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華のお江戸の振袖小町  作者: 水虎
第拾陸幕「独善」
243/252

第拾陸幕の壱

また面倒な人が出てきます。

 ある日の朝。地下鉄の駅の出口を一人の老婆がエスカレーターを上がって出てくる。そのまま横断歩道を渡ると、コンビニが見えてくる。そこの入り口では、数人の若者がもう太陽も出ているにもかかわらず座り込んで談笑しながらたむろしていた。

「でさー……」

「マジで!?」

「ウケるんですけどー!」

 ゲラゲラと笑う声が嫌でも耳に入ってくる。老婆はそれを見過ごさず、杖を突きながら若者に近寄ってくる。

「あんたたち! そんなとこで騒ぐんじゃないよ!!」

 老婆はついていた杖を振り回しながら若者を一喝し、そこから説教へとシフトする。老婆による説教はたむろする行為への注意……まではまだよかったが、彼らの身なりから始まり、見た目だけで判断した彼らの親への侮辱になりかねない不適切で的外れな指摘に発展していった。

 お節介を大きく通り越した老婆による大きなお世話ともいえる勝手極まりない独演会が始まって10分ほど経過した頃、傍若無人な行いに我慢の限界に至ろうとしていた若者たちの前に、意外な助け舟がやってくる。

「おばあさん! お兄さんたち困ってますよ! やめてあげてください!!」

 現場を通りかかったさくらが老婆を止めに入る。彼女は土曜だが制服で学校指定のカバンを肩にかけた姿だった。彼女の顔と制服姿を見た老婆はさらに顔をしかめ、杖を振り回して暴れ出す。鈍器として使われた杖は若者のうちの一人の頭に直撃寸前でさくらが真剣白刃取りの体勢で抑え込む。

 この大立ち回りを見かねて駆けつけた店員が抑えるまで続き、若者は老婆の迫力と危険性に逃亡を余儀なくされる。

「まったく、こんなのがいるから今の日本はダメなんだ。男がだらしないと女が嫁に来ない、女が勉強すると世の中が狂っていくっていうのに……」

 老婆は肩を怒らせながら力強く杖を突き、花ヶ咲の住宅街へと足を向けていった。その姿を一匹の小動物が目撃していたが、あまりの迫力から本能的に危険と判断して物陰に隠れてしまうほどだった。

 一方、若者たちにとっての恩人は老婆の顔と声にどこかで見覚えと聞き覚えがあると感じながらも、それがいつどこでだったのか、そもそも一体何者なのかがわからずもやもやしたまま目的地へと足を進めていった。

 彩羽高校の体育祭は、高校の内部と外部からの敵襲で平穏無事とはいかなかったが犠牲者や襲撃が原因の負傷者を出さずに最後まで開催は行われた。

 しかし、その立役者だと言われている振袖小町にとっては校内から敵対勢力が現れたこと、そしてその二人は力を失いはしたものの事実上の敗北を喫することとなった苦い思い出ともなった体育祭でもあった。

謎の老婆、その正体は?

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