表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天 気 雨  作者:
5/6

もう逃げない

家に帰ると母親がすぐに玄関にきた。



「雨?今日は学校から帰ってくるのはやいのね?

どうかしたの?」



「なんでもないよ。」



雨はそう言って、母親を見ると顔に傷あとがあった。



「お母さん!?

どうしたの!?その傷あと!!

ひどい・・・。」



「・・・お父さんがね、出て行っちゃったの。

お前らといたって楽しくないって。」



「私、お父さんなんていらないよ。

あんなの、私の親じゃない。

私、全部知ってるんだよ。

お金をパチンコで全部使っちゃって、お母さんのせいにしてた事。」



「雨、そんなに自分の気持ち我慢しないで。」



「我慢なんかしてないよ。

それにさ、少しぐらい我慢しないと幸せになんかなれないしさ。

私は、いつでも我慢してるわけじゃないから大丈夫だよ。お母さん。」



雨はお母さんに軽く微笑み、自分の部屋に戻っていった。



部屋に戻ると、雨は心の中でずっと呟いていた。





私、もう学校に行かなくていいんだ。

あんな大嫌いな学校に。






頑張って青くんとあわせようともしなくていいし、太陽くん困らせたりしなくていいし。



・・・太陽くん。

なんでさっき泣いてたの?

私が学校に来ないくらいなのに。

また私が太陽くんの事、傷付けちゃったんだよね。



本当は自分でも太陽くんの事が好きってきずいてたのに。

ずっと、ずっと一緒にいたいと思った時もあったのに・・・。



太陽くん。

私、ずっと太陽くんの事、憧れてたの。



うぅん、違う。

大好きだった。



一度でいいから、太陽くんとおもいっきり遊んで、手を繋いで、抱きしめて。

『大好き』

精一杯笑って、そう言いたかった。



太陽くんは、私の希望だったから。




でも、もうだめだよね。




届かない想いは、ないのと同じだもんね。





だから、私の想いは初めからなかったんだって思って生きていくね。



でも・・・太陽くんと一緒に見たかったな・・・。

天気雨。



その時、家のチャイムがなった。




出てみると、太陽がいた。



「太陽・・・くん?

どうして?」



「今からなら、まだ間に合うから。

雨ちゃん!来て!!」



太陽に手をつかまれて、雨は太陽と手を繋いだまま走り出した。



それから、5分程走った。


きずいたら、太陽は足を止めていて、上からも雨が降ってきていた。



「よかった・・・。間に合った・・・。」




「え・・・?」



雨がふと空を見上げると、晴れているのに雨が降っていた。



「これが・・・天気雨?

本当に、あったんだね・・・。」



太陽は雨の顔を真剣に見つめた。



「雨ちゃん。

次は雨ちゃんが俺を驚かせる番だよ。

キラキラな太陽みたいに雨ちゃんが笑えるように俺がそばにいるから。」



「太陽くん・・・。

私・・・。」



「雨ちゃん、青の事、気にしてるの?

本当は俺も雨ちゃんが青の彼女になるの嫌だった。

雨ちゃんはどう?

青の事、好き?」



「私、正直、青くんはちょっと・・・。」



「よかった。

そしたら、遠慮なんかしないで、青から雨ちゃんを奪えるよ。

本当よかった。」



太陽は優しく雨の両手を包み、雨の唇に太陽の唇が重なった。



次の日、雨は勇気を出して学校に行った。



教室に入ると全員が驚いたように雨のほうを見た。



そして雨もゆっくり太陽の方を向いて心の中で太陽に語りかけた。



太陽くん、本当に、本当にちょっとでいいから、私に勇気をください。







太陽くんを信じるから。


私、もう逃げないよ。



自分からも・・・太陽くんからも、逃げないから。



太陽は雨が何を思っているのかわかったように雨に微笑みかけた。



しかし、それを邪魔するように雨を学校から追い出した気の強い女子、【土田つちだ 雷加らいか】が雨の前で足を止めた。



「なんで戻ってくんのよ!?」



雨は怒っている雷加の目を力強く見た。



「私はもう逃げたくないから。

学校に来るのに私に理由とか、意味なんて関係ない。

私は私の道を歩くの!」



すると、突然、雷加は頭を抱えて大声を出した。



「違うっ!違う!違う!!

あんたに道を選ぶ権利はない!!

あんたは、ただの私のおもちゃ!!

私の操り人形!!

ただの奴隷!!

奴隷に、自分の歩く道を選ぶ権利なんてないの!!」



すると雨も大声をだした。



「私は前の私じゃないの!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ