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第12話 静稀さん、弱点をさらけ出す?


 静稀の突然訪問とその他色々な出来事があった。


 ――とはいうものの、午後に入ったバイトの忙しさでその日のことを上手く忘れることが出来た。


 当初はコンビニについて来ると言っていた彼女だったが、歩いて行くことが決定していた為か、諦めて素直に帰ったらしい。


 




「よぉっ! 輝! 生きてたか?」

「な、何だよ、朝からそんなこと言うとか」

「例のS級女に酷い目に遭わされたんじゃないかと、心配しただけだぞ。何も無かったんならいいけどよぉ」


 教室に入ってすぐ、遊馬が変なことを言って来た。相変わらず静稀への風当たりは強いらしい。


 こいつが言うように、ガチャゲームのランキングを少しは気にしてチラ見しようと思っていた。しかし土曜の訪問からのバイトコンボで、そんな気力が起きなかった。


 まして()()()()()をしでかした挙句に、本人から闇を感じてしまった以上、怖くてそこにいけなかったというのが正しい。


「あ、あるわけ無いだろ。悪いけど、静稀はそんな子じゃ――」

「……ほぅ~? 惚れたな? そんで、付き合いたくなったな?」

「ど、どうだろうな~」

「そういや、今日は隣クラスと合同体育がある日だな。そこで奴のとんでもない姿を見て、がっかりすることになるだろうな」


(一体何を言うかと思えば、合同体育で静稀が何だっていうんだ)

 

 むしろ静稀と一緒に授業を受けられるだけでも、男子たちには朗報のはず。ガチャゲームのことは別にしても、静稀はどのクラスの男子にも人気がある。


 美少女との体育なんてご褒美にも程があり過ぎるのに、こいつは一体何を言っているのか。


 ――合同体育の時間がやって来た。隣クラスとの合同は週に二度ほどあり、その内の一回が体育になる。


(え、もしかして……これのことを言ってたのか?)


 遊馬が言っていた静稀のとんでもない姿が一体何なのかを見つける為に、彼女の姿を探していたらあっさりと見つかり、その姿に唖然としてしまった。

 

 多分本人的には本気で、そして真面目に動いている――と信じたい。しかし誰もが彼女の美しさに見惚れると同時に、とんでもない運動音痴っぷりに女子はもちろん男子でさえも、笑いをこらえている状況を目の当たりにしている。


 しかし俺はすでに気付いていた。コンビニまで数十分歩いた時、静稀はかなりへとへとになっていたし、通学や買い物では速すぎる車に乗っているお嬢様だ。運動が苦手なことくらい分かる。


 それを知っていただけに少しばかり人と違う動き――それこそ信じられないような動きで失敗を繰り返したり、ボールを受け止めるのが頭だったり。


 そうだとしても彼女が可愛いことに変わりはない。


「くくっ、あはははっ! どうよ? やばくね?」


 そして一通りの姿を堪能したのか、遊馬の奴が笑いながら隣に近寄って来た。


 合同体育と言っても交代でコートを使うだけで、隣クラスの連中と一緒に動くわけじゃない。それだけに俺たちは出番が来るまで、壁際で突っ立っているだけだったりする。


 そんな時間を使って静稀のあの姿を見ることになったのは意外だった。しかしそんな姿を見ても、彼女の完璧なスタイルにばかり目が行っていた。


 ――つまり、遊馬や他の男子どもが馬鹿にするような姿はさほど気にならなかった。 


「……運動音痴ってだけだろ。そんな笑うことじゃない」

「いーや、あれはやべぇレベルだぞ? 他の女子なんか普通に動けてるし、やべぇのは奴だけだ」


 それにしても、彼女がいながら静稀に見惚れしかも陰で笑う奴に何だか無性に腹が立って来る。遊馬の奴を懲らしめてやりたい――そう思いつつ、我慢するしかなかった。


 俺の怒りとは別に当の本人は慣れなのか、あまり誰の姿も声も気にしていないように見える。逆に遊馬の奴は、まだ笑いが収まらずに笑いっぱなしだ。


 そして交代の笛が鳴り、隣クラスの連中がこっちへ戻って来た。そうとは知らず、遊馬の奴はまだ笑ったまま背中を向けている。


 そこに――


 さっきまで汗を流しまくった静稀が俺の所にやって来た。長い髪からも汗が滴り落ちているうえに、頬も赤くて惚れそう。


「輝くん。君の許可をもらうまでも無いが、思いきりやるよ? いいよね?」

「……え、何を?」

「もちろん、反撃の狼煙というやつだよ」


 電光石火という程でも無かったが、運動音痴どこへ行ったと言わんばかりの鋭くて強烈な回し蹴りが、背中を向けていた遊馬にクリーンヒットしていた。


 直後というより少し間を置いて、遊馬の「いてえぇぇぇぇぇ!!!」などという悲鳴が聞こえて来たのは言うまでもない。


 そして静稀は俺の手を握って、彼女なりに思いきり走り出している。決して速くないけど、引っ張られていても疲れる感じじゃないのが幸いか。


 お互いに息を切らせて、体育館の外に出た。俺自身は逃げなくても良かったが、遊馬を蹴ろうとしていたので同じ事かもしれない。


「ふー……外に出て来たけど、大丈夫かな」

「ふふっ、見てたよ? 輝くん」

「え?」

「輝くんの視線が常に私にあったことを――だよ。君は私が運動音痴でも笑わないのだな?」

「それはだって、笑うことでも無いし……弱点は誰にでも……あっ――」


 思わず弱点ということを口走ってしまった。これにはさすがに、ムカついてしまったのではないだろうか。


「うん、苦手なんだ。でも、あえてさらけ出しているというのもあるよ?」

「あえて? じゃ、じゃあ、あそこまでじゃないってこと?」

「見極めというやつだよ、輝くん。私を笑う奴を……ふふふ」

「へ?」

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