〜1年前〜【奴隷ごっこ】
1年前、私は雷加と親友だった。
いや、私がただ、そう思っていただけだった。
〜1年前〜
中3の雨は卒業の準備でバタバタしていた。
「ちょっとー!!
皆、もっとしっかりしてよ!!
卒業式まで時間ないんだよ!?」
雨はすごく気が強くて皆から少し怖がられていた。
しかし、雨の運命が変わったのは、雷加が転校してきてからだった。
「どうも、初めまして、土田雷加です。よろしくね。」
雷加も、雨と同じような性格で、二人はすぐに仲良くなった。
しかし、ある時、雷加の一言で雨の運命が変わる事になった。
「ねぇ雨、つまんないからさ、私の考えた遊びやらない?」
「えっ?雷加が考えた遊び?
うん!いいよ。
やろやろ。」
すると雷加は不気味な笑みを浮かべた。
「その遊びの名前、聞きたい?」
「うん。教えてよ、雷加。」
「それはね・・・【奴隷ごっこ】」
「・・・はっ?」
「どしたのっ?雨、はやくやろっ。」
「どうやって遊ぶの?」
「このゲームは、クラス全員の協力が必要。クラスの全員に1番クラスでウザイ奴を紙にかいてもらって、投票してもらうの。
1番、投票されてた奴はクラス全員の【奴隷】になるの。
ねっ?簡単でしょ?」
「わかった。いいよ。はやくやろ。」
雨と雷加は教室に戻ってさっそくゲームを始めた。
雨は大声を出してクラス全員に言った。
「いい?皆、絶対書いてよ!
書かなかったら、そいつが奴隷だからね!?」
そして、皆紙に書き終わり、投票しはじめた。
誰が【奴隷】になるのか。
そのスリル感や、ワクワク感、不安感が雨の中でうずまいていた。
雨は待ちきれず、雷加に言った。
「ねぇ、雷加、誰!?誰が【奴隷】!?」
雷加は少し微笑みながら言った。
「【奴隷】は雨、[空内 雨]。
あんたよ!!」
雨は焦りと不安で体の中がいっぱいになった。
「う・・・そ、嘘でしょ!?
ねぇ!!冗談やめてよ!!
ねぇ雷加!!」
「嘘じゃないわ、雨。」
「いゃぁぁぁぁぁ!!」
頭を抱えて、うずくまりながら泣き叫んでいる雨に、雷加は言った。
「あんたは今日から、クラス全員の【奴隷】だから。毎日ね。
ゲームに終わりなんて来ないんだから。」
その日から、きつい毎日が雨を襲っていった。
そのせいで、雨は内気な性格に変わってしまった。
あげくのはてに、雨が入る高校まで雷加は追ってきた。
雨に自由を与えないために。
卒業式当日、雷加は雨に言った。
「ねぇ、なんであの時、雨が【奴隷】になったか教えてあげるよ。」
「え・・・?」
「私がクラス全員に言ったのよ。
雨に投票しろってね。あいつらもバカだからさ、簡単に私の言いなりになるの。
結果的にあんたも、あいつらも私の【奴隷】って事ね。」
「そう・・・なんだ。」
雨は悲しそうに下を向くと、どこかへ歩いていった。
そして、高校へ入って、すぐに同じクラスになってしまった。