パーティ内恋愛禁止令
パーティ内での恋愛禁止、
それがこのパーティに属して一番に言われた事だった。
その理由は至極真っ当なもので、パーティ内でのいざこざを避ける為だ。
つまり恋愛感情によって特に誰かを守ったり回復したりするのを防ぐ。更に言えば余計な感情が入る事で合理的判断が出来なくなったり、不仲になった際のパーティ崩壊を防ぐ為だ。
言葉にすればそれがいかにも正しく思えるが、言うは易く行うは難しという奴で俺はとっくにそんな決まりを忘れていた。いや、忘れたフリをしていた。
「ヒーラーのフォローは俺がする!」
「回復するわ、タンク!」
確かに俺たちは互いの名前すら知らなかった、教えない決まりだったのだ。
それは個人的な感情が入るのを防ぐのと、それぞれを役割を忘れない為というリーダーの方針でもあった。
それでもパーティの盾役である俺と、その回復が仕事の半分を超えるヒーラーの彼女が互いを意識するのは時間の問題だった。
「頼む! パーティ以外で恋人を作ってくれ、出来る限り自由な時間は作る」
「……そんな事言われても」
「リーダーは結婚しているからいいですよ。でも私たちはまだ若いし恋愛の自由ぐらいあるべきでしょ!」
察しのいいリーダーが俺たちに向かって頭を下げる、それに対するヒーラーの言葉はまるで俺への告白のようだった。
リーダーの言葉に反して、その日から俺たちの距離はグッと縮まる事となる。そして──、
「なぁ、ヒーラー。俺、お前の事……」
「……うん」
「そこまでだ」
そして俺たちは目出度くパーティを追い出され、それと同時に付き合う事になりましたとさ!
これでハッピーエンド──。
と言えれば良かったが、それは結局互いの見えていなかった部分がより見えるようになった、それだけだった。
「なぁ、ヒーラー」
「もう、ちゃんと名前で呼んでよー」
「あ……、何か癖になってて。それよりさ、怪我したからちょっと治してくんない?」
「は? 嫌よ。どうしてプライベートでまで魔法使わなきゃいけないの、ツバでも塗っとけば?」
「え……、じゃあお前のツバで頼むよ」
「うわっ、本気で言ってるの? ドン引きなんですけど」
パーティでの役割とその人の性格を混同してはいけない。
彼女はパーティ内ではヒーラーだったが、彼女にすると猛獣使いだった。
「この程度のクエストを受けてどうすんのよ! 攻撃力がないの分かってる?」
パーティ内の恋愛禁止。
リーダーの言っていた事が遅れてようやく理解できた気がする。