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第11話 シズキさん、闇の顔を垣間見せる


「いいよ、身構えなくても」

「えっ?」

「舌なめずりしただけだし、君を取って食べるなんてことにはならないから安心していいよ」


 こんなことを言わせてしまうとか、よほどガクブルを見せてしまったみたいだ。


「えっと、じゃあ……」

「うん。輝くんの反応も楽しめたことだし、私は帰るよ」

「えっ、そんな!」

「他に何かして欲しいことでもあるのかな?」


 何かして欲しかったわけじゃない。しかし、このまま大人しく帰していいものかどうか何となく悩んでいるだけだったりする。


 突然の訪問の理由についても確実な答えを聞き出せてもいない――

 ――というのもあるが、どうして彼女は俺のことをそんなに構うのか。などと聞けない怖さが何となくあった。


「ガチャのトップランカーっていうのは本当なのかな、と」

「何だ、そのこと? 何か良からぬ噂でも聞いたのかな?」

「…………えっと」


 噂というか被害者が勝手に語ったと言うべきか。あいつ(遊馬)がああいうことを言うから、そのことが頭から離れなかったりする。


「――君はあまりランキングを気にしないって言っていたよね? それはどうしてかな?」

「それはだって、俺は中級で……シズキは師匠だから、そこまで極めるには至らないというか」


 遊び方は人それぞれで極めたい人は上を常に気にする。しかし遊馬の言うアレは、まるでシズキというプレイヤーがそういう行為を当たり前のようにして来ている。といった言い方に聞こえた。


 程々に楽しんでいる俺にとっては、トップに君臨しているプレイヤーがどんな酷いことをしていても、そこを掘り出すつもりは無い。だけど、目の前にいる子がそうだとしたら真相を知りたくなる。


「テルとしての遊び方なら、それでいいと思う。君自信は気にすることでも無いよ」

「そ、そうだよね」

「でも――トップランカーたち……噂になるようなランカーたちは、上を目指す、目指さなきゃいけない……そういう生き物なんだよ。その為にはどんな手を使ってでも……ね」


 何やらただならぬ気配を醸し出しているが、今日はここまでにしとこう。俺自身がシズキというプレイヤーに何か手痛い目に遭わされたわけでも無いし、触れる必要は無いからだ。


「そ、それって、リアルのことじゃないんだよね?」

「安心したまえ。輝くんをどうこうしようって話じゃないよ。前も言ったけど、私は極め続けたい……それだけなんだよ」

「な、なるほど」

「分かって頂けたかな? 愛弟子テルくん」

「は、はい、師匠」


 どうにも闇が深そうな気がするので、静稀本人に直接聞くのはやめておくことにする。これはあくまで、友人の経験と噂に過ぎないことだ。


 近野静稀と、プレイヤーシズキは多分違うと信じたい。


「ところで輝くん。何か焦りが見えているけど、どこか行く予定があるのかな?」

「ご、午後からバイトが……」

「なるほど。それじゃあ、そのバイト先まで送って行ってあげようか?」

「え、本当に?」


(いや、駄目だ。隠し通すつもりも無かったとはいえ、あのコンビニが実家ということを知らせてしまったら、すぐにバレる)


 それに本物のお嬢様のことだ。「店ごと買い占めてあげるよ」なんて言いかねない。


「ふふっ、すっかり速い車がお気に入りのようだね。いいよ、他ならぬ輝くんの為だからね! 今から呼べば、すぐにでも――」


 速い車は楽ではあるしすぐ着くから、遠慮なくお願いしたいところだ。しかし気軽に言ってはいけない気がする。

 

「あ、いや~、歩いて行ける距離だから! あのすごい車にはまた別の機会にでも……」

「じゃあ、私も一緒に行こうかな?」

「そ、それはちょっと!」


 静稀ならそう言うだろうと思っていた。最初の出会いで教えていればよかったものを、変に隠すから焦ることになる。


「――私には教えたくない。そういうことかな?」

「そ、そうじゃなくて!」

「ああ! 私としたことが失念していたよ。輝くん、君は私とどうなりたいと思っているのかな?」

「――え?」


 不穏な空気になりそうだと思っていたら、彼女は別のことを聞いて来た。その質問も答えにくいことではあるけど。


「答えにくいのかな? 押し倒して何も出来ずに終わった君だから特別期待出来ないけど、ヒントくらいは欲しいな」

「ん、んと、同棲は出来ないけど、その……今よりもっと静稀を知って、親しくなれれば……」


 今の時点で彼女のことや口の利き方について何も知らなすぎる。スマホとガチャゲームしか知らない俺には、気の利いた言葉でさえも上手く出て来ないのが現状だ。


 それでも師匠としての存在とは別に、S級美少女がこうして接近してくることには興奮でしかない。そこからまた別の感情が作り出せたら、その時はもっと違う言葉が出そうな感じがする。


「ふふっ、正直だね、君は」

「いや、まぁ……」

「いつでも機会はあるから、今は気にしなくていいと思うよ? でも、私は君のことも極めて行きたい。その為にも――もっと知る、知りたい……知って行くよ?」


 またしても闇のような気配だ。俺のことを極めるとか、彼女にとってはゲームの延長線上なのだろうか。それならどうして俺に接触をして来たのかなんて、今さらなことではある。


 俺も彼女もお互いをよく知らない。何を極めるかは不明だけど、知って行くしか無いみたいだ。


「お、俺も。静稀を知りたいな、と」

「気が合うね!」

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