻撃してくるロシアの軍事拠点を攻撃するしか手がない。現実に原発周辺のロシアからの攻撃でウクライナ軍は被害が出ていて「核の盾」なんて言葉もメディアで語られている。
振り返って日本の原発が占拠されたらどうなるのか、という問題提起をするテレビ番組があった。
お約束の多段防御(2段だけど)の説明がされる。ミサイルは撃ち落とせる前提。その前提自体が甘いと思うが計画ではそうなる。ミサイル防衛はイージス艦が高高度で迎撃となるけれども、日本全体を網羅は出来ていないので地上にイージスシステムを展開しようとして失敗した例がある。基本的に都市部を重点的に守るように配置されており、原発のある郡部は手薄になりがち。
じゃ、イージスをもっと入れましょう、もっと軍事力を強化しましょう、という方針はわかるのだけれども、どこまでやれば大丈夫というラインはない。それが原発があるが故に必要だとするならば、原発は底なしにコストのかかる発電方法になる。
生命と財産を守るために財産を底なしに削るという不思議な構図。
強力な矛から守る盾の話は昔から矛盾と言うわけで、これは必然なのかもしれないが。
それにしても、ウクライナの原発はよく維持ができている。
福島は地震と津波があったにしても、砲弾が飛んでいたわけではない。ウクライナの原発では周辺も攻撃されており、送電線も維持できているか怪しい。管理する専門家は支配者がロシアになったりウクライナになったりで管理体制をどうやって維持しているのやら。そこから学ぶべきことは多いように思う。