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治癒魔法使いアレスタ  作者: 一天草莽
第一章 治癒の英雄、あるいは不死者の王
10/85

10 高度魔法化都市記念祭

 翌日は天気も良く、かねてより予定されていた通りに記念祭が始まった。

 その催し物の一つが、背の高い時計台が見下ろす中央広場において行われる、街の老若男女が数十人は参加するという魔法技能の披露会である。


「うおおおお! どうかその目でしかと見てくれ! ワシが五十年間ずっと鍛えに鍛え抜いてきた素晴らしい筋肉美をっ!」


「どこが鍛え抜いた筋肉美だ! おっさんは魔法で一時的に自分の肉体を強化しているだけだろうが! 卑怯だぞ!」


「何を言うか若造! このワシの威光ある姿が見えぬのかぁ!」


「あはは! おじちゃん、かっこいい!」


「よく言った少年! そうじゃぞ、まだまだワシは現役なんじゃい!」


「ヒュー、ヒュー!」


 などと、記念祭のために飾り付けられた豪華なステージとたくさんの観客が座れる客席が作られた広場は、集まった人々の熱気に包まれていた。

 魔法技能の披露会というわりには庶民的な気がするけれど、実に楽しそうだ。


「ニック、どうせお前も暇なんだろ? このイベントを盛り上げるために歌や踊りを披露してみたらどうだ?」


「何を言っているのさ。忘れてもらっちゃ困るけど僕の仕事はアレスタ君の護衛と監視だからね。ステージに上がって遊んでる暇なんてないよ」


「チッ。つまらんやつだな」


「あっ! ちょっとサツキ君、今、僕に向かって舌打ちしたね? つまらんやつだと馬鹿にして言ったね? 騎士侮辱罪で身柄を拘束するよ!」


「そんなのがあるのか?」


「領主様にお願いしているところさ!」


「ある意味ではお前が一番騎士の立場を侮辱しているんだから領主も困ってるだろうな」


「あっ! あっ! 実際、領主様はすごく反応がわるかったよ!」


「賢明な領主で安心した。この街はしばらく安泰だな」


 そんな感じで言い合って、サツキとニックは相変わらず仲良しだ。

 遠慮なく軽口を叩き合えるのを見ると、二人は意外と相性がいいのかもしれない。


「二人とも、次の出し物が始まりますよ。せっかくだからちゃんと見ましょうよ」


「やっと今のよくわからない筋肉自慢が終わってくれたのか」


「持ち時間をオーバーして長々と一人でやるんだもんなぁ、あのおじさん。僕でももうちょっと遠慮するよ」


「まあまあ、お祭りですから楽しみましょうよ」


 魔力を利用して無駄な脂肪を消すと同時に、何倍にも増強した筋肉の見栄えをよくする効果もあるようなので、肉体強化の魔法もあれはあれで見所があるものだ。

 そうはいっても興味がなければ動きに乏しいので退屈だけどな、と苦笑しつつアレスタが二人をなだめていると、次の演者がステージに上がった。

 二十代くらいの上品な男性だ。広場の前方に設置された舞台の中央に立つと、観客に向かって深く一礼する。

 たっぷり時間を作ってから彼は顔を上げると、すっと伸ばした両腕を頭の上へと掲げた。


「では、早速ですが私の魔法をご覧いただきましょう!」


 もったいぶって観客の顔を見渡しながら心の中で精神果樹園を開くと、頭上に掲げていた両手をパチンと鳴らす。

 それを魔法発動の合図にしたのか、彼の手からは噴水のように勢いよく水が飛び出した。

 右手と左手から空へ向かって水が放出されると、ある程度の高さで弧を描いて、地面へと落ちていく。そうやって飛び散る水沫が霧のように周囲へ拡散すると、そこには七色に輝く綺麗な虹が生じるのだった。


「どうです。きらきらと七色に輝いているでしょう!」


「すごい、すごい!」


 観客からは盛大な歓声が沸きあがった。

 雨上がりの空に発生する本物と比べると規模は小さいが、魔法の力で補強しているのか、普通よりも色濃く輝く虹は美しい。


「ふむふむ、彼の魔法はいいね。派手さはないかもしれないけれど、綺麗で華やかだから祭りにはぴったりだ」


「ああ、まさに夢を見させてくれるぜ。人を傷つける魔法とは大違いだ」


 感心したのかサツキとニックもべた褒めだ。もちろんアレスタにも異論はない。

 この披露会が始まってから次々と色々な魔法を目にすることができたアレスタは楽しむと同時に感動もしていた。


「みんなすごいですね。俺には真似できないことばかりで、憧れるなぁ……」


 帝国の片田舎で育ったアレスタはあまり他人と関わらず、魔法が使えないカーターと二人で生活してきたせいもあり、すべての魔法が新鮮に目に映る。あくまでも知識として「魔法」という概念が存在していたものの、それを実際に見た経験は少なかった。

 だからこそ感動を隠せない。

 残念ながら世の中には危険な魔法もたくさんあるので便利なだけではないのだろうが、これほどまでに魔法が身近に存在するベアマークの人々がうらやましくもあった。

 おそらく、あまり賑やかな場所が好きそうでないサツキが魔法技能会の会場へ来たがったのも、興味や関心があったというより、もの知らずなアレスタにたくさんの魔法を見せたかった思惑のほうが強いのかもしれない。

 人と比べて圧倒的に世間知らずのアレスタに魔法のあり方や可能性を少しでも考えさせようとしているのだ。

 そのサツキがあきれたようにアレスタを見た。


「おいおい、アレスタ。何を言っているんだ。お前だって治癒魔法が使えるんだろ?」


「そうだよ、よりにもよって君が憧れるなんてとんでもない。治癒魔法が使えるというのが本当なら、それこそ誰にも真似ができないことじゃないか」


「うーん、それはそうなんだけど……」


 サツキやニックはアレスタを励ますように言ってくれるが、自分が特別な存在であるかどうかなど、そうありたいと願うことはあっても、実感することはとても難しい。

 だからアレスタは曖昧に頷き返すことしかできなかった。


「ほら、次のが始まるぞ」


 顔を落として地面を眺めながらアレスタが考え込んでいると、気分を変えるようにとサツキに肩を叩かれた。

 とりあえず今は次の演目に期待することで悩みを忘れることにしよう。そう思ったアレスタが壇上を眺めていると、続いて出てきたのは若い少女だった。

 戦闘用の鎧こそ着ていないが、式典用らしい騎士の制服を着込んでいる。


「誰かと思えばサラじゃないか!」


 しかも、どうやらニックの知り合いらしい。


「お集まりの皆様方、どうぞよろしくお願いいたします。子供のころから私は音楽が大好きですので、ぜひ皆様にも私の演奏を聞いていただきたいと、こうしてステージに上がることを決意しました。騎士団からも一人くらい出たほうがいいと推薦されたこともありますが、ともかく楽しんでいただけると幸いです」


 そして彼女は何度となく練習を繰り返して扱い慣れているのであろう、年代もののヴァイオリンを構える。

 しっかりと声は届いていたはずだが、彼女の名前を叫んだニックの存在は無視されていた。相手にしないほうがいいと知っているところから察するに、どうやら本当に二人は知り合いらしい。

 もっとも、同じベアマークの騎士だとすれば、お互いのことを知っていても全く不思議ではないが。


「せっかくのお祭りですのに、そこに音楽がないのではあまりにも寂しいですからね。では、ぜひお聞きください」


 彼女はヴァイオリンを構えたまま一礼すると、颯爽と演奏を始めた。

 落ち着いた音の運びで助走し始めたのは優雅なる曲。穏やかな曲調に合わせるかのように、祭りの熱気に騒ぎ立っていた聴衆は落ち着きを取り戻す。

 耳を澄ませた聴衆のおかげか、そう狭くもない会場は瞬く間に静粛に満ちた。

 誰もが言葉を忘れて口を閉ざし、はるかなる物語を想像させる雄大で華麗なる音楽に聴き入っていた。

 やがて曲も中盤の盛り上がりに差し掛かかると、上品さはそのままに、軽快な旋律が始まる。

 舞台上に存在する楽器は彼女が弾いているヴァイオリンだけだ。そのはずなのに不思議と壮大さを感じさせる。

 それは堂々たる彼女の演奏がなせる業であろう。

 それは魔法の力だろうか。やがて彼女は幻想的に、蛍のように飛び交う光の粒子を身にまとった。

 きらきらと、彼女の周りが黄金色に輝き始めたのだ。


「美しい」


「まるで女神のようだ……」


 弦を使って躍動的にヴァイオリンを弾くたび、小さな彼女の体から鮮やかな光が放たれる。

 すべての演奏が終わって彼女がその手を止めると、会場からの拍手と歓声はしばらく鳴り止まなかった。


「ありがとうございました。私のつたない演奏が少しでも祭りに華を添えられたのならば、騎士の一人として、これに勝る喜びはありません」


 そして彼女は恭しく頭を下げ、小さな歩幅を感じさせない足取りで潔くステージを去った。

 それを最後まで見送ったアレスタは隣にいたニックの肩をとんとんと叩く。


「今のは誰? 顔を見た瞬間にサラって名前を呼んでいたみたいだけど、もしかしてニックの知り合いなの?」


「知り合いも何も、サラは僕の妹だよ。よくできた、という言葉を付け加えるのは兄として悔しい気持ちもあるけどね」


「へえ……」


 あまり似てないね、と正直に思ったことを伝えるのはやめておこう。そう考えたアレスタは頷くにとどめた。

 ニックにとっても、自分から進んでしゃべりたい話ではないらしい。

 あからさまに話題を変えようとして顔を上げた。


「おや? なんだか向こうのほうが賑やかになってきたみたいだよ。きっと何か面白いことがあるんじゃないかな?」


「向こうのほう?」


 楽しそうに弾んだ声を出すニックにつられて、アレスタは視線を大通りへと向けた。

 すると、そこには奇想天外な光景が広がっていた。ふわふわと宙を舞って進む豪華な神輿が見えたのだ。

 爆竹のような火花を四方八方に撒き散らしながら、たくさんの人を従えて突き進んでくる。


「あれは魔法で飾り付けられたパレードだな」


 何が来ても喜びそうなニックだけでなく、物知りなサツキでさえ珍しそうに眺めているので、街の人達も相当に気合を入れているに違いない。神輿の担ぎ手らしい人間の姿は見当たらないが、おそらく近くにいる誰かが魔法で動かしているのだろう。

 魔法の力で上下に揺れつつ、空中を前進する神輿の姿は不思議なものだ。


「だけどあの火花はやりすぎじゃないかな? すごい音も出てて迫力はあるけれど、あんなに飛び散っているんじゃ僕は恐怖を覚えるよ」


 パレードの光景を目の当たりにして感動するアレスタやサツキとは違って、楽しんでいたはずが少しずつ神輿が近づいてくるにつれてニックは及び腰になっていく。

 あきれたサツキがため息を漏らす。


「魔物や暴漢から街を守る必要もある騎士があんなものに怖がっていてどうする。どうせ魔法で制御されているんだから大丈夫だろう。ほら、街のみんなも楽しんでいるみたいだぞ。平気な顔をして近くで踊っている奴もいっぱいいるぜ」


「遠巻きに見ている分には素敵なパレードだと思うけど、あんなに近くで怖くないのかな?」


「祭りの気分に浮かれているっていうのもあるだろうが、たぶん度胸試しって部分もあるんだろ。それに、ああやって踊っている奴は間違いなく祭りを楽しんでいる。どうせ祭りなんてと冷めているような奴より格好いいじゃないか」


「うーん、僕には真似できないけど、だからこそうらやましいな」


 そんな風にサツキとニックが語り合っている側で、アレスタは神輿やそれに続く人々の姿を眺めていた。みんなが心から祭りを楽しんでいるようで嬉しかったのだ。

 だからこそ、このまま何事もなく祭りが終わってくれればいいのだが――。


「きゃあああああ!」


 しかし街の平穏を祈ったアレスタの願いは届かず、ごった返している群集の間から悲鳴があがった。

 賑やかな喧騒の中でも響き渡る大きな叫び声だ。

 祭りを楽しむ歓声ではなく、むしろ狂乱や絶叫に近い。


「みんな逃げろ! 魔物だぞ!」


「……魔物だと? こんな街のど真ん中に出たってのか?」


 森や平原ならともかく、普通、野生の魔物が高い壁に囲まれた街の中まで入ってくることはない。騎士の監視と魔法の壁などがあり、侵入を阻止されているからだ。

 なんにせよ、大通りに集まっている人々に襲い掛かってしまえば記念祭どころではない非常事態となる。誰かが対処しなければならないだろう。


「……ま、対処するにしても、どんな魔物かにもよるが」


 逃げ惑う群衆をかき分けて姿を現したのは、通常よりも二回りは巨大な馬型の魔物だ。視界に入るものを容赦なく破壊しつつ、暴れながら走ってくる。

 具体的に何かを目指しているわけではなさそうだが、とにかく興奮しており、すぐには止まりそうもない。このままでは被害が甚大なものになってしまう危険性があった。


「腕に自信がない奴は下がれ! まずは俺が足止めする!」


 どよめく群集の中から一人、血気盛んに腕まくりをした中年くらいの男性が飛び出した。いかにも庶民といった服装をしていて騎士には見えないが、その顔は不思議と自信に満ちている。

 堂々とした仁王立ちで魔物に向かって立ちはだかると、精神果樹園を開きながら右手を突き出した。


「魔物よ、こいつを食らえ! 我が魔法、酩酊波動めいていはどう!」


 勇ましく叫んだ彼の右手、その指先から、泥水をちょっぴり透明にしたような小麦色をした大量の水が一直線に放出された。

 ただの水ではなく、魔力が込められた魔法による攻撃だ。地中に埋められた水道管が破裂したような勢いで噴出する魔法の水を避けるのは難しく、真正面から受けて足を止めた魔物が身震いをしながら甲高くいなないた。

 目はうつろとなって歯はむき出しとなり、ぶるぶると鼻息も荒くなる。


「おお、なんだか魔物が苦しんでいるぞ!」


「このままおとなしくなってくれればいいが、お前の魔法にはどういう効果があるんだ?」


「よくぞ聞いてくれた! 俺の使った酩酊波動は相手を酒に酔わせてしまう魔法さ!」


 喜んでいる周りの男たちに対して得意げな説明が終わると同時、馬の魔物は荒々しく前足を持ち上げて、周囲の人間を威嚇するように大きな声で吠えた。

 心なしか、先ほどよりも威勢がいい。どうやら効果覿面だ。

 ただし、どちかかといえば悪い方向に。


「おいこら、馬鹿野郎! ただでさえ厄介な魔物を酔わせてどうする! さっきよりも凶暴になったように見えるじゃねえか!」


「なんてこったい! こんなはずではっ! その昔、デビルスネークという巨大な八本頭の蛇の怪物を酒に酔わせて退治したという伝説があってだな……」


「怪物が出てくる昔話なんて都合のいい作り話だろ! そんなもん信じて参考にすんな!」


 彼らが言い争っていると、酒に酔って一度は立ち止っていた魔物が再び動き始める気配がした。勇気を出した男性には悪いが、先ほどまでよりも危険な状態だ。

 このまま暴れだすのを黙って見ているわけにはいかない。


「ええい! 他に魔法使いはいないか!」


「駄目だ! 向こうの方でも別の魔物が出たらしく、騎士や魔法使いはあっちで対処してくれている!」


「畜生! だったら今は逃げるしかねぇ!」


「任せなさい! 私が時間を稼ぐわ!」


 今度は妙齢の女性が飛び出した。どうやら彼女も魔法使いらしい。

 魔法の腕に自信があるのか胸を張り、勇敢にも魔物の前に立つ。

 おそらく虚勢ではない。すっと背筋を伸ばした美しい姿で彼女は叫ぶ。


「さあ、食らいなさい! 野菜生産魔法、ニンジーン!」


 勢いよく両手を前に突き出すと、その手が不思議なオレンジ色の光に包まれた。

 夕焼け空のような光が両手の先端に収束していくと、それは徐々に実体を帯びていき、彼女の目の前へと具現した。


「これを食らいなさい!」


 見間違えるはずもない。それはニンジンである。

 ただし普通のニンジンとは違って、大きさは槍ほどもある。

 魔物は警戒心をむき出しにしたまま近づき、品定めするかのように魔力で生み出されたニンジンのにおいを嗅ぐ。それから、わずかに舌を出して、味見のつもりか表面をなめる。

 固唾を呑んで見守る群衆。最後には遠慮なく魔物もニンジンにかぶりついた。

 その姿を遠巻きに見ていた人々からは次々と喜びの声が沸きあがる。


「やった、魔物がニンジンを食ったぞ! さすが馬の魔物だ!」


「よかった! それで、あのニンジンにはどんな効果が?」


 尋ねられた彼女は高らかに笑い、やはり堂々と胸を張って答える。


「よく聞いてくれたわね! 栄養価たっぷり、抜群の歯ごたえ、文句なしの濃密な味! ……そう、あれは完璧なニンジンよ!」


 魔法で生み出された最高級のニンジンを食べ終えた魔物は前足を高々と持ち上げて、威勢よくいなないた。

 心なしか顔色がいい。


「うわぁ! どうしてくれるんだ! ますます魔物が元気になったぞ!」


「さすがは私のニンジンねっ! 逃げたい人がちょっと遠くに逃げるくらいの時間は稼げたんじゃないかしら。けど、残念なことに魔力が足りなくて二本目は出せないわ……」


「いいからお前は下がってろ!」


 最初に宣言した通り時間を稼ぐことはできたものの、どうやら今回も魔物をおとなしくさせることには失敗したようだ。


「くそ、他に魔法使いはいないのかっ!」


 誰ともなく叫ぶが、次に名乗り出る者はいなかった。

 すでに多くの者は逃げ始めており、残っているのは野次馬と、なんだかんだと逃げるタイミングを失った人ばかりだ。

 何か力になれないかと思って場にとどまる者、どうなるのかと固唾をのんで様子をうかがう者、自分の店などを守るため最後まで逃げるつもりがない者も少なくない。彼らがどこまで魔物に立ち向かえるのかわからないが、このままでは魔物が暴れて街を滅茶苦茶に破壊してしまうかもしれない。

 無論、偶然ではあれ現場に居合わせたアレスタたちも黙って静観していたわけではない。

 まずはアレスタが護衛のためについて来ていたニックを頼ろうとした。


「ニック! あの魔物をどうにかしてくれ!」


「ご、ごめん! 本当は僕も何とかしたいんだけど、腰が抜けちゃって!」


 見れば、本当に腰が抜けているらしく地べたに尻餅をついている。まるで小さな子供だ。

 まさしく護衛の出番じゃないかと、こちらに襲ってきかねない魔物を相手に騎士である彼の活躍を期待したかったけれど、しばらく動けそうにない。

 こうなったら頼るのは別の人だと、アレスタは視線をニックの隣へ向ける。


「サツキさん!」


「すまない、アレスタ。とある事情があって、今の俺は自由に魔法を使うことができない。どうしようもない緊急事態なら話は別だが、おとなしく騎士たちの到着を待った方がいいだろう」


 最善かどうかは別としても、正論の一つである。

 アレスタとサツキはたまたま街を訪れた一般人に過ぎず、効果的な攻撃魔法が使えないのならば、命を賭して魔物と戦う義理はない。街の人々と一緒に逃げるべきだ。

 少なくとも騎士であるニックには魔物と戦う義務と責任があるはずだが、情けなく腰を抜かしているのでは役に立たない。


「で、ですが……」


 自分の身を守るため逃げるにしても、後ろ髪を引かれる思いがする。

 本当に何も手段がないのかと考えながら視線を正面に戻した時、逃げ遅れていた一人の男性が魔物に襲われ始めていた。つい先ほど酩酊波動の魔法を使っていた男だ。

 あれから数回ほど魔法を放って精神果樹園の魔力が尽きたのか、それとも魔物を酔わせるのは逆効果だと思っているのか、得意の魔法が使えずに苦戦している。

 周りの大人たちは暴れる魔物が相手とあって、助けたくても手を出せずにいた。

 ならば助けに行ける人間が助けに行くしかない。


「いや、こうなったら俺が行きます! どうか俺がくたばる前に誰かが何とかしてください!」


「あっ、おい!」


 やけくそ気味に言い残すと、アレスタは魔物のもとへ駆け出した。対抗手段もないままに飛び出した、ちっとも後先を考えていない無謀な行動だったが、魔物に対する恐怖心と彼を見殺しにする後味の悪さを天秤にかければ、己の命惜しさに見捨てるわけにもいかなかった。

 落ちていた石を拾い、魔物の顔を狙って至近距離から投げつける。

 赤く血走った目をした凶暴な魔物が鼻息荒くアレスタを見据える。

 一般的な馬と比べて二回りも大きい魔物の姿は正面から見ると迫力満点だ。人助けだと思って衝動的に飛び出したものの、遅ればせながら少なくない恐怖が湧き上がってきたアレスタは息をのむ。魔物には人間の言葉が通じないからか、地下通路で戦った八本腕のデッシュとはまた違う恐怖を感じてしまう。


「でも、だからこそ俺がみんなを守らなきゃ」


 決意は十分だが、残念ながらアレスタは戦闘の経験があまりにも少なく、自分の力を信じるには判断材料が足りな過ぎた。

 暴れる魔物を前にして恐れがないわけではない。

 もちろん今すぐにでも逃げ出したい気持ちだってある。

 しかしアレスタの覚悟はすでに終わっていた。

 それが今の自分にできる唯一のことなら、それをなすまでだ。

 戦って勝つことが望み薄であろうアレスタが考えるべきことは、ひとまず自分が盾となって時間を稼ぐことである。


「危ない、少年!」


 叫んだのは、助けに入ったアレスタのおかげで一命を取り留めた男だ。ニックと同じく腰が抜けて動けずにいる彼の言う通り、アレスタの身に攻撃が迫っていた。

 興奮状態の魔物は前足を高く掲げると、体重をかけて踏みつけて殺すつもりなのか、邪魔をしに現れたアレスタに向かって勢いよく振り下ろす。

 その動作を冷静に見極め、とっさに横向きに跳んで事なきを得たアレスタだが、慣れない動きをしたせいでバランスを崩して不恰好に倒れこんでしまう。

 そこに、容赦なき魔物の追撃が加わる。

 地面すれすれまで低く落とした鼻先が近づいてきて、路上に倒れたアレスタを目掛けて大きく振り上げられた。


「ぐわぁ!」


 あまりにも単純な体当たりによる衝撃。

 それを受けたアレスタは地面を転がるように吹き飛ばされる。

 放物線を描いて空中を浮いていたのは一瞬ほど。しかし飛距離は成人男性が縦に並んで三人分ほどで、すくい上げられるように低い弾道で勢いよく弾き飛ばされたアレスタの体は着地とともに地面をこすり、生じた摩擦熱がむき出しの肌を襲う。

 かろうじて反応が間に合った左右の腕で頭部に衝撃が伝わるのは防いだが、急所である頭をかばう即席の防護壁となった両腕はべったりと真っ赤な血に汚れていた。

 感覚を失った指先は上手く曲がらず、おそらく腕のどこかを骨折したのだろう。わずかに遅れて激しい痛みが襲ってきた。

 思考を奪うほどの痛みと動揺。しばし混乱してしまったせいもあり、足で踏ん張ることさえ満足に出来なかったアレスタは路上に倒れて這いつくばる。

 その光景を見た周囲の人間からは悲鳴が上がる。逃げ惑う人々が散り散りに広がり、急速に立ちこめたのは不穏な空気だ。

 普通に考えれば九死に一生の窮地にあったアレスタ。

 しかし、どこか確信めいた安心感があったのかもしれない。

 治癒魔法。

 ズキズキする両腕の痛みに意識を乱されることなく、ゆっくりと精神を集中させて精神果樹園を開く。

 死にたくない。生きていたい。

 生きて、みんなを守りたい。


「よし!」


 瞬く間に……とはいかないものの、全身を覆っていた痛みは魔力を帯びた右手をかざしていると次第に引いていく。


「これ、やっぱり治癒魔法かな?」


 完全に傷がなくなったことを確認すると、改めて自分が使った治癒魔法に対して感慨に浸るアレスタ。

 けれど現実は都合よく彼を待ってはくれない。

 精神果樹園を開いて治癒魔法を使うことに集中するあまり、意識の外に追いやっていた魔物からの追撃がアレスタの脇腹に炸裂したのだ。

 呼吸が止まり、強い衝撃を受けて思考が一瞬止まり、治癒魔法で回復したばかりの体が悲鳴を上げる。

 そういえば今は魔物との戦闘中だったのだ。のんびり治癒魔法を使っている余裕など存在しない。

 今さらながらアレスタは危機感に焦った。


「頼む、魔物、ちょっと待ってくれ! せめて俺が治癒魔法を使うまで!」


「ニックの剣を借りてきた! 度胸は買うが、アレスタは引っ込んでろ!」


 すかさず援護に入ったのはサツキだ。

 借りたというよりも奪い取ってきた剣を手にして魔物に立ち向かう。


「はい、お願いします! 治癒魔法が済んだら俺も援護します!」


 骨が折れて、内臓がつぶれたような激痛を訴える脇腹を右手で押さえつつ、ここは彼の言葉に甘えることに決めたアレスタは魔物から距離をとって後ずさる。

 治癒魔法を使うにも集中力を必要とする。精神果樹園を開いて魔力の塊である果実をもぎ取る必要があるため、慣れるまでは危険な魔物の目の前で使っている余裕はないのだ。

 したがってアレスタは攻撃の届かない安全な地点に移動してから治癒魔法を使用した。

 本当はもっと積極的にサツキを援護したいが、武器もなければ魔力にも体力にも限界がある。

 もちろん魔物がアレスタに気を遣って攻撃の手を緩めてくれるわけもない。


「くそ、あんまり剣術は得意じゃないんだがな!」


「サツキさん、だったら俺に剣を貸してください! 治癒魔法が使える俺なら、ちょっとくらい傷ついても平気なので!」


「うるせえ! 下手すりゃ気を失って死んでただろ、アレスタ! とりあえず安心して俺に任せてくれ! こいつは図体はでかいが、格としては低級の魔物だ! 本来なら苦戦するような相手じゃない!」


 そうは言いつつも実際には苦戦している。右に左に大きくステップを踏みながら剣を駆使して魔物の攻撃をいなしてはいるものの、なかなか決定打を叩きこめずにいるのだ。

 事情はわからないけれど、自由に魔法を使えないのが原因かもしれない。

 サツキばかりに任せておけぬと考えたアレスタも魔物の注意を引き付けるため遠くから石などを投げて加勢し、たまに反撃を受けて負傷すれば、即座に治癒魔法を試みる。

 ただし、このままでは魔物よりもアレスタたちの方が先に力尽きてしまうかもしれない。

 脂汗をにじませながらアレスタがそう考えたときだった。


「大丈夫ですか!」


「そ、その声は!」


 響いた声に振り返ると、そこにはアレスタにも見覚えがある少女が立っていた。似ても似つかぬニックの妹で、サラとかいう名前の、ヴァイオリンを弾いていた騎士だ。

 剣を片手に颯爽と現れた彼女。魔物の攻撃からアレスタやサツキを庇うように前へ出ると、そこで腰を低く落とし、小規模な嵐のように荒れ狂う魔物に対して何かの構えをとった。

 一瞬にして引き締められる空気が弦のようにピンと張り詰める。


「皆さん、目を閉じてください! 今から私が強烈な光を放ちます!」


 彼女がそう叫んだ瞬間、きつく目を閉じていても伝わってくるほどの強い光がまばゆいた。

 彼女の構える剣先から放たれた光が魔物に襲い掛かったのだ。

 あまりに強く、激しい閃光。言いつけを守ってしっかり目を閉じていたアレスタすらも視界が真っ白な光に包まれ、慌てて右腕で防いでも目がくらんでしまう。

 一方、魔法の光が顔に直撃した魔物は不快な声で鳴き喚いた。まばゆい閃光で一時的に視界のすべてを奪われたらしく、戦意を失ったのか、倒れるようにへたり込んだ。


「私の魔法が効いたようです! お二人とも、よろしければ魔物を捕らえるのに協力してください! 倒せるのなら倒してもいいですが!」


 これにアレスタやサツキが答えようとしたところ、遠巻きに見守っていた外野から大きな声が響いた。


「大丈夫だ! 向こうから騎士の増援が来たみたいだぞ!」


「えっ? ……あ、あれはイリシアさん!」


 人ごみをかき分けて駆けつけてきたのは、イリシアを先頭とする五人の騎士である。

 どうやら大通りの騒ぎを聞きつけてやって来たらしい。


「皆さん、後は我々騎士にお任せください!」


 てきぱきと手馴れた動きでおとなしくなった魔物を魔法製らしい特殊な縄で縛りつけると、その魔物を引っ張るようにして、彼女の背後に控えていた四人の騎士が協力して大通りから連れ出していった。

 これで脅威はいなくなってくれただろう。


「サラ、あなたは他の場所も様子を見に行ってくれる? 発見されていない魔物もいるかもしれないから気を付けてね」


「はい! お任せください、イリシアさん!」


「うん、ありがとう。さて……」


 サラも去って、ただ一人、この場に残ったイリシアがため息混じりにアレスタたちを振り返った。

 その顔は呆れているようにも、怒りに震えているようにも見える。

 視線は特に一人の男に向いていた。


「ニック、あなたは確か彼の護衛役でしたよね。そんなところに座って何をしていたんですか?」


「え、僕? あのさ、実はちょっと、ごにょごにょ……」


 犯罪者を糾弾するような顔をしているイリシアを見て怖がっているのか、生まれたばかりの小鹿のように足を震わせながら口ごもったのはニックだ。

 厳しい表情をするイリシアは腕を組んだまま、威圧感たっぷりにニックを睨み続けている。

 浅知恵による抵抗は無意味だと思って観念したらしいニックはアレスタとサツキを横目でちらちらと見ながら、申し訳なさそうに白状した。


「結論から言うと僕は何もしていない。見ての通り腰が抜けちゃってさ。みんなの活躍を見守っていたんだ」


 少しだけ開き直っているようなニックの口調が癇に障ったのか、むっとしたイリシアは本気で怒り始めた。


「本来なら! 騎士として事態を収拾するべき立場の人間が! 魔物が暴れるのを見守っているだけでどうするんですか!」


「落ち着いてよ。そもそも僕は護衛役であると同時に監視役でもあるんだ。見守るのも仕事じゃないかな?」


「馬鹿なことを言っていないで、そこに座りなさい!」


「座ってるよ」


「地面に! 正座で! ほら早く!」


「あ、はい」


 冷たい石畳の上に正座させられたニックはイリシアに叱られ始めた。

 すっかり委縮したニックはイリシアに頭が上がらない様子なので、普段の力関係が見て取れる。

 激しさを増す彼女の説教に巻き込まれまいと、距離をとって二人を眺めていたアレスタの肩をサツキが叩いた。


「アレスタ、お前は治癒魔法が使えるんだよな? さっきも魔物との戦いで治癒魔法を使っていただろ?」


「はい、たぶんそうですね。もしこれが厳密には治癒魔法でなかったとしても、限りなくそれに近い魔法だとは思います」


「だったらちょうどよかった。見ろよ、そこら中に怪我人がいるだろ? 彼らに声をかけて、介抱するついでに治癒魔法を試してみるといい。使い慣れてきたおかげで彼らにも効果が出るかもしれない。あんまり深手を負っているような人はいないみたいだが、それでも今すぐ治癒魔法で治せるのなら、それにこしたことはないだろう」


「わかりました。やってみます」


 大通りや中央広場の片隅には、先ほどの魔物騒ぎで怪我を負ったのか、痛みを我慢するようにうずくまっている人の姿をちらほらと確認することができた。彼らの役に立てるかどうかはわからないが、この際だから治癒魔法を試してみるのはいいだろう。

 そう思ったアレスタは遠慮がちに彼らへ声を掛け、一人一人の無事を確認しながら介抱して回る。

 その際、さりげなく精神果樹園を開いて魔力の果実をもぎ取り、右手を傷口にかざしておく。

 浅く、深く、緩やかに呼吸を繰り返し、目を閉じて集中する。

 だが期待した反応はない。治癒魔法を使おうとしても意味はなく、精神果樹園の果実を無駄に消費していくだけで怪我が治っていく気配は感じられなかった。

 アレスタの右手には確かに魔力が流れる感覚があるのに、それが相手にはうまく伝わっていないようなのである。

 その後も何人か怪我人のところへ駆け寄って確かめたものの、やはりアレスタはそのうちの誰一人として治癒魔法で治療することができなかった。悲しいことに浅い擦り傷でさえ反応することはなかった。


「アレスタ、どうだった?」


 幾度となく試みた治癒魔法はすべて失敗に終わり、落胆して戻ってきたアレスタをサツキは明るい顔で迎えたが、きっと答えなくても結果がわかっているのだろう。


「すみません、駄目でした。どう頑張っても俺の治癒魔法は自分以外には効果が出ないみたいです」


「やはりそうだったか。そうだろうと思って試させたところはあるから、お前が責任を感じて落ち込む必要はないぞ。……実は、さっきの魔物との戦闘でお前が悪目立ちしていた感じもあるからな。あえて怪我人の介抱をさせて、お前が治癒魔法なんて使えないってことを逆にアピールしてもらうことにしたんだ」


「そうだったんですか。そういえば、俺が治癒魔法を使えるってことは隠したほうがいいって話でしたよね。すっかり忘れていました」


「結果として死人や重傷者が出なかったから、よしとしよう。……それと、誰だって最初は魔法の力が弱くて当たり前なんだ。何度も練習していくうちに魔法の能力が高まっていくもんだからな。傷ついている人たちを助けられなくて落ち込んでいるようだが、お前の治癒魔法もいつかはみんなを救えるようになるかもしれないぜ」


「そうですね、これからの成長に期待することにします」


 それなら、いつかアレスタも誰かのために治癒魔法が使えるのだろうか?

 今はまだ夢半ばに期待することしかできないが、その期待をいち早く実現するためにも、やはり魔法の練習を重ねる必要があるだろう。

 そんなことを真剣に考えていると、とぼとぼと歩くニックが疲れたような顔で戻ってくる。


「君たちはいいよね、イリシアから怒られる必要がなくてさ……」


「ニック、相当きつく言われたみたいだね……」


「それはもう、ひどかった」


 悪さをした子供を叱るようなイリシアの説教を思い出したニックがどんよりと肩を落としていると、人混みの奥から、よく目立つヒゲ面の男が愉快そうな笑顔を携えてやって来た。


「いやぁ、あんたら! 騎士の姉ちゃんにこってりしぼられていたみたいだな!」


「本当にひどい災難だったよ……。まさかイリシアが来るなんてさ。他の騎士だったらあんなに怒られることもなかった」


「がっはっは! しかし祭りは大盛り上がりだったし、魔物騒ぎも解決してもらったみたいだし、すごく助かったぜ!」


「へえ、お役に立てたようで何よりだ。騎士の一人として鼻が高いよ」


 どうしてイリシアに怒られていただけのニックがそんなに胸を張るのだ。

 文句を言う気も失せてアレスタとサツキはため息を漏らした。


「お礼といっちゃなんだが、気分をよくした大通りの商業組合がお前たちを祭りの打ち上げに誘いたいって言うんだ。よかったら参加しないか?」


「打ち上げだって? 祭りであれだけ騒いだっていうのに、まだ騒ぐつもりか?」


 大勢が集まって賑わうような場所が苦手らしいサツキは呆れたように肩をすくめたが、ヒゲをなでつける男は肩を揺らして笑う。


「楽しめるときは全力で盛大に楽しむ。夜通しだろうがお構いなしだ! いいからお前らも参加しろ。一緒に盛り上がろうぜ!」


「……ああ、ちょっと! 無理やり僕の手を引かないでくれたまえ!」


 心身ともに疲れ果てて、すぐにでも休みたい気分でいるニックの抵抗もむなしく、意外と力のある男に手を引かれていく。


「サツキさん、俺たちはどうします?」


「おごってくれるんだろ? とりあえず食わせてもらおうぜ」


「そうですね、だったらそうしますか」


 ということで、アレスタたちも打ち上げに参加させてもらうことにした。

 わいわいと騒ぎながら去って行く男とニックを、二人は笑いながら追いかけた。

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