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1 少女、不幸。そして幸運。

とある少女の視点


「ハァ…ハァ…ハァ…。」

青色の月が照らす夜の森。異様な静けさにつつまれたその場所で、不自然な少女の声がする。かすれかすれで途切れそうなその息音には何かから逃げるような恐怖の感情がにじみ出ていた。

大きな木に少女はもたれかかる。服と思わしき布を身に着けているが、その布はボロボロでとても汚れている。

体にはいたるところに傷があり、疲弊しきっている様子だった。

(どうして…どうして!どうして私は…私は…。)

少女はそこまで気が強いわけではなかった。叱られるのは自分が間違っているから、虐げられるのは自分が劣っていたから、そうやってすべて自分のせいだと思っていた。しかし、それはあくまで少女自身が自分の心を護るために心を覆い隠していた『嘘』だということが今、少女自身が理解した。自分はとても傲慢で、とても嫉妬深い人間…いや悪魔なのだと。自分の命がもうすぐ途切れそうになるというのをわかっているのか本性が現れる。

(私のせいじゃない、周りが悪いんだ、どうしどうしてどうして!!!!私は悪くないのに!私は…私は…。)

少女は初めて運命というものを知り、そして同時にそれを恨んだ。それはとても悲しいことだった。運命や周りのせいにせず、解決策を自分で導き出そうとする。常に周りのことを考え気を配ってきた。純粋で優しい少女が、今、このとき、無慈悲な運命というものによって殺されたのだ。今ここにいるのは無慈悲な運命によって醜い悪魔の心へと変わってしまった少女だけだ。

(あぁ…誰か…お願い…私のせいじゃないの…だから…ねぇ…)

ガザッ

木の間から大きな顔をのぞかせる。

少女の前に現れたのは大きな龍。しかしそれは我々が思い浮かべるような高貴な白龍でもなく、漆黒の鱗を身にまとった黒龍でもなく、炎を宿した赤龍でもなく、神秘のベールで包まれた青龍でもない。

ギョロッっとした大きな目玉が6つ。その大きな口からはよだれがダボダボと垂れている。シャー…シャー…と気味悪い音を立てながら少女に迫りくる。その体には不気味な赤い脈がどくどくと巻き付いている5本の脚。布のような薄い羽が片側12枚、もう片側には7枚付いている。その体には傷がついており、何者かと争った後なのだろうということがわかる。

龍はその足を少女の心臓に突き刺す。爪が少女の心臓を破壊したのか、少女の口から血が噴きでて、胸は赤色に染まる。


「ガーーーーッ♥」


うれしそうな声を上げながら龍が口を大きく開けて少女を食べようとする。

少女は、諦めてしまった。

これが私の運命だ。白い髪に生まれた時点で、私の運命は決まっていたのだ。

母からも父からも虐げられ、疎まれ、こうして死の淵に立たされる。

あぁ、どうして私はこんなにも不幸なのだろうか。

誰か…。誰でもいいから私を助けて…。

神様…。

しかし、そこにやってきたのは神でも何でもない何かだった。




ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

大きな音を立てて何かが少女の前に空から降ってきた。

土埃が舞う。

その勢いで龍が少しだけ身を引く。

土埃が去ると…空から降ってきた何かの姿があらわになった。



丸い何か。ぷよぷよしてそうなほどの艶が出ているその何かは黒色で染められていた。

そしてその何かは動き出す。

口のようなものが現れ、必死に話そうとする。


「お…おれ…を…つ…え…おれを…俺を使えぇ!!!!」


少女は自分の置かれている状況を理解することができなかった。少女は混乱していたのであろう、その声に反応して何かをつかんだ。


とたん、その何かはビシャッっとはじけた。

その何かは少女の胸のあたりに集まり、まるで心臓の代わりを果たそうとするかのように少女の中へと入っていった。そしてその胸から黒色の何かが再びはじける。

そして少女の体にまとわりついた。

そこに現れたのはまさしく怪物。怪物と呼称するにふさわしいほどの何かが現れたのだ。

人型の黒い怪物は、大きくその拳を引いた。




極装(ガイルドベント)


そしてその怪物の前には見るも無残に四散した龍と崩壊した森が残されていた。

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